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RB67 レビュー

先日我が家に新たに加わった、Mamiya RB67 Professional。
特に大きな問題もなく動く個体で、レンズのクリーニングやカビ取りなど、簡単なメンテナンスだけで現場復帰できる状態になりました。

早速色々使ってみてのレビューをご紹介します。

RB67が欲しくなったワケ

実は6x7の中判カメラは、既にPentax 6x7を持っています。

そして、このPentax6x7の写りや造り自体に何か不満がある、というわけではないんです。むしろすごく使いやすくて良いカメラだと思います。

ただ、僕の手元にある個体で
・1/500、1/1000秒のシャッタースピードで、5回に1回くらい未露光になる
・フィルムを新しく入れる際に、スタートマークをちゃんと合わせても、最後のコマが途中で切れてしまう
…と言った不具合がある状態で使っており、ちょっと不便だなーと感じておりました。

この辺は後々修理をしようかと思っていますが、今のところまだ予定は立っていません。

シャッタースピードについては、ISO100とかISO200とかのフィルムを使うことが多く、それに「絞って撮る」という撮り方であれば、1/500でもほとんど使うことはありませんでした。

実質1/250秒くらいで十分カバーできるくらいでしたので、現在の不具合が残る状態でも、「使い方でカバーできる」というものでした。

フィルムの巻きについては、何度か試行錯誤して「スタートマークの手前この辺で合わせれば10枚ちゃんと撮れる」というポイントも探れましたので、これもさほど大きな問題にはなってません。

それでも、RB67が欲しくなったのは、やはり
「マミヤの6x7フォーマットのカメラだから」
というポイントが一番大きいです。

はい、ただのコレクションです。

もちろん、フィルムバックを交換できるとか、蛇腹を使ってピントを合わせられるとかいろいろな特徴にも惹かれるところは大いにあります。

プロ用の機材として設計された、頑健な造りだったり、そして何より中判写真を撮る人の間でも人気機種というのもポイントでした。

我が家には6x9フォーマットのMaiya Universal Press、6x6フォーマットのMamiya C3、そして6x4.5フォーマットのMamiya m645があります。

これらのカメラを整備しながら、フと
「あと6x7フォーマットのカメラがあれば、マミヤで中判の主要フォーマット制覇できるのでは?」
と思ったのがもうトドメでした。

もう次の瞬間から、カメラのメンテをしながらヤフオクを眺める、ということを繰り返すようになってしまいました。

ファーストインプレッション

とまぁ、そんなこんながありまして無事に我が家にやってきたRB67ですが、第一印象は
「正直こんなにデカいとは思わんかった…」
というものでした。

本当に大きいんです。

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並べてみたら、Mamiya Universal Pressが可愛く見えるし、C3はすごくコンパクトな二眼レフに見えるし、m645に至ってはコンパクトカメラに見えてしまいそうなくらい。

もう並べずにはいられないくらいにデカいんです。
2021年5月現在で、間違いなく我が家で一番デカいカメラになりました。

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これは巨人です。ゴリアテです。愛称を「ゴリさん」にしてしまおうかと思うくらいデカいんです。

そして、実際に手に持った時にはもう
「重っ!?」
と声に出してしまいました。

キッチンスケールが最大で2kgまでしか測れませんでしたので、体重計で測りました。
重量3kg。ダンベルと同じ重さです。
このカメラを使うために筋トレを再開せねばならんかも、と思う重量です。

ファーストインプレッションとしては、
「黒くてデカくて重い鉄の塊」
でしたw

知人に見せたところ、第一声で
「カメラにもなる鈍器」
というパワーワードが出るくらい、デカくて重いんです。

無骨なデザイン

RB67のデザインは個人的にはどストライクで、「用の美」「質実剛健」と言った言葉で表現できるかなと思います。

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無駄な曲線であったり、見た目の美しさとかにかけるコストは省き、ひたすら「過酷な現場でもちゃんと写せるカメラ」として追求された形状、各種部品の配置からは、もう職人魂すら感じられます。

可愛らしさや華やかさとは対極にあるような、無骨で実用性を追求したデザインは、技術屋の心をくすぐるに十分過ぎるものでした。
僕自身は全くお酒を飲めませんので「これを見ながら酒が飲める」ということはありませんが、このカメラを見ながらコーヒー飲んで
「そうそう、こういうのが良いんだよ」
とまるで孤独のグルメみたいなことを頭の中で考えたりもします。

蛇腹でのピント合わせ

さて、このRB67はピント合わせの際に蛇腹を使います。
通常、一眼レフなどでは、レンズの「ピント合わせリング」を手で回して、レンズを微妙に前後に動かしてピント合わせを行いますが、RB67の場合はレンズをラック&レールで前後に動かします。
この時、レンズとカメラ本体の間を蛇腹でつないでいます。この辺の機構はMamiya C3と同じような感じです。

