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だいじょうぶ

自分が誰なのか、何者になるべきなのか、迷って悩んで苦しくて、私は昔から私を誰よりも可愛がってくれたおじいちゃんに、会いに行った。

私は世界の脇役で、決して主人公にはなれないのだとおじいちゃんに気持ちを吐露した時、おじいちゃんは静かに語り始めた。


僕は、もう足腰が弱くなった。
ここからそこのテーブルに置いてある本を取るのにさえ、ゆっくり、ゆっくり体を動かす必要がある。若い人が見たら、きっといらだってしまうくらいだ。
ごはんを食べるのもゆっくりになった。それでもまだ自分で食べられているけれど、そのうち誰かに食べさせてもらうだろう。
そんな僕は、憐れと思われるだろうか。

てきぱきと体を動かすことはできない、ごはんをいっぱい食べることもできない、そのことを悲しいと思う元気もない。
そんな僕は、世界の脇役どころか、お邪魔虫なのではないだろうか。

きっと、そんなことはない、と否定してくれるね。
僕にはその自信がある。
だからこうして、毎日幸せに生きているよ。
問題はね、世界の主役なのか脇役なのか気にすることじゃない。

どっちでもいい。あなたがいることに意味があると、思ってくれる人がいるだけでいいんだ。

歳をとって、体は重くなって、できることも限られているけれど、僕は自分を憐れとは思わないんだよ。

誰が世界の主役なのかはわからないけど、僕が散歩をして見つけた、雨露に濡れたススキの美しさを感じた気持ちは僕だけのものだ。

僕の涙は僕にしか流せないし、誰かの涙を代わりに僕が流せないように、この人生は、僕にしか生きられない、僕だけのものだ。
君の人生も、君だけのものなんだよ。

君もそう思って、明日を幸せに生きられますように。
大丈夫。

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