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念願叶えて一軒家

「昔から欲しがってたもんね、レンガの家とか」

購入を決断した時、母に話をするとそう言われた。本当にそうだと、自分でも思っている。
お花屋さんになりたいと思っていた4、5歳の時『3匹のこぶた』に影響を受けて、花屋をやるならレンガの家が欲しいなと思った記憶がある。その後、お花屋さんはケーキ屋さんになって、中学生の時には自家製小麦を育てながらレンガの家で窯焼きできるパン屋に憧れていた。

歳に見合う程度の知識を蓄えてきたところで「パン屋の朝は早い」と知ったし、小麦を育てるには1人では難しいと考え始めるようになってからパン屋の夢は夢のままである。

明るい気持ちでの一軒家願望とは打って変わって、暗い気持ちを打破するためにも私は家ーー自分の場所を欲していた。

※この記事は自叙伝です。明日から使える家知識はほぼ含まれていません。

購入に至るまでのお話

6LDKに8人暮らし

実家では拡大家族で暮らしていた。大人が4人、子供が4人、そして猫と犬。築年数も相当いっている家。記録がないのでわからないが、当時で60年は裕に超えていたと思われる家での暮らしは至る所まで人がいて、友人を招けるような綺麗な床も、1人になれる静かな場所などなかった。田舎に建てた立派な一軒家だったが、それも祖父が若い頃の話だ。

大人におんぶや抱っこをされていた子供の時はそれでよかった。そんな事気にもならなかった。むしろ楽しかった!!でも、お友達の中には1人部屋を持っている子がいたし、そんなお家には畳がないし、顔に見えるシミがついた柱や天井はない。それが羨ましい気持ちがあった。

とはいえ、狭さはまあしょうがないだろう。正直こんなに大きな家があるだけ凄いことだし、住むのにも困らないんだからただの我儘と言ってもいい。それに両親が家を建てる余裕がなかったのも分かる。実家に住む選択をしたことは色々考えての事だっただろうから。

私の心臓と魂に「居場所」の炎を焚き付けたのは祖父母の言葉なのだ。

農作業は嫌いじゃないけど、農家だった祖父の葬式では泣かない

「俺が全部払ってるんだぞ!!」

祖父は農作業を手伝わないといつもこれだ。喧嘩になるとよく言っていた。記憶から消し去りまくったためにもうほとんど覚えているセリフは無いのだが、やりたいことややりたく無いことがはっきりしてきた中学生頃からこんな言葉を言われ始めた。

一方で祖母は旧時代の考え方にがんじがらめにされていた。

「おじいちゃんが出してくれてるんだから感謝しなきゃ」

まあそうなんだけど…。ばあちゃんだって炊事洗濯掃除に畑仕事はやってるんだよ。それには感謝されないっていうのに、それがあるから祖父は稼げてるのに、なぜ引け目を感じなければならないのだろう。
私は悲しかった。おばあちゃんが「私はこの家の奴隷だ」と言ったことがずっと忘れられない。そう言わせてしまったのは、私がしなかった分を代わりにやってもらってしまったからかもしれないし、日々の見えない家事をやらなかったからかもしれないし、おばあちゃんには一切給料が出ないからかもしれない。

雇用関係には絶対にならない

祖父母の仕事は土日に手伝う事になる。
月曜日から金曜日まで学校に行って、土日に農作業をする。もちろん私だけでなく、父や母も同じだ。

家族内のお手伝いとして「お小遣い」という形で作業代が貰えるようになったのはまあ良かったが、今度はこうだ。

「おい!おい!(お金をヒラヒラさせる)」

名前も呼ばず、ありがとうも言わずでそんな金を受け取りたい奴がいると思うか?
だから、それを受け取って目の前でおばあちゃんに渡すという反抗を始めた。(お金に罪はないので必要な時は貰った事もあるし、兄妹はちゃんと貰ってた。)

お金を受け取らないことで、反抗する自由を私は受け取っていたのだ。

それにしてもこの祖父、旧時代の遺物にも程があると思っていたのだが、母に言わせると「おばあちゃんより良かった」らしい。子供・孫として両者に聞き取り調査をすると、祖母は割と母の事を家族の一員ではなく「他人」扱いしていたことがわかった。聞けば聞くほど引くレベルで、実の息子を優先するモラハラしていたのだ。

あーー、家族って、家族って、
本当に本当に本当に、面倒くさい集団だなあ。
そういう自分も七癖はあって、面倒くさい奴なんだろうな。

待ち望んでいた大人になった

あまりにも祖父の言動が嫌いすぎて、愚痴ってしまっていたところ友人に「はたから聞いてると面白いから言動メモ取ったら」と言われた。

こんなにイライラする話が面白いって?うーん、そうかもしれない。時間が経って人に話せるくらいになっていると、自分でもちょっと面白い気がしている。
そう思って始めたがメモをするたびにイライラする。文章にすると力が入って長くなりすぎる。だからたまにしかメモは出来なかった。

