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朝日の夢は夜開く



夜の仕事を始めたのは大学3年の時だった。

元々夜勤のアルバイトをやっていたけれど、卒業後の奨学金の返済や生活のためにもう少し稼ぎたいと考えたのがきっかけだった。
はじめはキャバクラ、ラウンジ、ガールズバー。生活に支障が出そうになると副業として夜の仕事をした。現在働いているお店は自分の特技を活かせるショーパブで、ダンサーをしながらショータイム以外は接客をしている。


キャバ嬢やガールズバーの女の子というと、ギラギラしていて派手でお喋りが上手。男性に媚びるのもお手のもの、というステレオタイプな夜のイメージが一人歩きしているが、実際はそんなことない。副業でやっている女性は沢山いる。美容師、看護師、ネイリスト、OL。私が今まで働いてきた場所は、昼の仕事だけではやっていけない人たちが多数在籍していた。


半年前、ある友達に言えなかったことがあるのと話を切り出され、学生キャバクラで働いていたことを告白された。その子は泣きながら、家族を助けなくちゃいけなくてと話した。これに対して、私もやっていた経験があり、そして生活が厳しくなればこれからまた始めるかもしれない現状をどんなテンションで切り出すべきか……悩んだ末、私もやってたよー!と明るく言い放ってみた。その子は安心した、私だけじゃないんだと涙を拭っていた。



私も彼女のように、涙を流しながらキャバクラで働いていることを話したことがある。その相手は母だった。私はこんなに苦労してるの!親に頼らず生活するために!びえーん!と発狂した。まるで悲劇のヒロイン気取り。母を困らせたかった。


その頃の私にとってキャバクラで働くこと=母を困らせるような大罪であったのだ。



母は親に頼らず生活しようとする自立心を褒めてくれ、はじめて会う人や好きでもない男性と関わりと色恋営業しなければならない可能性がある仕事を心配した。けれど、私がキャバクラで働くことを叱らなかったし、現在でも、夢を追いかけやりたいことをするための仕事だとショーパブで働くことを受け入れている。



つまり、母は夜の仕事を大罪だと思っていないのだ。そして、私を悲劇のヒロインにはさせなかった。



発狂して母に話した時、私自身がキャバクラのステレオタイプなイメージに囚われていた。実際私の働いていたお店は本職としてやっているキャバ嬢は少なかったし、みんな何か事情を抱えて働いていた。そもそも副業をしなければならない女性たちが多い日本の経済状況に問題があるのだが、副業として夜の仕事をすることにマイナスイメージを持つことは無い。それを教えてくれた。



確かに大変な仕事ではある。お酒を飲んで体調が悪くなることもあるし、男性の愚痴を聞いたり口説かれたりすることもある。だからその行為に大きなストレスを抱えて、お金のためだと割り切れないのならやらない方がいい。でも、その点ではどんな職業も同じだと思うのだ。




私には夜の仕事で接客をする上で知らないことを学んだり、綺麗に身を整え飾ることが幸福度を上げたりといい面もあった。(それは自分に合った店に出会ってからだけど)



夜の仕事は、ワイングラスを丁寧に拭くように自分を磨きあげるようだった。外見だけではなく内側も綺麗に磨かなければ外側に映し出されてしまう。


また、男性に媚びない人も沢山いる。男性から利益を得ているキャバ嬢にフェミニストはいない、とかいうツイートも見られるけど、経済的な自立に苦しみ時にセクハラを受けることもあるキャバ嬢にフェミニストは多い気がする。

キャバクラで働いていたことを打ち明けた友達に明るく言い放つ選択をした私は、彼女に胸を張って欲しかったのだ。私たちは夢のために、生活のために、夜の仕事をしている。それに加えて、お客様に喜んでもらうために話し美しく振舞い、自分を磨いて。





副業で夜の仕事をすること。それは恥じるものでも罪でもない。私たちが成し遂げたい何かのために選択したひとつの手段だ。




そして、そんな仕事を軽蔑する人がいるなら、イメージだけじゃなくて一度お店に来て欲しい。
性別関係なく私たちはお客様を楽しませるのだから。





私の夢を開くために、私は今夜も働くのだ。




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