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監督blog 01 - キャスティングとは仮面ライダーである

Hollywood で映像監督をしている Mighty Nice です。監督Blog の記事一発目として何がいいかと考えて、映像業界以外の人も興味を持ちやすいキャスティングについて。

自分の企画や撮影コーディネーションの仕事で何度もオーディションをしてきました。ハリウッドは世界中から成功を夢見て俳優たちが集まってくるので演技のレベルは当然高い。

でも自分にとってはキャスティングの決め手は演技の上手さではない。その役者やモデル自身が持っている魅力やカリスマ性を求めます。カメラで覗いた時、画面に映った時に惹きつけられてしまう存在感。主演俳優にはそれを求めます。

演技力を基準にキャステイングをするのは脇を固める俳優さんです。アメリカでは「演技とは、アクティング(Acting) とはリアクティング(Reacting) だ」とよく言われます。極論、主演が棒演技をしても、それを受けて演技を返す脇役が上手ければシーンは成り立ちます。場合によっては主演は「感情を抑えた名演技」に見えることもあります。

仮面ライダーでは適役のショッカーのほうが実はアクションが上手いということは知られています。ライダーは普通の技を繰り出すだけでも「ライダーパンチ!」「ライダーキック!」と叫べさえすれば、ショッカー達が宙返りをしたりビルの上から飛び降りたりすることでもの凄い威力の攻撃として写ります。

しかし黒ずくめの目立たない出で立ちのショッカーに対し、どぎつい造形の仮面をかぶり真っ赤なマフラーを巻いたライダーに視聴者の目は奪われる。そこで決めポーズをされたら拍手喝采。

世界の黒澤明の映画で主演を多くつとめた三船敏郎は、どの役をやっても三船でしかなかった。


ドリフのコント「もしもシリーズ」よろしくもし「三船が侍だったら」「三船が医者だったら」「三船が刑事だったら」… の繰り返しです。だが三船敏郎が画面に登場するだけであの強烈なカリスマ性に目を奪われ釘付けになってしまう、これでいいんです。主役を張るという意味はこのことだ。

もちろん演技が全くできなくてもいいわけではないし、俳優さんが勘違いして演技の勉強をおろそかにしてひたすらカリスマ性を身につけようとしてもどうにもならないと思います。この仮面ライダー理論はキャスティングをする側の考えであって、全くの持論でしかありません。

演技巧者が集まった演技合戦の作品もあれば、カリスマ性と演技力を併せ持つ俳優もいるでしょう。逆に存在感だけでずぶの素人をキャスティングして失敗した映画も多々あります。

結論、三船敏郎が本郷猛を演じていれば最強のコンテンツになっていた!
…… いややっぱり仮面ライダーは藤岡弘だな。

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