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患者さんの気持ちはいつも揺れている

昨日の午前中は腫瘍内科外来の勤務でした。
予約は8名ほどでしたが、
月曜日は初診(他科からのコンサルテーション)
の方が多く、これから始まる抗がん剤治療についての説明であったり、再発して推奨される抗がん剤の選択について改めて腫瘍内科医から話を聞いてみたいという患者さんたちが受診されました。

その中でNさんの受診もありました。
Nさんは以前より大腸癌で抗がん剤治療を
受けられていて、腫瘍マーカーが上昇してきたとして今後このままのメニューで治療を続けたほうがいいのか、薬剤変更をしたほうがいいのかという主治医からの依頼で今回の受診となりました。

Nさんは某有名大学教授であり、学生への
思いやりが深く、日頃から治療室でお話しを
聞かせてもらっていました。
普段はとても温和な雰囲気の方です。

そんなNさんはちょっとしたイベントが起こると
途端に不安が出現し、受容するまでに時間がかかるため、同じ内容の話を診察室や治療室の看護師たちに何度もしてそれぞれのスタッフが傾聴している場面がよく見られていました。

診察室にNさんが入ってこられ、腫瘍内科医からの今後の治療方針と推奨される治療薬剤と
治療スケジュールについての説明がありました。

終始落ち着いた雰囲気の中、診察はスムーズに終了しました。

新しい治療メニューを選択されたため、
今後出現する副作用(手足症候群)について
パンフレットで説明させていただくため
待合室にいるNさんに声を掛けました。

説明がある程度終わった頃から
Nさんの不安の表出が始まりました。
この薬にしていつまで効果が期待されるのか
治療後の体調変化は前回とどう違うのか
外科医の方針と腫瘍内科医の治療方針に
相違はないのかなどなど
実にありとあらゆる不安の表出がありました。

「患者さんの気持ちはね、いつも揺れているの。そういうものだって寄り添って傾聴して欲しいの。」

先輩看護師の1人がいつもこの言葉を
若い看護師に伝え、だからこそ
私たちはどう関わっていけばいいのかという
ところに導いてくれます。

Nさんは頭ではとてもよく理解されています。
副作用やセルフケアに対する理解度を確認しても
問題ない方です。

ですが、先輩看護師が言うように
Nさんも気持ちがいつも揺れている方の1人で
頭では理解していても、感情が溢れてきて
先の不安に苛まれ、同じ内容の質問や疑問を
主治医や看護師に投げかけてきます。

そこで私たちが陥りがちなのは
「あの患者さんには前回も説明したけれど、また同じ話?」
「この患者さん、一度話し始めると離れられなくなるので、次の業務が滞ってしまいます。」という方向性に患者さんのキャラを厄介な人だと
設定してしまうことです。

そのような言動や行動の奥には

不安なんです

が隠れ潜んでいるということをしっかりキャッチして関わって欲しいです。

まずはゆっくりと時間をかけて傾聴する。
そして、気持ちが揺れる時があることを
受け止め共感し、その中でも
治療を続けていることに対して支援していく。

弱音を吐いてしまう時や死への恐怖を強く
抱いてしまう時もあり、時には共に泣き
治療効果が見えた時には共に喜び
思いを分かち合える関係性で療養支援が
できると、

あの看護師さんに話を聞いてもらえてよかった

あの看護師さんがいてくれたから今日も頑張れた

と言って頂く場面があるかもしれません。
そのようなフィールドバックがあることで
私たち看護師も心が救われ、モチベーションを
保つことが出来るのではないかと思います。

笑顔と親切をモットーに

明日からの勤務も頑張っていきたいと思います。




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