勝手にアニメキャラのセックスを想像してみた

第9回 青山ブルーマウンテン その9

私たちは、どのくらいベッドの上で伸びていたのだろうか。
私はよっしーに視線を向けると、彼も私に笑顔を向けた。
「よかったよ……今晩も激しかったね、みどりん」
彼はそう言うと、その逞しい腕で、私を優しく抱いた。
「素敵だった」といいながら、私のおでこに優しくキスをする。
ゆっくりと私と背中を撫でると、片方のてのひらで、私の手をしっかり握る。
彼の愛情をたっぷりと受け止めた私も、彼の手を強く握り返した。
私はこの瞬間が好きだ。
お互いに求め合っている。
ただ手を握り合っているだけで、こんなに嬉しいなんて。

「喉、かわいちゃったね」
私はゆっくりと上半身を起こしてベッドから立ち上がり、バスタオルを纏ってリビングに向かった。彼も起き上がると、バスタオルを腰に巻く。
二人はリビングのソファに、深々と腰掛けた。
「ワイン、飲もうか?」
私はこくんと頷くと、彼は私のグラスにワインを注いでくれた。そして私も、彼のグラスに同じことをしてあげる。
「素敵なこの瞬間に、乾杯!」
「乾杯!」
再びグラスをカチンと合わせ、ゆっくりとワインを飲んだ。
「テレビ、みようか」
そう言って私は、リモコンでテレビの電源を入れた。あちこちチャンネルをいじっているうちに、テレビは深夜のワイドショーの画面を映した。
最初に飛び込んできたのは、鷹崎奈津が女子テニスツアー・チャイナオープンでベスト4に勝ち進んだというニュースだ。
「鷹崎奈津、今年はすげぇな。絶好調じゃん」
よっしーはテレビの画面を見つめながら、一人つぶやく。
私もそれを見て「うん」と頷く。
確かに、今シーズンの彼女の活躍は素晴らしい。
今年開催されたテニスの四大オープンは全てベスト4に勝ち残り、ドバイで開かれた大会で見事に優勝したことで、彼女は今年WTAファイナルズへの進出を決めた。
彼女にとってはもちろん、日本女子プロテニス界でも初めてで、メディアはこぞって彼女の活躍を大々的に報道している。
彼女の活躍に刺激されたからか、今年は男子も結果を残している。チャイナ・オープンと同じ時期に開催されている上海マスターズでは、丸尾栄一郎と池爽児がベスト8進出を決めた。しかし前回ベスト4に進出した江川逞は、今回はあっけなく2回戦で敗退した。
「江川、今年はダメだな……」ワインを飲みながら、よっしーがぽつりとつぶやく。
「彼、去年は絶好調だったのに、どうしたんだろうね……」と、私も応じる。
「彼らと連絡とっているのか?」
「丸尾君と池君とは、頻繁にメールしているよ。でも江川君とは、最近は没交渉で……」と、私は曖昧に言葉を濁す。
「そういえばみどりん、あいつらと付き合っていたんだろ?」
「江川君と池君とは付き合っていた時期があるよ。でも丸尾君は鷹崎さん一筋、何より鷹崎さんは丸尾君しか見えていない……」
「それはそうと君、あの二人と寝たのことがあるのか?」
「うん……」
「すげーな、君の恋愛遍歴って」
「よっしーにはいわれたくない」
実は最近も、池君とも寝たばかりだ。
江川君と池君は女性からモテるが、そのベッドマナーは対照的だ。
一言でいえば江川君は、典型的な「オラオラ俺様系」だ。
体格がよくてパワーがあるが、ただそれだけ。自分だけ気持ちよくなればそれでいいという典型的なジコチューで、女性陣からの評判はすこぶる悪い。
しかも粘着質なところがあり、別れ話がこじれると成績にもろに影響するから始末に負えない。今年の不振だって、女性関係のもつれが原因ではないかというのが、もっぱらの噂だ。
対照的に池君は、関係者からも女性からも「飄々としてかっこいい」といわれるだけあり、他人に好かれるタイプだ。
私は雑誌の取材で池君と知り合い、ほどなくして深い関係となった。力強さと繊細さを兼ね備えたそのスタイルは、そのままベッドでも生かされている。
挿入してからの腰の動きは、さながらテニスコートの動きそのままという感じで、私も何度絶頂に達したかわからない。
アフターケアも丁寧で優しいため、ガールフレンドは結構多いだろうな。かつて姫川亜弓と付き合っていたという噂もあるが、真偽のほどはわからない。
「鷹崎とはどんな話を?」
