二眼レフの魅力を語りたい
フィルムカメラの中でも、ちょっと異彩を放つ風貌の二眼レフカメラ。
その特徴はもう名前の通り、
・二眼→レンズが二つある
・レフ→レフレックス(鏡で像を反射させる)
というポイントです。
最初に結論から書いちゃいますが、
「インテリアに良し、フィルムを入れて撮って良し、という『お洒落で高性能なカメラ』なので、もし見かけたら是非手にとって欲しい超絶良物」
というのが、僕の二眼レフに対する感想です。
魅力の尽きないカメラですが、その魅力のごくごく一部をご紹介したいと思います。
二つのレンズ
一般的に二眼レフは、
「レンズが縦に二つ並んでるカメラ」
で、上側がビューレンズ、下側がテイクレンズというように役割が分かれてます。
上に位置するビューレンズは、レンズ奥にあるミラーで像を上向きに反射させて、
このようにファインダーに像を投影するためのレンズです。
下の方にあるテイクレンズは、その名の通り「フィルムに光を届けるためのレンズ」となります。
通常、ビューレンズには絞りの機構は備わっておらず、常に開放の一番明るい状態で見ることになります。
テイクレンズ側には絞り機構とシャッター機構が組み込まれており、撮影の際は下側のテイクレンズ側でシャッターが動くという仕組みです。
レンズシャッターでの撮影
一般的に、二眼レフカメラは「レンズシャッター」と呼ばれる機構のシャッターを使用しています。
多くの一眼レフカメラなどは、カメラ本体の、フィルムや撮影素子のすぐ間近でシャッター幕が高速で動く「フォーカルプレーンシャッター」などが用いられています。
ミラーレスカメラの場合などは、電子的に撮影素子を制御してシャッターを切るのと同様の機能を実現しているようです。
レンズシャッターは、その名前の通り「レンズ部分にシャッター機構が備えられている」という特徴があり、またその多くがバネ・歯車・テコの原理で動く機械式シャッターです。
パーツも細かく精巧に作られていますが、非常にプリミティブな構造で故障にも強く、不調を起こしても修理しやすいという特徴があります。
電気を一切使わない構造ですので、ある意味ブラックボックス化されたICなどの不調に起因するトラブルがなく、
「どこがどのように動いてどうなるか」
といった情報が全て目視で確認できる、というのは非常に素晴らしいと個人的に強く思います。
また、レンズシャッターの場合はフラッシュを使う場合に「全速同調」が可能です。
一眼レフなどでは「フラッシュを使う場合は同調出来るシャッタースピードは1/125秒」といった具合で制限がかかってしまいますが、レンズシャッターの場合には、フォーカルプレーンシャッターのように「前膜と後膜の動きに起因するズレ」(と表現して良いかは定かではないですが…)が生じません。
実際二眼レフでフラッシュを使った撮影の頻度が高いかというと、個人的にはほとんどありませんので、その恩恵を実感できた機会はあまりありませんでしたが、屋内での撮影が多いという方には結構なメリットなのでは、と思います。
ウェストレベルファインダー
通常、一眼レフのカメラはファインダーを覗き込む向きと、レンズの向きが同じです。
顔の前にカメラを構えて、レンズを被写体に向けて撮影します。
ちょうど顔とレンズが両方被写体を向いている、という具合です。
が、二眼レフの場合、その殆どがウェストレベルファインダーを採用しています。
名前の通り「腰のあたり(実際には胸のあたり)で構えるファインダー」で、ファインダー内を見るときには、上から覗き込むような姿勢になります。
ファインダー自体がほぼ6cm x 6cmの大きさになりますので、「ファインダーで見た大きさで、像がフィルムに記録させる」というサイズ感になります。
ファインダーにはルーペが備えられており、拡大して細部を見ながらピントの微調整ができます。
ウェストレベルファインダーの特徴として、ポートレートを撮る際などに、モデルさんがプレッシャーを感じにくいため自然な表情で取りやすい、というものがあるそうです。
これまでポートレート撮影をしたことはありませんが、撮られる側からすれば、カメラマンとレンズの両方が自分の方を向いていると、「見られている」感が強くなるかもしれません。
ちなみに、二眼レフカメラの中には、ファインダーを変更するオプションが用意されている機種があります。
マミヤのCシリーズで、カメラ本体上部に付いている台形のパーツがアイレベルファインダーのオプションです。
このオプションをつけると、「上から覗き込む」ウェストレベルファインダーから、カメラと同じ方向を見るファインダーへ変更できます。
ウェストレベルファインダーの弱点として、「目線と同じくらいの高さにあるものを、水平に近いアングルで撮る」というのがちょっと苦手ですが、アイレベルファインダーにすると、この苦手なポイントも解消できます。
フルマニュアル操作
オートフォーカス機能を備えた二眼レフ、というのは恐らく無いんじゃないかと思いますが、二眼レフは基本マニュアルフォーカスです。