レンズのピント合わせリングを回してピント合わせをする、という操作自体、オートフォーカス機が主流になった現在ではやった事がないという方も多いかと思います。

RB67はフルマニュアル機、オートフォーカスという最新のテクノロジーは無いのです…

「ピントを自分で合わせる」
という操作自体、慣れない方には結構面倒くさいかもしれませんが、裏を返せば
「自分で好きなところにピントを合わせられる」
ということでもあります。

僕自身、オートフォーカスのデジタル一眼は持っていますが、時折
「そこじゃ無い、もうちょっと右の、あぁそこそこって違う違う、そこじゃ無いんだよおお!」
となってしまうことがあります。

手動でのピント合わせも、慣れればかなり便利なものです。

シャッターを押すまでの手順の多さ

さて、この手のフルマニュアルのカメラは、シャッターを押すまでの手順が結構多いです。
カメラによっては独特な「お作法」と呼ばれるものもあったりします。

RB67の場合は、
・フィルム巻き上げを確認
・シャッターチャージをする
(シャッターチャージしないとファインダーに何も映らない…)
・構図を決める
・ピントを合わせる
・シャッタースピードを決める
・絞りを調整する
・フィルムバックの遮光板を引き抜く
・シャッターボタンを押す
・フィルムを巻き上げて次のコマへ
という手順になります。

ちなみに、シャッターチャージをしてもフィルムバックの遮光板を引き抜かないとシャッターは押せません。
さらに、遮光板を入れた状態でないとフィルムバックを取り外すことが出来ないなど、この「遮光板」が結構重要なアイテムになっています。

デジタル一眼の場合などは
・カメラを構える
・ビューファインダーや液晶で構図を確認
・シャッター半押し→ピントが合う
・シャッターボタンを押す
というだけで写真が撮れます。

手数はもう倍以上、下手するとデジカメで十数枚撮る間にようやく1枚撮影する、というくらいの手順の多さになります。

これはデメリットでもありますが、同時に
「自分がどうやって写真を撮っているのか=どの操作が写真のどのような要素にどんな影響を与えるのかを考えながら撮影できる」
というメリットでもあります。

プロの写真家の方やハイアマチュアの方などは
「そんなこといちいち考えなくても出来る」
という方も多いかと思いますが、初心者にとっては結構大事なことかな、と思います。

フィルムバックが回転する!?

このポイントはRB67最大の特徴と言っていいかもしれません。
6x6フォーマットでは、真四角の写真になりますので、「縦構図」「横構図」と言った概念そのものがなくなります。
が、RB67は6x7フォーマットですので、長辺と短辺が生まれます。
そこで初めて、縦構図と横構図というものが生まれることになります。

通常、バケペンなどでは「普通にカメラを構えた状態」で撮ると横構図、つまり横長の長方形な写真が撮れます。
これを縦長の長方形写真にしたい場合には、カメラそのものを90度傾けて、縦に構えて写真を撮る必要があります。

RB67は、おそらく三脚に固定して使われることを想定しているのかと思いますが、なんと
「カメラそのものの向きを変えずに、フィルムバックだけ回転させて縦構図に出来る」
という機構が組み込まれています。

本当にフィルムバックをつかんでガッと回すだけ。
一旦取り外して着け直すというものでもなく、本当にフィルムバックをつけたままで回転させることが出来ます。

この機構のおかげでカメラを傾ける必要もなく、普通に構えた状態で縦構図と横構図を切り替えることが可能になっています。
なんでも「RB67」の「RB」は、Revolving Backの略なのだそうです。
Revolvingは「回転」という意味になりますので、「フィルムバックを回転させられるカメラ」という意味でしょうか。

一応予備知識として知った状態で購入しましたが、実際に自分の手で動かしてみて、ちょっと感動しました。

Cdsファインダーの使い方

今回購入した個体は、ウェストレベルファインダーではなく、露出計が内蔵されたCdSファインダーが着いていました。

ウェストレベルファインダーと同じく上からファインダーを覗き込む形式で、僕のRB67ではこのファインダー部分にのみ電池を使います

煙突付きの屋根がカメラについていて、煙突を上から覗き込むような感じで使うんですが、これが実に使いやすいです。
ただ、折りたたむ事ができないので運搬時にはかなり嵩張ります。

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このファインダーは電池にLR44という規格のボタン電池を2つ使います。
+側が表に来るように二つ重ねて入れて、本体のスイッチで「ON」の表示にすると、ファインダー中央に丸いマークが表示され、ファインダー左上部の針が動きます。

この針が、適正露出を示す印に重なるように、ファインダー右側面にあるダイヤルを回して調整。
ちょうど針と印が重なったポイントで、ダイヤルの数値を確認します。

ダイヤルにはシャッタースピードと絞りの値が2段に分かれて書かれていますので、二つの数値が重なったポイントが適正露出、という見方になります
このダイヤルの数値を参考に、レンズシャッターの絞りやシャッタースピードを合わせて撮影します。

