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愛しき変わり者たち

去る4月26日(月)、久しぶりに自分好みの映画「ブックセラーズ」を観に行った。美しく、時に気品さえ湛えながら、どっしりと落ち着いた表情を浮かべる書籍とは裏腹に、目まぐるしく登場する、ある種独特の近寄り難さを持つ癖者たち。対峙する人より本との距離の方が異常に近い人種。容易く友達にはなれないか、その真逆で奇跡的に気が合うか、いずれにしても本を介するしか術はない。何はともあれ彼らの集めた古書に感心する、そのことが彼らを最も喜ばすことではある。

ビル・ゲイツが史上最高額で競り落としたレオナルド・ダ・ヴィンチの直筆ノート(レスター手稿/ハマー手稿)の落札瞬間の映像も垣間見られる。2005年日本初公開された時、私もその実物を東京・六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで拝めた日の記憶が甦った。薄暗がりの中、スポットライトに照らされた、その巨大な知の宝庫からは無限に発散されるエネルギーが漂うかのようだった。

1865年に刊行された「不思議の国のアリス」の原本「地下の国のアリス」。ルイス・キャロル自身の挿絵・装丁、直筆そのままのオリジナル本の映像も見逃せない。私の手元にあるのは1992年第12刷の書籍情報社より発行された復刻版にすぎないが、小さな宝物のひとつ、今も目に触れるところに飾っている。

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地元福岡に戻っても、書くことを続けながら、ただ本の側で働ければという思いで新米書店員にもなった自分。希少本や古本を扱っているわけではないが、本に携わる者となって、この春タイムリーに出逢った映画だった。本の来し方、その行く末をまさに考える今、観るべき映画と言えるだろう。


http://moviola.jp/booksellers



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