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【雑感】2月の陽気とyour smith「bad habbit」

 2021年の2月はとても暖かい日があり、不用意に冬の装いで外出してしまった日中、歩くだけでも汗ばんでしまった。冒頭から軽率に天気の話になってしまったが、話題に困ると天気や気候の話になってしまうのは、文字の上でも同じなのかもしれない。

 無論、気候が変われば聞く音楽も変わる。なんとなくyour smithの「bad habbit」のジャケットを思い出して聴いてみる。あまりに眩い彼女の姿に心を釘付きにされ、頭の片隅に挿してあったブックマークしてあったのを、この暖かさで思い出す。まあ、どう見ても夏のジャケットなのだけれど、それぐらい暑い日に感じた。
 目の眩むようなブロンドのショート、馬鹿でかい麦わら帽子、ボーダーのワンピース(少しセーラー服っぽいニュアンスがポイント)、生い茂る葉とオレンジ。その一方で視線と咥えた煙草はボーイッシュな魅力もある。
 女性を褒める言葉選びは年々難しくなるばかりだが、人間としての魅力を真正面から捉えた力強く、キュートかつクールなジャケットの素晴らしさに唸ってしまう。改めて大きな画面で見るとより一層感じるだろう。

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 本作は2018年にリリースされたEPでタイトルの通り、先行でシングルカットされた「bad hobbit」がリードトラックだが個人的にはMVにもなっている「The Spot」を勧めたい。ここでは「バランス感覚が優れている」という言葉をもって彼女の曲を褒め称えようと思う。
 音楽的に突飛なアイディアを取り込んでいるわけではなく、あくまでポップスマナーに則りながら、しかし各楽器のバランス感が非常に整えられていて、聴いていて非常に気持ちが良い。パーカションの組み込み方も自分好みのスパイスの利かせ方で、曲こそ活発なポップスだがそのアレンジには細心の注意を払っている繊細さ感じる。また、彼女のハンサムなボーカライゼーション、特にこの曲のAメロではボーカルとの中間を、ダンサブルな勢いを失わずにドライブしていく。そこに、彼女の人となりが滲み出るようで個人的に気に入っているポイントだ。

 そもそもyour smithという名義になる前には本名のcaroline smith名義にて活動しており、其の頃の作品からもトラッックが冴えていることがわかる。ジャンルとしてはR&Bに区分されるのだろうか、太い幹ように力強く、確実に耳を捉える腰を据えたビートに彼女の才をひしひしと感じる。
 名義を変えたという意味では、「bad hobbit」の方がより滋味深いサウンドとなり、変わり映えがあるのかもしれない。しかし、ポップスに接近しながらも切れ味を増す一方の「The spot」の方が個人的には刺さるものがあった。近年の作品だとHAIMなどがフィーリングとして近く、かっこいい女性のエネルギーを感じた。

 ここからは余談。話は冒頭に戻り、そんなyour smithを聴きながら汗ばんでいた日、小さい頃の同級生(10年以上会っていない)と突然連絡する機会があり、酷くびっくりした。たまたまこの曲を聴いていて、小学生ぐらいの記憶からタイムワープして髪が明るくなっていた彼女とリンク感じ、なんとなくこの曲を勧めたら喜んでくれた。それが世辞であっても、自分のレコメンドした曲を喜んでくれるのは嬉しい。彼女は次のように言ってくれた。
「時間の概念がない世界に飛んでいったような陶酔感がある」
ニュアンスとしてはこんな感じで、私の拙筆では伝えきれないのが申し訳ないが、彼女とのやりとりで使われた「飛んで行った」というその言葉・そのタイミングが妙に日本人離れしてたような感じ(fly me to the moon的な)で、自分からは絶対浮かばないようなピュアな感想に少し感動するところがあった。
 your smithにまつわるそんな1日でした。


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