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【鑑賞記録】「ダンサーイン Paris」(お絵描き日誌)


「ダンサーイン Paris」 (2023-10-18)

先日、「ダンサーイン Paris」を観てきました。@アップリンク吉祥寺


🔶物語の始まり(序盤あらすじ)

幼いころからエトワールを目指し努力を重ねてきた主人公=エリーズ。

ステージの舞台はすでに開き、出番を控えるエリーズは舞台を見つめながら精神を集中しようとしています。
けれどその視界に入ってきたのは、舞台袖で他のダンサーと親密な行為に戯れる恋人の姿。
動揺したままステージに上がったエリーズは転倒して負傷。
診断の結果、手術が必要になるかもしれない、その場合は2,3年は踊ることが出来ないと告げられます。
26歳のエリーズにとって、2,3年踊ることが出来なければエトワールへの道は閉ざされたも同じ。

失意のエリーズを友人がアルバイトとしてブルターニュへ誘います。
そこは芸術を愛する年配の女性が、表現者たちに創作と向き合う環境を提供しているコテージ。

アルバイトとして料理の下ごしらえをしているエリーズの目に入ったのは、コンテンポラリーダンスのレッスン。
脚の痛みもあり踊ることに恐れを感じていたエリーズですが、乞われて練習に付き合っているうち、今までのバレエとはまったく違うダンスに、再び踊る喜びが湧き上がってくるのを感じー

🔶意思から生まれる熱意ではない、体が宿す生命力「生きる力」


夢に向かって努力していた主人公が、挫折を経験し、生き方を選択しなおし、再び光を掴もうと立ち上がる。

ストーリーとしてはよくあるものだと思いますが、よくある「諦めるな」だとか、「努力すれば夢は叶う」といった押しつけがましい言葉を言う人が一人もいないことがとても良かったです。

語られる言葉は、強者の成功譚から導かれるものではない。
弱さ・痛みを抱え、自らの弱さを知っているからこそ、「強くなりたい」と祈るような気持ち。

誰かに勝つために強くなるのではない、生きるために強くなることを願う。

じょじょに熱を増すダンスシーンは圧巻でした。
その熱は意思が生みだす「熱意」ではなく、体が宿している生命力だと思いました。

悲しみ、絶望に暮れていたエリーズにも
「あなたの体は生きたがっている」という言葉がかけられましたが、その意味が分かると思いました。

生きることは理屈ではなく、動物としての本能。

ステージにたぎっていたのは、命の炎でした。


それだけでも十分感動なのに、この映画、父娘の関係も絡めてくるんですよ。
コンテンポラリーダンサーとして初めて舞台に立つ娘を見る父の目。

ずるい・・・私、映画館で号泣してしまいました。
映画館出たあとも、「めっちゃ泣いたあとの目」になっていたので、駅まで俯いて急ぎ足で帰りました💦


🔶主演、マリオン・バルボーの決意を乗せた「約束する」という台詞

エリーズを演じたマリオン・バルボーはダンサーとしてバレエもコンテンポラリーダンスもこなす稀有な存在。
映画はこの映画が初出演だそう。

あっさりした演技なんです。
過剰な熱や力みがない。
絶望から再生する主人公を演じながらも、たぎるような何かを燃やす演技ではなく、とても自然に感じました。
そこがまたこの映画と合っていたんですよね。

だからこそなのか、台詞に真実味があるんです。
演技で作っている感じがしない。

短いシーンですが、とても印象に残ったのは、表現者に創作の場を提供している館の主に言った
(これからもダンスを続けると)「約束する」と言った言葉。

「約束する」って、
「約束して」って言われたら脊髄反射的に言えてしまう、言ってしまう言葉だと思うんですね。
本当はその気がない時もあれば、相手の信頼を裏切りたくないが故だったりもあるし。

でも本当に思いを込めて「約束する」と言うことは難しいです。
未来を約束することは難しい。

エリーズの言った「約束する」にはちゃんと思いが乗っていました。
大げさなタメがあったわけではないけれど、そこにこれからの自分の生き方への決意が込められていました。


とてもいい映画でしたね。
観られて良かったです。


🔷クレジット


「ダンサーイン Paris」フランス・ベルギー(2022年)
監督:セドリック・クラピッシュ
振付・音楽:ホフェッシュ・シェクター
キャスト:マリオン・バルボー、ホフェッシュ・シェクター

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