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ともしびの小冊子

画家の山口法子さん、雑誌制作の久世哲郎さんが企画・編集された、日本国憲法の小冊子。扉を開くと、すぐに子規の歌に導かれる。

「真砂なす 数なき星の 其の中に 吾に向ひて 光る星あり」正岡子規

それぞれの書き手の話がまるで夜空に輝く一つの星のごとく、そっと読み手の心に光を灯してくれるような、そんな小さな本。人の気づき、道しるべ、星となるのは、まさに、こんな、わずかな枚数の紙片から成る小さな冊子からはじまるのだろうと改めて思わされる。

憲法を語ろうとすると、改憲か護憲か、右か左かと、辺りがやおら騒がしくなる。どちら側か、何派の主張か、その言葉、一言一句に慎重にならざるを得ない、周りの緊張にざわめく気配。空気を読む風潮、大事なことほど、語れない、口に出せない、お国柄。けれど主権は国民にあり、その中の一人である自分。それを守ってくれているのが憲法なら、もっと、ちゃんと知って語り合った方がいい。

時を経て、時と共に変わってゆく世界、政治や法律も時代を歴て新しく、国・地域・社会に添って進化・変化してゆくもの。自分など力無き小さな者と、ただただ、傍観し受け入れていくだけでよいのか。自分も属し参加して、今を生きているのに、知らないままでいいのか、立ち止まり、見つめ直し、今こそ、考えなければならないのでは。

そういう、今これから、小市民の自分がこの問題にどう臨んだらよいのかを考えるきっかけとなる優しい本。声高に叫んだり、違う道へ誘いはしない、ただ、私はこう思う、こうして行く。という意見や姿勢が伺い知れる希少な冊子だった。つい先月、パルコで福岡初開催されていたブックイベント「BOOK PARK CLUB」の最終日に会場店舗に立ち寄り、偶然に目に留まり、連れて帰った唯一の本だった。

あまりに薄いその本の深さに恐れ入った今日、今年ももう終わろうとしている12月、予報が告げていた年内に見る事の珍しい雪は、この朝方はたして降るのか。

小冊子「日本国憲法と夜の星 」第1号(前文編)
企画・編集/山口法子 久世哲郎
執筆者/前田せつ子(編集者・映像作家)奥由美子(ナツメ書店 店主)久世哲郎(雑誌制作)山口法子(画家)
絵/山口法子
2023年 7月 発行 A5判 / 14p / 中綴じ 定価330円(税込)


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