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自閉のKと小学1年生

自閉症のKは高校生である。

学校が嫌い。それでも毎日学校に行ってくれる。
どれほど学校が苦痛なのか母には計り知れない。
学校に行ってくれるのは母としてはありがたい話だ。
一日中家にいられると本当に大変。
でも嫌いな学校に行く精神的ストレスはいかほどのものだろう。
言葉では確認しようがない。
「学校きらい」「車に乗って温泉に行く」「今日は週末です」
Kは数少ない語彙を連呼して、学校行きたくないアピールする。
でもそれは何故なのか?どれくらい嫌なのか?それはわからない。
普段から小さなことでイライラしたり、ハイテンションになったり、物を投げたり暴れたりがよくあるので、様子の激しさの原因が「行きたくない学校」によるものなのかどうか判断できない。
学校に行くことにどれくらいの負荷がかかっているのだろう。
判断できないままに、学校に行かせ続けている。

毎日Kは電車に乗って通学する。
駅の混雑具合は日本一レベルの駅を利用している。
改札から吐き出された人混みは誰もが快適なものではない。
このカオスを一刻も早く抜け出そうと、暴れ馬がギャロップするかのようにスキップして駆け抜ける。
駅前の混雑を抜け出すとお気に入りの歌を大声で歌いだす。
「スキップに歌」3歳児ならかわいいものだが、kは男子高校生である。
そして「スキップに歌」はご機嫌ではなく、下がった自分を無理やり上げようとする涙ぐましい行為に見える。そうでもしないと学校へ向かえないかのように。

今日はスキップの後「ウォン、ウォン」泣きだしてしまった。
大きな声で、人目もはばからず、だけど学校への歩みを止めることはない。
向こうから黄色い帽子をかぶった小学一年生の女の子がやってくる。
170㎝超えの、紺のスーツ(本当は制服)とネクタイ姿の男が声を上げて泣いているのだ、女の子はびっくりして立ち止まる。
そして本当に心配そうにKを見つめて、
「あら、お仕事失敗しちゃったのかしら・・・」とつぶやく。

女の子には立派な大人に思えたのだろう。
見た目では明らかに年長者のK。
でも幼い女の子の方が既にいろいろな面でKを追い越しちゃっているのよね・・・


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