とはいえ、こんなまとめ文章に出来るくらいには既に自分にとっても面白いネタだという自覚はある。


おじいちゃん語録を始めてしばらく、私は実家を出たし、祖父は特別養護老人ホームに入る事になった。

私は26歳になっていた。

勤め先まで変えるようなフットワークの軽さはないけれど、色々な場所に住んでみていた。市内の賃貸を借りて、更新時期が来たら違う賃貸に住んで、という感じだ。
(それぞれの部屋にまたいろいろな話がくっついているがまた今度にする。)

毎日、市が運営する空き家バンクや家いちば空き家ゲートウェイなどのサイトを見て、面白くて楽しそうな物件がないか探していた。家以外にこんなに続いている趣味は「乙狩アドニス」くらいしかない。

新築が欲しいという願望はもはや無かった。綺麗な場所が欲しいのではなく、自分の好きな空間が欲しかった。DIY欲が大きくなってからは、そこそこ住めるけどそこそこ直し甲斐のある家を探していた。建築知識がない自分でも直せる家じゃないと、住むまでにいくらかかるか考えただけで老後資金の不安ばかりが膨れ上がってしまうから。

あとは勢い

29歳、趣味や遊びを楽しみつつ、ゆるりとためた貯金は空き家を買えるようになっていた。

だが、身の回りの不安や7年働いた貯金がパッと消えてしまう恐れという、2つの障壁が今一歩を踏み出す邪魔をしていた!

そんな中、休憩中に後輩と話をしていたら「買っちゃいましょう!」と背中を押された。でも……と二の足を踏んでいる私に「先延ばしにして巳春先輩の両親の介護とか、自分の体力がなくなるとか、問題が生まれちゃうともっと自由に動けなくなっちゃいますよ!」と。いつもの明るさと清々しい笑顔でそう教えてくれた。

それはそうだな。ちょっとびっくりした。なんで気づけなかったんだろう。
今、大人の自分が自分のために動けるこのタイミングで叶えなければ、もう思いっきりDIYするのも家を買うのも無理かもしれないのか。

後輩からすると、買い物中の私がちょっといい服を買うか悩んでいるところに声をかけたくらいの気持ちでしか無かったみたいだったが、これによって、私の悩みの種は身を潜めて、具体的な購入にまで行き着けることになった。

2024年4月23日、一括払い

何軒か内見をして決めた空き家、ドキドキして行った支払いの日……、予想外の事があって帰り際には悲しみとモヤモヤとイライラでいっぱいだった。この件については支払い関係のまとめとしてまた別の記事にさせて欲しい。

一括払いしてしまったあとは、ポンと鍵を渡される。売主さんが私の7年間の厚み(6〜7cm位)をヒョイと鞄に入れて帰っていく。司法書士さんにはGW挟むから権利書の取得にちょっと時間がかかります、GW明けまで待ってくれと言って帰っていく。仲介してくれた不動産屋には早く火災保険入ったほうがいいですよと言われる。誰もお祝いムードなど無い。新築では無いのだからこういうものか。人生で1番高い買い物なのに……。

大金を用意するために行った銀行が1番盛り上がったかもしれない。受付の事務員さんに「現金ですか?振り込みではないんですか」と聞かれ、意気揚々と現金でと答えたときが一番金持ち気分だった。

事務所を出て階段を降りるとチャリチャリ鳴る4本の鍵。これであの家は自分のものになったのか。はあ。お客さんが入らなかった舞台の、なんとも素っ気ない現金一括払いというシーンを、涙ながらに演じ切ってきたのだった。

前置きが長すぎますよ巳春さん!

ごめんなさい、念願叶ったからって備忘も含めた自分語りが長くなってしまいました!面白いことはなかったかもしれないですけど、一回くらい「へー」となってもらえてればそれでいいです。

第一話 念願叶って一軒家

購入した今は、貯金と一緒に第二種電気工事士は学んどけば良かった!と後悔している。

昭和生まれの家は、紐を引っ張って電気をつけるタイプの灯りで構成された部屋になっているので、部屋に点灯用のスイッチがない。なるほどなるほど、昔ながらの和室ですね〜。また、古い洗面台は日差しで褪せて蛍光灯は剥き出し。これは洗面台ごと全部取り外して、台から作りたいなあ……などと思っている電気設備が関わる部分は、電気設備の取り扱いについて知識がないと家が燃える可能性がある。

もし、私のように空き家を思いっきりDIYしたいけど何しておけばいいか分からない人がいたら第二種電気工事士を取得しておく事をお勧めしたい。120〜150時間勉強すると試験に合格できるレベルになれるらしい。ネットにそう書いてあった。

資格がないと嘆いているのも含めて皆様お分かりでしょうが、私は今浮かれているのです。

空き家をDIY・管理していくことには初体験ばかりだ。いつも以上にガソリン代も通話料金もかかっているが「目をキラキラ」させて目前の課題をどう解決しようか考えている。

1番自分がやりたいことができている。それは誰かに言われてやりたくもない時にやる作業じゃないし「お小遣い」も貰えない。むしろ支出ばかりだ。他人からすると言いたいこともいっぱいあると思う。実際周りには「家なんて持ってるだけでお金かかるじゃん」とか「古い家買ったの?地震で壊れちゃうよ」とか言われている。

でも、両腕を空に上げて大声で言わせて欲しい!

やったーー!
夢がひとつ、叶ったぞー!!

本当に清々しい気持ちです。
さて、始めようDIY。

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