オリンピック報道に思うこと
ついにパリオリンピックが始まりました。
が前回の東京大会もそうでしたが、僕はオリンピック中継やメディアの報道がどうしても好きになれません。
違和感を覚え始めたのは十数年前。冬季オリンピックかなにかだったと思います。オリンピックの特集番組で、MCのアナウンサーが言った一言がきっかけでした。
「メダルラッシュ、期待したいですね!」
期待したいですね、という妙な言葉を、日本語のプロであるアナウンサーが使うのか?
というところに違和感を持ったのかな、とも思ったんですが、後日振り返ってはっきり理解しました。
「メディアの人々は、オリンピックのメダルを簡単に取れる懸賞みたいなモンと勘違いしとるんじゃないか? 自国代表の選手だけじゃない、他国の参加アスリートのことを心底バカにしとるんじゃないか?」
という違和感でした。
そして、昨日たまたまTVのチャンネルを色々切り替えていた最中に、阿部詩選手2回戦の試合が映し出されました。
ウズベキスタンの選手の見事な一本勝ち。阿部選手は攻めてはいたものの、なかなか相手選手を追い込みきれずに惜しくも敗れる結果となりました。
その直後のTV画面に映し出された言葉に、またしても強烈な違和感。
「阿部詩選手、まさかの二回戦敗退」
いや、ちょっと待て。
「まさか」とは何だ「まさか」とは。
相手選手に対してあまりにも礼を失した言葉で、「阿部選手が勝って当たり前の試合」とでも言わんばかり。
武道の試合において「まさか」の負けなどあろうはずがなく、相手に対して極めて無礼、間違っても使ってはならない言葉だと思います。
そもそも相手のウズベキスタンの選手は世界ランク1位、阿部選手と比較しても格上の相手で、しかも結果的に金メダルを取りました。
阿部選手との試合においても、序盤は攻め込まれながらもちゃんと要所要所で躱し、終盤の一瞬の隙を逃がすことなくきっちり仕留めた、パワー、スピード、テクニックすべて揃った素晴らしい選手だと感じました。
単純に、阿部選手よりも、ウズベキスタン代表の選手の方が柔道の選手として優れていたんです。
その選手に敗れたのを、言うに事欠いて「まさか」とは如何なる了見か。
せめて両選手に対しカケラほどでも敬意を持てるなら
「阿部詩選手、健闘するも世界ランク1位のウズベキスタン代表に惜敗」
くらいの表現は出来るでしょうに、それを敢えてしなかった。
メディアというものが、いかにアスリートやオリンピックのメダルというものを軽視しているかが、この上なくよく分かるものでした。
オリンピックは、参加国をそれぞれ代表するトップの選手たちが競うスポーツの祭典です。
容易な相手などどこを探しても一人としていないはず。
幸いにして勝つ事もあれば、力及ばず敗れることだって当然あります。
日本選手は勝って当たり前
出場したからにはメダルは当然、金メダルを持ち帰るのが義務
そんな思想がありありと見て取れるTVを見てい抱く感想は、日本代表の選手だけでなく、参加している各国のアスリートに対しても気の毒で申し訳ない気持ちだけです。
楽に取れるメダル、確実に取れるメダルなんてものはこの世に存在しないんです。
それをあたかも「日本のお家芸」だの何だのと勝手な印象で煽るだけ煽っておいて、敗れたら「まさか」「メダルならず」という見出しと共に選手の顔を大写しで映し出す。
オリンピックが平和の祭典であるならば、メディアが何故、勝った選手を称賛しないのか、どうして敗れた選手を労わないのかが理解できません。
自国贔屓になるのは理解できますが、それは他の参加国の選手を貶めたり、礼を失した報道をしていいという免罪符にはなりません。
こんなメディアの姿勢が続く間は、僕はオリンピックの中継を見ることは無いでしょう。
今回のパリ五輪も、心の中で日本代表や参加各国のアスリートたちを応援するだけに止めようと思います。
一番マシなNHKは、タイミングが合えば少し見るくらいはするかもしれませんが、間違っても民放でのオリンピックは見ることはありません。
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