勝手にアニメキャラのセックスを想像してみた−1

第一部 青山ブルーマウンテン その1

「ギギーッ」
「ガランゴラーン」
とある土曜日の15時過ぎ、私が甘味処「甘兎庵」の扉を開けましたら、千夜ちゃんがわたくしに挨拶してくださいました。
「青山さん、いらっしゃい。申し訳ないのですが、いつものお席は只今他のお客様がご利用なさっておりますから、こちらのお席でよろしいでしょうか?」
わたくしはおっとりした口調で
「かまいませんわ」
とお返事をし、千夜ちゃんはお店の奥にあるの4人がけの席に、わたくしを案内してくださいました。
わたくしは千夜ちゃんにお礼を言いイスに座ると、カバンの中からノートパソコンを取り出しました。さて、今日も「人間観察」という名の取材を行うといたしますか。

ご紹介が遅れました。
わたくし、作家の青山ブルーマウンテンと申します。
年齢は……今年27歳になりますわ。
小さい頃から読書や文を書くのが好きで、中・高時代は文芸部に所属しておりましたの。そのまま母体の大学に進み、20歳の時に「うさぎになったバリスタ」でデビューし、その作品は後に映画化されました。
今は小説の他に、グルメレポートや書評なども書いております。
甘兎庵は、大学時代からなじみの店で、千夜ちゃんや今のご主人様とも長い付き合いなんですのよ。

さて、わたくしがパソコンで原稿を書いておりましたら、千夜ちゃんが
「青山さん、ご注文はどうされますか?」
と注文を取りに来たので、草団子のセットを注文しました。
ここは周辺でも有名な甘味屋さんで、いつもお客さんが沢山おられます。わたくし的にこのお店のお薦めは、草団子やあんみつといったところでしょうか。
さてここまで読んでくださった皆さまは、一つの疑問が浮かんだと思われます。
「青山先生、あの『万年筆』はどうされたのですか?」
と。
ご心配なく。万年筆は、ちゃんと持っておりますよ。
でもね、インターネットが普及したことで、作家の仕事のやり方が以前と変わってしまいましたわ。連絡はメールとLINE、そしてSkypeで。原稿のやりとりも、校正も全てオンラインで行いますの。なので、わたくしも原稿執筆はWordやScrivenerで行いますし、調べ物もネットでやることが多いですね。

わたくしが作家になったのは、行きつけの喫茶店のマスターが、私の書いた小説を誉めてくださったのがきっかけですの。その方は残念ながら今ではお亡くなりになってしまわれたのですけれど、わたくしのデビュー作は、その人に捧げるつもりで書いた作品です。
先ほどでた万年筆は、わたくしがデビューしたときにマスターがくれたもので、これはわたくしの宝物ですわ。わたくしが作家としてやっていけるのも、この万年筆のおかげですから。まあ、おまもりみたいなものでしょうか。
「作家」と聞くと、皆さまはお金がかからなくてもなれるとお思いでしょうが、とんでもありませんわ。それなりにちゃんとした作品を上梓しようと思うなら、時間もお金もかなりかかりますから。
ペンと紙、そしてパソコン一式をそろえるのにもオカネはかかりますが、それ以上にお金がかかるのは書籍代。修業時代は文章やストーリー作成、そして登場人物の会話やキャラクター設定、演劇や映画、そして脚本に関わる本を買いあさり、夢中になって読んだのですが、それだけでかなりお金がかかってしまいましたわ。
それに、資料代もバカになりませんの。わたくしは処女作を執筆するにあたりコーヒーに関する文献を求めて国内の書店や古書店そして図書館を渉猟し、ネットで検索してみたのですが、なかなかほしい資料が見つからなくて苦労しましたわ。
古書店で見つけて「やった!」と小躍りして値札をみたら、これがとんでもない金額だったりして。
ワタシの家は世間では「大金持ち」といわれる階層なんですけど、それでも両親にばれたときは、それはそれはこっぴどく怒られたものです。本がヒットしたから大目に見てくれたようなもので、売れなかったら今頃どうなっていたことかと思うと、なんだかゾッとしますわ。
本を書くには取材費がかかるんですけど、昨今の出版不況でしょ?かかった経費を出版社が折半してくれたら作家サイドは大喜び。たいていは2~3割出してくれたら御の字で、費用は全部作家が負担してくださいというのはザラですの。処女作がヒットしても、二作目以降の作品が売れなかったら、分断からも世間からも「あの作家は終わった」というレッテルを貼れらるので、売れたら売れたで大変なんですよ。
あるベテラン作家さんが書いた小説指南本の中で
「自分はデビューしてから出版した28冊が全部初版止まりで、文壇からは「永久初版作家」というありがたくないあだ名をちょうだいした。29冊目の本が大ヒットしたから今も作品を書けているが、今だったら5冊出版したところで、出版社から契約を打ち切られていただろう」
と述懐していましたけど、本当にその通りですわ。才能だけで食っていく世界ほど、ストレスがたまるものはありませんわ。
過労死問題で騒がれていますけど、私からいわせれば、いつ契約を切られるかわからないクリエーターという人たちより、毎日決まった時間に会社に出勤し、(一応は)決まった時間に退社する会社員が本当にうらやましいです。
ああもちろん、一ヶ月の残業時間が100時間だの、連日連夜会社で泊まり込み作業だのという、労働基準法無視が常態化している会社で働くのは、私も勘弁ですわ。
そんなことを考えながら、わたくしは甘兎庵にやってくる人たちのことを観察しておりましたの。そうしましたら千夜ちゃんが
「青山先生、ご相席よろしいでしょうか?」
と申しますもので、わたくしはかまいませんわ、とお返事しましたの。
わたくしの席に座ったのは、高校生のカップル。女の子は髪がさらさらのストレートで、赤いアンダーフレームのメガネをかけ、しっかりとした印象を受けました。逆に男の子の方は眼に力がなく、どことなくけだるげな雰囲気を漂わせていましたわね。
わたくしは、このふたりにも「取材」と称してインタビューを試みることにしました。
「お二人は高校生ですか?」
「はい、二年生です」と、女の子が答えます。
「このお店にはよく来るのですか?」と聞きますと
「初めてです。ぼくの親友が甘党で、しょっちゅうこの店にやってきているので、話は聞いていました。機会があったら行ってみようと思っていたのですが、彼女が是非行ってみたいといってきたので」と、男の子が答えました。
「いい雰囲気でしょう」とわたくしが言いますと
「はい、落ち着いた雰囲気のいいお店ですね」と、女の子がにっこり笑って言いました。
ちょうどその時、千夜ちゃんが注文を取りに来たので、2人は私と同じものを注文しました。フフフ、2人とも趣味がいいようですね。
それから私は、2人といろんなお話をしました。
学校のこと。
進路のこと。
将来のこと。
そして……恋のこと。
「失礼ですが……お二人は付き合っているのですか?」と尋ねますと、女の子は顔を赤らめて
「ハイ」
とお返事しました。
純情ですねえ。青春していますねえ。かつて私にも、ああいう時期があったのですねえ。
それからいろいろとお話をしていると、女の子がまじまじとわたくしを見つめます。
「あのう……あなたは……作家の青山ブルーマウンテンさんですか?」

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