見出し画像

純度100%のダンスミュージックで踊る〜Dan Kye「small Moments」レビュー〜

 tom misch、FKJ、alfa mistとのコラボ等、ジャズやネオ・ソウルのシーンで食い込みを見せるマルチプレイヤー・jordan rakeiの別名義こそがDan kyeであり、初のフルアルバムとなる。
 jordan rakei名義の作品、例えば最新作「origin」では彼がルーツであると称しているソウルミュージックをベースに現代のモードに即したエクスペリメンタルなジャズやエレクトロの感触を織り交ぜて昇華しており、アフロも感じるグルーヴィーな演奏に加えて、クールでいてどこか情緒的な歌声が染み入る。

 本作については、彼のメインプロジェクトでみられるような質感も引き継ぎつつではあるが、ボーカルを減らしてハウスミュージックを主軸にガッツリ。全曲一貫して「踊る」ことにフォーカスしている。
 とにかく音が良い!ファーストインプレッションはそんな感動だった。心踊るようなキックの力強さとファンクを感じる上物の絡みに自然と頭が揺れる。普段ハウスを聞かない自分にすら突き刺さるのだから、おおそらく万人が踊れるだろうし、その意味でリスナーフレンドリーな作品だ。

また、時折挟まれる開放的で視界が開けるようなコード感と、風通しの良い彼の歌声が作品を特徴付けている。
 ハウスのビート感であったり、あるいはジャズ的な音の響きというのは、個人的には「室内」を連想させる要素である(もちろんそうでないものもたくさんあるが)。本作も例に漏れず、余計な思考を挟まずに音楽に没入していくポジティブなダンスへのストイックさを感じる。しかし、同時に上述のような彼の澄み切ったボーカライゼーションは開放的な要素を含んでいるから、閉鎖的/開放的なサウンドスケープ両方を兼ね備えているのが面白い。
 

 ネガティブなニュースが多い現在ではあるが、純度の高いダンスミュージックに身を任せる瞬間があってもよいのかもしれない。そう思わせられるほど素直で力強い作品です。是非、聞いてみてください。

こちらはjordan rakei(j-pop的な接続でいうとcero荒内さんも以前レコメンしてました)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?