サポートの量と質を高める
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「白杖もたないの?」
「もたない。」
4年続いたこの会話、先日変化しました。
さて、発症率の極めて稀な「レーベル病」ですが、出会った発症者の数も、気づけば二桁になりました。
共通しているのは、10代〜20代で発症しているということ(私の経験の話で、この年代に限りません)。
この時期には、その人に起きた「悲劇」など何も待ってくれることなく、人生における節目が迫ってきます。
トモは、「レーベル病」を理由に26歳で、就いたばかりの職場を離れました。そして、これからどうするかを絞り出します。
自分が何者になったかも、どう生きていけるかも分からないままに、時間、日常が、止まってくれません。
テレビがついているだけでも、冷蔵庫を開けるだけでも、友達の仕事話を聞くだけでも、フツフツとして、発狂しそうになります。
「泣いて治るんだったら、泣けよ!」
「俺は違う、みてろよ」
当初は、悪態をつき、肩肘を張ることで、自分の環境を安定させてきたようです。
白杖は、この安定のためには邪魔だったのかも知れません。
プラスして、「中心暗点」という視野の欠け方。
文字の読み書きが著しく難しくなる一方で、歩けてしまうし走れてしまう。(トモの歩行にとっても白杖が邪魔になるのも然りでした)
トモにとって、歩くこと走ることは「できること」。
「できること」 だから 「もたない」。
変化があったのは、再就職後。
「ロービジョン者として働く」中で、読み書きの落ち込みが足を引っ張る。
連日悩み続けたある日に、台風で交通機関が乱れた。
駅の人混みで状況が、わからない。
タイムリーな情報が、入手できない。
たとえ、歩けても走れても、移動が「できない」。
そんな経験をしたのちに、弟くんから
「やっぱりこういう時には、お前のことが心配になる。」
そう言われてきたそうで。
トモは、「弟に言われた。だから、明日から白杖、鞄に入れる。」
と、何とまあスッキリした言い振りで、白杖とともに過ごすことを決めました。(びっくり)
できるけど、できない場面がある。
歩けても走れても「移動」するには、情報やサポートが必要。
サポートの量と質が高まる率を、自分で上げること、
そうすることで大事な人を安心させること。
それができる術が腑に落ちて、納得したようです。
靴箱の上で埃かぶってたシンボル用の白杖。これからたくさん出歩けるようですね。
いつも見守ってくれる方々へ、報告したいがためのお話でした。
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