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未婚で産む、と打ち明けた後の父とのLINE

未婚で生む。


と決めたときから

母や妹にはそれを言えたものの

なぜか父には誰も言えずにいた



東京下町の長男として

特別に目をかけられて

生きてきた父




大学卒業後

就職もしないで置屋に入り浸っていたら

おばあちゃんが手切れ金を持って

やってきたというのは


なかなかインパクトのある話で


でもなんだか

やってくれるねお父さん!!と

少し誇らしかった





本とジャズと資格取得を

なによりの生き甲斐としている父



私たち姉妹を

なんの不自由もなく

私立の高校から大学まで行かせてくれて

千葉にある一戸建ては

「お父さんが

キャッシュで買ったのよ」


というのが母の自慢でもあった





温和で声を荒げたことのない父


そんな彼ももう、77歳



去年の秋には

家族みんなで喜寿の祝いをしたのが

もう懐かしい




どうして誰も

私の間に起こっていることを

父には言えなかったのだろうか?




もう歳だから

ショックを与えたくない



無駄な心配をかけたくない

というのが

母と妹の意見だったが



私はどうも

ちがうと思っていた




許してしまうのだ、父は。




子どもの決断を

感情でぶった斬ったりなんて

絶対にしない




父に言ったら

ゆるされてしまう




そう予感する複雑な気持ちが

母と妹には

あったのかもしれない


_________


父に打ち明けたのは

もう妊娠4ヶ月に入ってから




娘が小学校に通い始めた様子を

見にきたその夜


夕方早めの缶ビールを開けた父に

サラッと告げたら

父は静かだった


「私生児になるのか」


最初の一言は

それだった



シセイジ?


聞きならない言葉を

脳内辞書で探ってみたら


婚姻関係にない男女から

生まれた子どものこと

のようだった




「まぁ、言葉で定義したら、そうなるよね」


そう返したはあとはもう


なんだか今は言うことがない。


そんな感じで黙り込んで

ビールを一本あっという間に空にした




その隣で母が

地球の裏側まで届くくらいの

大きなため息をついていた



そこから2日泊まったが

その話は一度もでなかった



スーパーに買い物に行っている間に

何も言わず1人で帰っていった




父から直LINEがきたのは

それから2日後のことだった




「お母さんと話しました。…


という冒頭から予想されのは

当然「そのこと」だろうな

ということ




夜に送られてきていたけれど

万が一のことを考えて

見るのは翌朝にした




「お母さんと話しました。
美穂も考えがあると思いますが、
第一は紫乃の健やかな成長です。

それを阻害することは断じて許せません。
ふたりの将来に幸あれ」




父は、なにより

初孫である私の娘が

大好きだった



私たちが小さい頃は

仕事で忙しすぎて

子育てに参加なんか

全然できなかったから


「初孫で子育てのやり直しです」


と言いながら

彼女をなによりも今も愛している



そんな父に反射的に返したのは


「お父さんありがとう」


という言葉だった



親としての複雑な思いを

感情という凶器をつかわずに

まとめて書かれた簡潔なLINE



きっと母と話した時は

大変だっただろうな


長い時間がかかったんだろうな


そんな予想に反して

父のLINEは短かった




でもその数行に

手放しでは応援できないけど

幸せになりなさい、という

複雑な親の愛を感じた



心配と応援の比率。49:51 。



たった1%でも

応援してくれている、と感じた



そうだ

なにかへの期待や希望が

1%でもそちらに傾けば

やがてそれは陽に転じる



これは陰陽の考えだったっけ



その瞬間

私の中で色々なものが

ほどけて


これまで誰にも言えなかった本心が

父には言えた



______わたしは母親という自分が

一番好きなのだ______と




「お父さんも知っていると
思うけど


私はこの世でなにより
子どもが大好き


そのためなら
なんでもできるのです


紫乃が健やかな成長をしない、
そんなことは絶対ないので
安心してください

赤ちゃんのことも
本当に今世で今、
授からなければならないと感じ

この子も不幸にすることは
絶対にありません


そこは大丈夫です


改めて考えたとき
生きていく上で
1番大切にしたいのは

私は生命と
その子たちのために
きちんと環境を整えること


これは
地球環境も
経済という環境も


私は仕事も好きだけど
母、という役割の自分が
なにより幸せなんです


これはお父さんと
お母さんの愛情ある
これまでの子育ての
おかげです

ありがとうございます😊」



すべてが、本音だった



全部が、魂の声だった



朝の平日のカフェは

パソコンを開いて仕事をする人で

いっぱいだったけれど

父にLINEを打ちながら

私は密かに、泣いた



自分に対する

ゆるしの涙だった



ありがとう、お父さん



なんだかカラダが

ものすごく、軽かった




また書いていきます

続く…


Miho

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