見出し画像

辞校式と図書室


うちの自治体は、基本学校司書は3年で異動という不文律がある。なので、ある程度は覚悟しながら働いてきた。

コロナ禍前は、内示が出て、保護者にも事前に連絡がいき、子どもたちはお手紙などを用意する時間があり、最後は花道を通って、声をかけたり握手したり、花束をもらったり、背中トントンしたり、とレッドカーペット帰りの時の人のように囲まれて、別れを惜しむことができていた。

今回は、前日夜の急遽の一斉メールだったので、おそらくお忙しい保護者の方は見逃しているし、子どもに伝わっていないことも考えられる。

だから、辞校式で体育館の壇上で席について子どもたちを見回すと、明らかに初めて知った驚きの表情の子がたくさん見られた。

あちらもこちらも、まるで砂漠で水を求めるかのごとく、手をこちらに伸ばして「行かないで〜」「ずっといて〜」と言う子がいて、その表情と動作のどちらもが、可愛いやら愛おしいやら可笑しいやらで、開式の辞の前に、すでに笑い泣きで涙がマスクに落ちていく。

ばいばい、と手を振る子たちもいっぱいいて、わたしもばいばい、と手を振っていたら
教務が

「1年生、2年生のみなさん、手を振りたい気持ちはわかりますが、いつまでもそうしていたら、式を始めることができません。我慢しましょう。」とアナウンスして


、、、怒られた、、、

いやいや、ここは、ただ「気をつけ」でいいでしょうよ、、


準備ができるまで、しばらくお待ちください、って言われた後だから、そこは、いいでしょうよ?

まあ、マイクで私に注意するわけにはいかないでしょうけれども。。

しかも、校長がひとりひとりの紹介をして、離任者は立って一礼するのみ。
校長、わたしの仕事の何を見てきて、何を知ってるっていうのよ、、学校図書館長のくせに、ほぼほぼ全く来なかったくせに。何度もお声がけしたのに。

そんな通りいっぺんの紹介いらないから、10秒喋らせてよ。

途中から他の先生が一礼しながら「ありがとうございました!」って仰ってたから、私は
「いろいろな本を読んでください!」って言った。大きい声出したあとに、あ、マスク外したんだった、って思い出したけど、まあ、過ぎたこと。

式自体は、PTAからの花束贈呈もなく、子どもからの贈呈もなく、さらっと終わって児童が退場になったので、せめて、、と出口のとこで、「ばいばい」って手を振った。
そしたら、いつもわたしが図書室でもお見送りしていたから、その時もいつからか、去年くらいからかな、私のバイバイにジャンプしてハイタッチしようとする子が続出してたから、その流れで、この日もハイタッチしたり、目を合わせて「またね」って言えたりした。

子どもたちも「本、読みます!」「いままでありがとう」「○○小、ほいくえんのおともだちいるよ」「からだにきをつけて」などなど言葉をかけてくれた( ;  ; )優しい、、

完全下校終了時刻っていうのがあって、その設定された時間までには、全員が門を出る。旗持ちの地域ボランティアさんにご迷惑をおかけしないために。危ないから、ひとりにならないで、集団で帰るために。

だから、本当はすぐに帰らないといけないのに、先生からも怒られるのに、
それでも、、とひとこと伝えに来てくれた子で図書室が溢れた( ;  ; )

もちろん、そんなテがあるとは思わずに、帰って行った子も大勢いると思う。

どちらにせよ、3年間、心を尽くして、ひとりの人として接してきた(つもり)。
本が好きで、本を通していろんな想いを共有してきた、積み重ねの時間は、確かにあったんだなあと感じた。

花束やプレゼントを用意して、雨の中をわざわざいらしてくださった保護者さんも。

不登校で悩んでおられたママ、ボラでお世話になったママ、『赤毛のアン』は村岡花子訳も素晴らしいけれど、ぜひ松本侑子訳も、と薦めたママ、役員で来るたびにお話できたママなど、みなさんお忙しい中を、お時間とってお気遣いくださったことが、本当にありがたい。
本を読むときのお供にしてください、とお菓子を持って来てくださったり、子どもが私に選んでくれた本をプレゼントしてくれたり( ;  ; )
卒業式で撮った写真を現像して、それを色紙に貼ってくださった方も。うう、卒アルにも写ってないし、(小さな囲み枠のみ)自分の写真は全くなかったから、本当にうれしい。

おうちで学校図書館の話をしてくれていて、図書館だよりも手書きの部分を家族で話題にしてくださっているご家庭もあって、参観などでお会いすると、お声がけいただくこともあった。

新任の先生で、そっちも下校時刻守らせろ、って怒られちゃうだろうに、クラスの子がお手紙書きたいっていうから、ささっと書かせてその子たちを図書室まで連れて来てくれたのも、感動だった。(人間味というか、あたたかみにやや欠ける、、って思っててごめん!違った!)

俯きながら、「わたし、なにも持って来てなくて、、」と言ってくれた子のことは、思わずハグしてしまった。いま、思い出して書きながらも、涙が出る。ダメって言われてても、それでもひと目だけでも、ひとことだけでも、って図書室に来てくれて、順番待ちしてくれただけで、もう、もう本当にどれだけうれしいことか。

だからこそ、お手紙にお返事を書きたい気持ちと、出したくても出せなかった子のことを考えたり、会いに来てくれた子全員を正確に把握して取りこぼしがない自信がなかったり、それから後任の方に手紙を託すわけにもいかないし、、で、ちょっと悩ましい。

先ずは、住所を書いている卒業生の分のお返事だけは、書こう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?