「メールでもリアルでも、テニス以外の話題は丸尾君のことばかり。だから『お前、他に興味がないのかよ』と突っ込んでいるんだけどねぇ……」
「君たち、鷹崎とセックストークするのか?」
「最近はそればっか」と私は苦笑しながら答える。
「エーちゃんとこんなプレーした、エーちゃんはスゴいんだよ、てな感じでさ……」
「丸尾ともそんな話を?」
「こないだ顔を合わせたら『なっちゃん、夕べもメチャクチャ激しくって……だから、僕もがんばっちゃう』って苦笑していた」
「ひょっとして、みどりん……」
「てへ」ワタシは思わず舌を出す。
「そうだよ。なっちゃんが試してエーちゃんに効き目があったことを、よっしーにもやってるの」
私はにっこり笑いながら答える。
「君たちねー、ドンだけ好きもんなんだか……」と絶句するよっしーに私は
「なによー、よっしーだってスケベじゃん」
と私は応じながら、彼に抱きつく。
そのままソファの中でじゃれ合っていると、いつの間にテレビの画面は、池谷美咲と磨瀬榛名が出ていた。字幕には「池谷美咲と磨瀬榛名、近日公開の共演映画で大胆な濡れ場を披露!」という、何とも刺激的な字幕が踊っている。
「ひょえー」よっしーは私の隣で、バカ面を晒している。
「北島マヤと姫川亜弓に続いて、今度はこの二人が脱ぐのかー」
どんなカラダをしているのかなー、などととブツブツ言いながら、スケベモード全開で佇むよっしーに、私は強烈な肘鉄を食らわせた。
「あいたたたた! なにすんだよみどりん!」
「裸だベッドシーンだとうるさいんだよ! アンタ、私がそばにいながらヌケヌケと……」
「僕というオトコがいながら、よその男に身を委ねるお偉い大作家先生に、そんなこといわれたくありませーん」
「はいはいそうですか」と、私はふくれっ面をよっしーに向ける。
「北島と姫川の去年の公式会見、アンタも私と一緒に見ていたよね?」
「ああ見た見た。その後公開された映画での2人の演技は、本当にスゴかった……」
北島マヤと姫川亜弓は、日本演劇界で知らないというヤツはモグリだといわれるほどの、我が国を代表されるトップ女優であり、国内の若手女優から目標とされる存在だ。
とくに姫川は、ファッションセンスも立ち振る舞いも優雅な雰囲気を漂わせており、演劇界デビュー以来その一挙手一投足は、国内のメディアからも注目を浴びている。
その二人が共演する映画「理性と欲望」で、これまで2人が持っていたイメージを覆す、大胆かつ過激なベッドシーンを演じると伝えられ、国内の芸能メディアが一斉に色めき立ったのは昨年秋のことだ。
公式会見に先立ち、演劇・映画関係者とメディアを対象にした試写会では、会場のあちこちからどよめきの声が起こりっぱなしだったと報道された。
会見は、代表質問の形式で行われた。その模様は、私も広告代理店に勤める友人経由で動画ファイルをもらって見たのでよく覚えている。
その席では二人とも、自分たちはオーディションを受けて役を勝ち取ったが、日程が全く別だったので、お互いこのオーディションを受けたことは全く知らなかったと述べた。そのため配役発表後の初顔合わせの日に、会場に到着したら、お互いがいてびっくりしたという。
過激なベッドシーンについて、脱ぐことにためらいはなかったのかという質問が飛んだ。
そのことについて姫川は
「私は役の本質を掴むためには手段を選ばず、どんな苦労も負担も厭わない主義ですの。過去に『役者として成長したいから脱いだ』と語った女優がいますが、私も役者として成長した姿をファンの皆さまが見て、それを喜んでいただけるのなら、女優冥利に尽きますわ」
と、艶然とした笑みを浮かべながら答えると、北島も
「原作を読んで、その世界観に惚れ込んでオーディションを受ける決意をしました。実際に演じてみて、この作品を選んで本当によかったと思います。原作には過激なベッドシーンが沢山出てきますが、そういうのは気にならなかったです」
と述べた。そして姫川のいる方向にチラリと視線を向けると
「私たちには『紅天女』のヒロインを務めるという目標があります。この映画には『紅天女』を演じるに必要な要素が詰まっていると判断したから、今回の役を引き受けました」
と、きっぱりした口調で言った。

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