また、露出(シャッタースピードやF値)の設定も手動なので、スマホのカメラのように
「咄嗟のシャッターチャンスに素早くカメラを構えて撮る」
という撮り方は苦手です。
ただ、割りとじっくり設定を確認しつつ撮る、という撮り方が得意で、ちゃんと撮れば、デジカメでは比較にすらならないほどきれいな写真が撮れます。
露出の設定、シャッタースピードとF値はいずれもレンズシャッター側で設定します。
カメラの機種によって設定できる幅は異なりますが、我が家で使っている機種では、最速シャッタースピードが1/500秒、F値は3.5あたりが開放になっているものが多いです。
Mamiya Cシリーズの特徴
さて、我が家で愛用している二眼レフは、Mamiya C3とMamiya C33の2機種、それに加えて祖父の遺品であるRICOHFLEX VIという機種です。
RICOHFLEX
RICOHFLEXはかなりシンプルなカメラで、シャッタースピードは最速1/100と結構制限が厳しい機種です。
が、絞って撮る事が多いので、ピントさえきっちり合わせればかなりシャープな写真が撮れます。
一般的な二眼レフカメラとしては、MamiyaのカメラよりもこのRICOHのカメラが近いかもしれません。
今は知人に譲り手元にはありませんが、RICOHFLEX DIA Lという機種もあります。
こちらは露出計が内蔵されていたりと結構な高機能な機種になっています。
こちらの機種はピント合わせの機構が独特で、使っていてなかなかおもしろい機種でした。
二眼レフカメラのデファクトスタンダード的なRolleiFLEXなどを強く意識した造りなようで、Mamiyaのカメラと比較してだいぶ直感的で使いやすい機種だと思います。
というよりも、Mamiyaのカメラには
・レンズ交換が可能
・蛇腹を使ったフォーカス調整幅の広さ
という珍しい特徴がありますので、一般的な二眼レフとだいぶ違っていると言えます。
Mamiya Cシリーズ
そんなMamiyaの二眼レフカメラ、Cシリーズは、最大の特徴とも言える
「レンズ交換可」
というポイント。この写真のように、レンズだけを取り外すことが出来ます。
レンズは55mm、65mm、80mm、105mm、135mm、180mm、250mmとバリエーションが豊富です。
最も広角となる55mmは、35mm換算で30mmと広角寄り。
250mmは137mm相当と中望遠相当のレンズになります。
残念ながら我が家に55、80、250mmのレンズが無いので試していませんが、最も出番が多いのは57mm相当となる105mmと、75mm相当となる135mmのレンズです。
また、蛇腹についても最大で伸ばすと
こんな具合でかなり伸ばせます。
レンズがかなり前にせり出しますので、RICOHFLEXシリーズなどと比べると被写体にかなり近寄って撮影が出来ます。
マクロ撮影とまでは行かないまでも、広角寄りの65mmレンズであれば被写体まで50cm程度まで近寄ることが出来ます。
この近接性能は、他の二眼レフの追随を許さないもので、花などの撮影ではかなり重宝します。
二眼レフの魅力
二眼レフカメラは、最新のデジカメと比較すると、機能面性能面いずれでも劣ります。(高解像度の写真を撮るという1点においては、デジカメを遥かに凌駕しますが)
では、二眼レフカメラを今使うに足る魅力は何か、と問われると
・クラシカルな外観
・全てを自分の手で設定して撮る事で得られる充実感
・ファインダーの広さ+明るさ
・6x6フォーマットの、いわゆる「ましかく写真」が撮れる
といったポイントに加えて、
「スキャン精度によってはフルサイズデジカメなど比較にならないくらい、恐ろしく高解像度な画像を得られる」
という点があります。
フィルムさえ入れ替えれば、カラーもモノクロも撮影できますひ、フィルムの違いによる絵の違いも楽しめます。
現在フィルム価格は高騰していますが、ILFORDのFP4PlusやHP5Plusなどは、コダックなどが値上げする中、旧来の価格を維持しています。
また、フィルム自体もヨドバシ.comで購入出来ますし、現像サービスも郵送現像やカメラのキタムラ、パレットプラザなどで利用できます。
一時期高騰していたフィルムカメラ本体の価格も、今はだいぶ落ち着いている(というか下落してきているようです)状況です。
「フィルムカメラに興味があったけど、ちょっとどうやって撮るか分かんないし…」
とちょっと躊躇っておられる方にも、少しばかりお勧めしやすくなってきたかなと思います。
また、RICOHFLEXは割りと大衆向けの価格帯で出されたものもありますので、ひょっとしたら
「そういえばお祖父ちゃんが持っていたような…」
という具合で、ご実家の押入れの奥などにしまい込まれているかもしれません。
眺めてよし、使っても楽しいカメラですので、もし見かけられた際は、ぜひ手にとって欲しいと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?