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一人が好きとはっきり言えない

好きなカフェは特にないけれど、通りに面した透明なガラスの前の席が好き。
前を通っていく、いろんな人を見ていたい。

おかしいことに、孤独を感じる時ほど人との関わりが多い時で、この孤独の解消法として一番効果的なのが、一人でいることな気がする。
人に会いすぎて、しかもどの人も本当に心を許している人ではなく、会社の人だったり、友達の友達だったり、病院や美容室の人だったりで、仕事時間以外にも人に気を遣いすぎて疲れてしまっているのかな。
なんとなく、寂しい。
一人暮らしの生活の中でふとそう感じた時はたいてい、一人の時間が足りていない。

矛盾している。だけど、いい矛盾なのだ。寂しさを自給自足できている。お腹が空く、自分で食べ物を用意してお腹を満たす。そういうこと。
一人の時間を取って、自分の人嫌いさを憂い始めようかと思ったけれど、一人の居心地の良さには勝てなくて。
人が好きだったらどんなに良かっただろうかと、いつも思う。
人に会って、しゃべって、笑い合って。

そういう幸せが地球くらい大きかったとして、一万二千七百キロメートル分すべて享受できるような人間だったら、と。
私は、そういう幸せを感じられる分がきっと月よりも小さい。こんなにも、一人の時間が心地いいと思ってしまっているから。

そして、人嫌いを人に伝えることができたら楽なのだろうかと、いつも思う。みんなの前では愛想良く振る舞って、いつも笑顔で元気そう。そう思われるように振る舞ってしまうし、そう思われたいと願ってしまう性分だから。
どちらかの願いが本当になれば、今ほど誰かといながら孤独を感じることはなくなるのかな。
同じように思っている人っていたりするのかな。


桜が散っちゃう。
雨が傘に当たる音。パチパチという音が大きな線香花火みたい。

日中、みんながきらきらと見上げていた桜が、夜雨に打たれてアスファルトにくっついている。
それでも綺麗だよと言ってくれる人が、桜にも必要だ。

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