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メサイア / 自作ショート・ショート

言葉が通じないこの町で、長年、理髪店をやっている父親は、彼に弁護士になれとハッパをかけ続けるのです。
貧乏人が、この街で生き残るには勉強するのが1番だ。父親らしい愛情の言葉に頷きながらも、ボロボロの屋根裏部屋で、彼の心にはいつも音楽が鳴り響いていました。

そんなある日、優しい彼の母親と姉は、音楽を愛してやまない小さな少年に、一台のハープシコードを知り合いから貰い受け、こっそりと屋根裏部屋に運びこんだのです。

貧しい外国人の家庭に灯った小さな愛の光。少年は喜びに満ちて、みんなが寝静まった後で、くる日もくる日も、ハープシコードの前に座り、ハープシコードを弾き続け、なけなしの小遣いで買った古本で、一生懸命に音楽の勉強に浸りました。

ところがある日、彼の部屋に、眠っているはずの父親が荒々しく入ってきました。彼の母と姉は、事がばれたのを恐れながら、ただ成り行きを見つめるばかり。

しかし、優しい彼の父は、なにも言わずに階段を降りて、また自分のベッドへと戻って行ったのでした。

そして息子の就学の為に、コツコツと貯めたお金をはたいて、息子に音楽の家庭教師を付けてあげたのでした。

メサイア オラトリオ :ハレルヤコーラス として知られる
この素晴らしい曲を作った作曲家の、少年の頃の、愛に溢れた小さな物語。


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