使い方を動画にまとめてみましたので、ご紹介します。
※字幕で色々解説していますので、字幕が見られる設定で見て頂けるとわかりやすいかと思います。

撮影する対象によってはうまく露出を図れないかもしれないですが、遠景を撮ったりする際には便利に使えそうです


試写

ここまでの使い方を踏まえて、実際に撮ってみた写真をいくつかご紹介します。
最初のテスト撮影にはFUJICOLORのPRO400Hというフィルムを使い、自宅ベランダの花を撮影してみました。

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色が濃く、またコントラストが強めになる物で試してみた一枚です。
自家現像したネガで、スキャンはCanoscan9000F、SilverFast 9SEの組み合わせで行ってます。

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こちらは一面に紫陽花が入るような構図。
遠近感の出方がMamiya C3と同様、結構生々しいというか描写が綺麗です。

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ピントが合ったポイントは結構シャープに写せます。
F値を下げて絞りを開けた状態で撮った一枚ですが、後ろのボケ具合も自然な感じかと思います。

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こちらは前ボケを入れてみたのと、敢えて暗めの場所でシャッタースピードを遅くしてみました。
確か1/30くらいのシャッタースピードでしたが、本体の重さと大きさのおかげか手振れの心配はあまりせずに済みそうです。

メリットとデメリット

このRB67 Professionalは、後に続くPro Sという機種と比較すると
「多重露光防止機能がない」
という点で異なってますが、その他はほぼ全く同じだそうです。

多重露光防止機能がない、ということは、「やろうと思えば簡単に多重露光もできる」という意味でもあります。
今のところあまり予定はないですが、機会があったら多重露光も挑戦してみようかと思います。

思いつくデメリットとしては、
・重い。とにかく重い。
・嵩張る。特にCdSファインダーの場合は折りたたみもできないので、カバンに入れて運ぶのが困難
・シャッターを切るまでの手順が多く、咄嗟のシャッターチャンスに弱い

というところかと思います。

そして、このRB67を使う上で非常に大きなメリットは
・構図の切り替えによる負荷がほぼゼロ
・6x7フォーマットで、35mmフィルムの約4.5倍の面積を使った緻密な描写を楽しめる
・蛇腹機構でレンズの前後移動距離が長く、中間リングを使わなくてもかなりの接写が可能
・重い分、手ブレしにくい。手持ちで1/15秒のシャッタースピードでもほとんどブレない
・カメラそのものが人目を引きやすい
・ファインダーのオプションが豊富
・フィルムバック方式で、ロール途中でフィルムを切り替える事ができる
・6x7の他に6x4.5のフォーマットで撮れるフィルムバックも選択肢に入れられる
・電池が要らない

などなど、数え上げれば結構いろいろなものがあります。

フォトウォークの際など、
「手で持ち歩いて、とっさのタイミングでシャッターを切る」
という使い方よりは、
「三脚に据えてじっくりと撮る」
という方が、このカメラの実力を存分に発揮できるかと思います。

もちろん、フォトウォークでも使えます。
実際に使ってみましたが、フィルム3本ほど撮った段階で、「シャッターチャージ→ピント調整→露出調整→遮光板引き抜き→シャッター」の一連の作業を10秒くらいで出来るようになりました。
シャッターの後は、フィルムの巻き上げを忘れないように心がける程度で、実質Mamiya C3やm645で撮るときとあまり変わらない感覚です。

速く動くものなどは苦手かもしれませんが、風景、建築物、植物やあまり動かない動物、物撮りなど、活躍の場は多そうです。


実際使ってみてのまとめ

メンテナンスしたのち、フィルム数本撮影してみましたが、結論から言うと
「オートフォーカス、自動露出に慣れた人にはちょっと扱いづらいかもしれないが、撮影プロセスを楽しめる人にとっては極めて面白いカメラ」
「とにかく重くて嵩張るが、頑張って運ぶだけの価値がある写真が撮れる」

という2点に集約されます。

6x7というフォーマットのおかげで、フィルム1ロールあたりの撮影枚数が10枚なのも、区切りがちょうど良い感じになってます。
加えてフィルムバックがロールの途中でも交換可能ということもあり、
「あぁこの光景はモノクロでもカラーでも両方撮りたい」
と思ったら、その通りに撮ることも可能です。

そして大きな特徴、「カメラの向きを変えずに縦構図と横構図を切り替えられる」という仕組みのおかげで、
「ここは縦と横両方で撮りたいな」
と思ったら、カメラ本体を傾けたりせずにそのままのアングルで撮影できます。

まださほど使い込んだ訳でもありませんが、このカメラは徹底的に
「撮る人が撮りたいように撮れるように、工夫に工夫を重ねたカメラ」
なのかなーと感じました。

歯車、バネ、てこの原理などの『メカニズム』だけで動く機械ではありますが、ちゃんと使えば写真初心者でもかなり綺麗な写真を撮れる、秀逸なカメラだと思います。

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