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祖母のために庭を作る、優しい庭師。

先日まで、実家に帰省していました。実家にいる間はほとんど雨だったので、手持ち無沙汰に埃を被った古いアルバムを引っ張り出してみました。
重くて、ちょっとカビ臭くて、でも、ちょっとだけ冒険心をくすぐられる感じ。いいですね。好きです。
昭和の終わりから平成の始めって、こんな世界だったか〜とパラパラとページをめくっていたら、懐かしい景色に出会いました。


※この記事は音声配信と連携しています。
Voicy: https://r.voicy.jp/7Qm24RzaVY6
stand FM:https://stand.fm/episodes/64bf44263a3c1a55f2cf2d55


庭の手入れをする祖父を眺める、私。左端に、祖父の背中が少し写っています。


祖父の庭です。
今は既に全てが取り壊され、新しい方に手渡したので、もう訪れることすらない、祖父の庭の写真がありました。
おそらく撮影者は父。ファインプレーすぎる。
この青い物干し竿、よく鉄棒にしては叱られていました笑。
最後の方は錆だらけで、ちょっと鉄臭い洗濯物に仕上がっていました。

祖父は、植物が大好きな人でした。


和風の庭でした。右側には祖父が作った、金魚の大きな鉢(睡蓮もあったような)も。


祖父が元気だった頃は、祖父はよく庭に出ていたように思います。
家の中に入ってくる時には、必ずキンカンを塗っていて、その直前にはタバコを吸っていたので、タバコとキンカンの香りがおじいちゃんの匂い、という風に記憶しています。

山の上に立つ家で、木々も植えられていたので、華やかな庭というよりは、和風の静かな庭のイメージです。
植物も、ひっそりと咲く山野草たちが多かったのではないかと思います。


玄関前には盆栽と睡蓮鉢。


盆栽を育てたり、写ってはいませんが、祖母が料理の時に使うための月桂樹やローズマリーなんかも育てていました。
庭が癒しと娯楽の役割に加え、生活にも根付いた役割をしていたんだなぁと感じます。
色んな植物が植わっていて、いわゆる圧倒されるような庭ではありませんでしたが、いつも綺麗にしていて、心地よかったです。

祖父が、何年くらい庭をやっていたのかは知りません。祖父の好きな植物がなんだったのかも知りません。
それでもこの数枚の写真から、祖父が毎日少しずつ手を入れてきた様子がわかります。

ちなみに、祖母は園芸を一切やりません。
緑を眺めることは好き、と晩年の祖母からそんな言葉を聞いたことはあったけれど、「私は育てるのは好きじゃない」ともハッキリ言っていました。
でも指示は出すんですよ。
その植物はそこじゃなくって、向こうに植えろって。
ハイハイ、と植え替えるのは祖父なのです。

これは私の憶測ですが、祖父は祖母の欲しいイメージを作っていた、祖母の庭師だったのかもしれません。
この庭は、家のリビングから眺めることが出来ます。
リビングのソファに座って、ふと顔を上げると庭が広がっている、そんなイメージです。
人通りもほとんどありませんし、庭側には家も立っていません。
小さな家の絶景スポットは、間違いなくリビングのソファでしょう!

ここ最近、私の心の中にも変化があって、気持ちの良い庭を作り続けていきたいというように感じています。
夫や子供とのんびり庭でご飯を食べたり、祖母のように料理に使うハーブなんかを長く育てたり。

見て楽しむ庭も好物だけど、生活の一部をそっと残したような庭を、長く愛していきたいものです。

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