勝手にアニメキャラのセックスを想像してみた−2

第一部 青山ブルーマウンテン その2

わたくしはびっくりしましたわ。こんなところでわたくしのファンに出会えるなんて、こんな嬉しいことはありませんわ。
「そうですわ。わたくしが青山ブルーマウンテン本人です」とお返事しました。
「キャー、わたくしは先生がデビューしてからの大ファンです。『うさぎになったパリスタ』、原作も映画もどちらもみました。『グルメマウンテン』、いつも拝見していますよ」
と、女の子が喜色満面の笑みでわたくしに言葉をかけます。
『このお店、『グルメマウンテン』で取り上げたんですのよ」
「実は私たち『グルメマウンテン』で、このお店を知ったんですよ」
嬉しいですわ。ワタシの記事がきっかけで、お店を知ってもらえるなんて、作者冥利に尽きるというものです。さらに女の子は、男の子に視線を送りつつ、私に語りかけます。
「私たちの同級生にスゴい甘党の男子がいるんですが、彼が先生の記事を読んでこのお店を知ったみたいなんです。で、病みつきになってしまったらしくて」
「まあ、それはそれは」
フフフ、わたくしの影響力もまんざらではないようですわね。
それからも私たちは、おしゃべりに夢中になっておりましたの。
時計を見たら、もう17時をまわっておりましたの。
「あの、もう私たちは帰りますけど……」
そう言いながら、女の子はおずおずと本を私の目の前に差し出しました。
「これにサインしてくださいますか?」
わたくしの目の前に出されたのは、わたくしの処女作である「うさぎになったバリスタ」。
「ええ、いいですわよ」
私は嬉しくなって、裏表紙にサインをしてあげたのでした。
「先生、今日はどうもありがとうございました」
男の子が、わたくしにぺこりと頭を下げました。
「いえいえ、こちらこそどうもありがとう。またお店でお会いしましたら、お相手してくださいね」
二人は、それではさようならと手を振って帰って行きました。
わたくしは2人の後ろ姿を見ながら、ふと今付き合っている彼とのなれそめを思い出しておりました。

「青山先生、ちょっといいですか」
大手出版社である「生論社」の担当者から、今後について是非知ってもらいたいことがあるから、会社に顔を出せないかといわれたわたくしは、即座に、出版社に向かいました。
応接室に入ると、そこには男女の社員が2人、ソファに座っておりました。
女性社員は、わたくしの担当編集者である真手凛さん。彼女はわたくしの学校の1年後輩です。もちろん、今の会社はわたくしのコネで入ったのではありませんわ。彼女の実力ですから誤解のないよう。
「先生、私は今度の人事異動で、先生の担当から離れることになりました」
つきましては、後任の担当を紹介します、と凛ちゃんが告げました。
私と今度の担当さんは同時にソファから立ち上がりました。
「真手さんに代わって、このたび先生の担当になりした、上郷喜彦といいます。よろしくお願いします」
彼はそう言って、わたくしに名刺を差し出しました。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
私も名刺を受け取ると、にっこりと微笑みました。営業用の笑顔を見せても、別にかまいますまい。
「上郷先輩、青山先生には気をつけてくださいね。ちょっと目を離すと、あちこちフラフラするから。私は何度それで苦労したか……」
「ちょ、ちょ、ちょっとやめてよ」
わたくしは赤面しますが、上郷さんはまあまあとその場をなだめると
「青山先生、先生がいい作品を書けるように尽力しますので、よろしくお願いします」
と、改めてアタマをぺこり、と下げました。
温厚そうな、感じのいい人ですわね。
「こちらこそご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」
こちらも深々とアタマを下げました。

上郷さんは、とても優秀な編集者です。コミュニケーションが上手で根回しも達者、さらに資料集めやその他諸々の雑事も丁寧にこなしてくれます。おかげで、私の仕事もサクサクとはかどりましたわ。
そんなある日、上郷さんがある提案をしてきました。
「先生のグルメレポート、なかなか評判がいいですよ。でもちょっと目先を変えてみたいと思うのですが」
「はい、どういった企画でしょう?」
「今は秋ですので、温泉旅館の料理を取り上げてみてはいかがでしょう?」
温泉ですか?いいですねえ。疲れも癒やせますし、おいしいお酒と料理も楽しめますし。それに、いつも街中のお店ばかりだったので、たまには気分転換したいなーと思っていたところです。
「どこがいいですかねえ?」
「どうせ行くのなら、秘境温泉みたいな雰囲気があるところがいいですねえ」
「秘湯めぐりですか。いいですねえ」
今自分の季節だったらどこがいいか、2人でいろいろとインターネットで検索していたら、とある風情のある旅館を見つけました。
「ここなんてどうでしょう?」と私が言うと
「じゃあ、早速予約してみましょう」と、上郷がさんが応じます。
わたくしは手帖をめくって日程を確認し
「この日が都合がいいです」といいました。
それを受けて上郷さんが予約の連絡を入れたのですが、何やら困った顔をしています。
「先生……この旅館、この日は部屋が一つしか空いていないそうなんです」
「困ったわねえ。この日があいていないと、当分の間は遠出できそうにないですし……」
と私が思案顔で、上郷さんに話しかけたところ
「いや、その部屋は仕切りのための襖があるので、男女のお客様でも問題はないそうです」
だったらいいでしょう。着替えの時は襖を閉めればいいのですから。
「先生がそれでいいとおっしゃられるのでしたら、そこにしましょうか」
「じゃあ、それでお願いいたします」と、私は応じました。
さてここは、いったいどんな旅館なのでしょうか。今から楽しみです。
その旅館に到着したのは、紅葉が見頃な時期の、とある日の夕方近くのことでございました。
おいしい空気と美しい風景を満喫した私たちが、意気揚々と予約先の旅館に入ったのは、いうまでもありませんわ。
中はちょっと暗かったのですが、窓から見える景色はそれはそれは、都会では見られないほど美しいものでございました。
「先生、支度ができたら温泉につかってゆっくりしましょう」と、上郷さんがいいます。
ここの旅館の温泉は男女別になっているそうです。
「そうですね。それでは、お言葉に甘えまして」と私は、温泉に入る準備を始めました。

「う、うーん……ああ、気持ちいい」
温泉って、いくつになっても気持ちいいものですね。私は身体を洗うと、ゆっくりと湯船の中に入ってて足を伸ばしました。温めのお湯で、身体が芯から温まりました。
部屋に戻ると、すでに上郷さんが先におりました。テーブルの上には、すでに現地でとれた食材を使ったおいしそうな料理と、お酒がありました。
「先生、いただきますの前に写真を……」
ええもちろんですとも。これも仕事ですから。
わたくしは料理とお酒の写真を撮影すると、上郷さんと2人で山海の珍味を、思う存分いただいたのでした。

食事が終わって、私は今晩の夕食についてのレポートをまとめています。メニューについては、食べる前に仲居さんからレクチャーを受けました。それを踏まえて原稿を書いているのですが、どうも……その……なかなかうまい表現が出てきませんねぇ。
上郷さんはというと、別のところにテーブルを広げ、自分の仕事をしています。
うーん、うーんとわたくしがうなっていると、上郷さんが
「先生、いい表現が思いつかないのでしたら、気分転換がてら旅館内を少しまわってみてはどうですか?」
とおっしゃいました。
わたくしはそのご厚意に甘え、旅館内を見て回ることにしました。

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