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【第一回】チャップリンが生きた道〜チャップリンとの出会い

私が初めてチャップリンを知ったのは小学4.5年生だったと思う。映画やテレビで知ったのではなく、小学校の図書室に置かれていた一冊の本がきっかけだった。

その本とは「伝記 世界を変えた人々」というシリーズで、数々の偉人の本が並んでいる棚にチャップリンがいたのだ。

当時、このシリーズ本が好きでヘレンケラーやナイチンゲールも借りた記憶がある。その中でも見知らぬ道化師のようなイラストが描かれたジャケットは、小学生だった私に衝撃を与えた。

結局、誰なのかよく知らずに借り、さらに返却期間内に全て読むことができずに本を返した。正直なところ、もう18年くらい前に読んだから内容はほとんど覚えていない。しかし、この本のおかげで「映画を作った人、俳優の活動をしていた人」と知ることができた。

月日が経ち、16歳くらいの頃からクラシック映画の魅力に気づき、どっぷりとハマってしまった。名作と言われる「サウンド・オブ・ミュージック」や「ローマの休日」などの作品を片っ端から鑑賞。

十数年前までは動画配信サービスのサブスクなどはなく、TSUTAYAやGEOでDVDを借りる、もしくはアマゾンで購入するしか術がなく、観たいクラシック映画を探すのは一苦労だった。好きな俳優・女優が出演している作品を観たいのに、60年以上前の映画はDVD化されてないなんてザラにある。とくに、知名度が低い作品や、日本未公開の映画は観ることができなかった。

観たいクラシック映画はほとんど制覇した私は、「他に、面白い昔の映画はないだろうか」と探していたところ、チャップリンの代表作「黄金狂時代」が目に入った。

「黄金狂時代(1925年)」DVDパッケージ

昔の映画は好きだが、音声ありのトーキー映画しか観たことがない。一番古い映画でも、世界初の全編トーキー映画「ブロードウェイ・メロディー(1929)」だった。

「ブロードウェイ・メロディー(1929年)」

チャップリンの黄金狂時代のDVDを手に取りながら、「サイレント映画か…ハードル高いなぁ。」なんてちょっと思った。自分にサイレント映画の良さがわかるのか、と不安になりつつDVDをレンタルビデオ屋で借りて、家に帰りDVDプレーヤーにディスクを入れて再生した。

再生してすぐにチャップリンの凄さを見せつけられた。

「黄金狂時代」のチャップリンに惚れ込む

「黄金狂時代」のチャップリン

猛吹雪が荒れ狂う雪山が映し出された次の瞬間、サイズ感が合ってないくたびれたスーツ姿でステッキを持ち、ペンギンのようにぺたぺたと歩くチャップリンが突如現れた。全く防寒性のない服装で雪山にいるだけでも滑稽なのに、悠々と歩く背中は「たくましい」という気持ちと同時に笑いがこみ上げてきた。

雪山に佇むボロボロの小屋で繰り広げられるベタな笑い、飢えにより食べるものがなく自分が履いていた靴を調理して、あたかも"本物のステーキ"かのように靴を美味しそうに食べているのだ。(靴紐をパスタのようにフォークで巻いて食べるシーンがお気に入りだ。)

「黄金狂時代」で靴底を食すチャップリン

初っ端から笑わせてくれるチャップリンに脱帽した私は、「黄金狂時代」をきっかけにチャップリンにハマり、「モダン・タイムス」「街の灯」「サーカス」「独裁者」「キッド」などのDVDをまとめて購入した。

チャップリンの作風は一見ドタバタ・コメディのようだが、笑いの裏に隠れた社会への風刺が特徴的である。作中に出てくるチャップリン像は、小柄な放浪者が健気に紳士的な振る舞いを心掛け、底抜けのポジティブさと運の良さで困難を切り抜ける。社会的弱者の立場を自ら演じることで、チャップリン流に「権力を握った者に対する痛烈な批判」を喜劇に仕上げるのだ。

実際に、チャップリンの幼少期は貧困や母親の病気、父親のアルコール依存症、孤児院や貧民院を転々とするなど波乱に満ちた生活を送っていた。若い年齢で有名俳優・監督となったが、決して恵まれた人生とは言えない過去を持っている。

チャップリン本人が社会的に弱い立場であったことから、自身の人生を作品に投影するかのように社会的・政治的要素を取り込んだ。

昔の映画と言えば娯楽そのものであり、ストーリーは良い意味で単調で楽しい作品が多い。しかし、チャップリンは娯楽である喜劇スタイルを崩すことなく、悲劇を笑いに変えることに長けていたのだ。今でこそ政治的メッセージの強い映画が製作されているが、チャップリンはこのようなスタイルを一から作り出した張本人と言っても過言ではないだろう。


初めて私がチャップリンを見たとき、単にコメディアンという印象しかなかった。それが、チャップリンの映画をたくさん観ていくうちに、チャップリンと映画に対する意識がガラリと変わった。当時は、今のようなCGといった高度な技術はなく、ましてや音声がない状態で「黄金狂時代」然り、「街の灯」や「モダン・タイムス」などの名作を生み出していることに驚愕である。


最後に、チャップリンは次のような言葉を残している。

人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ。


さて、今回は一旦この辺りで終了する。これから、チャップリンの生涯を数回に分けて投稿する。(不定期&かなり長くなりそう)

次回からはチャップリンの生涯に焦点を当てながら解説していくので、興味ある方は次回もよろしくお願いします。


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