「おとなになるって、こころに後悔を持っているってことじゃないかな。」歌詞解説2

【祝】KYMNのシングル＆アルバム「Tokyo, NY, Jazz and Pop」発売！

KYMN - Tokyo, NY, Jazz and Pop - EP

発売を記念して、歌詞の解説をします！本日は「Do I? (The Apple Tree) 私は …(あのりんごの樹）」というシングルについて。

おとなになるって「後悔がある」こと

おとなになるって、どういうことなのか。私はいつからか、心の中に秘めた後悔がある人がおとななのでは、と思うようになりました。

住む場所や仕事が変わって二度と会えない人が出来たり、天国へ行ってしまう方がいたり、そうすると、あの時もっとこうしていれば良かったとか、これを伝えれば良かったとか、後悔や悲しみが胸に残ります。

でもおとなになると、それを口に出さなくなります。

言うともっと悲しくなるから黙ったり、言ってもしょうがないと諦めたり。でも心のなかに小さな痛みの種は残っていて、それを抱えながらずっと歩いていくわけなんですよね。

私はある時、こういう「おとなが誰にも言わない、言えない、そういう痛みこそ、歌が癒やしたら良いのじゃないかな」と考えるようになりました。それを経て出来たのが、このDo I? (The Apple Tree）です。

ふるさとに自分が所属していない何とも言えない寂しさ

この曲の主人公は、久しぶりに故郷に帰ります。そうすると、大切なりんごの樹がもう無くなっています。りんごの樹がなくなっているのを見て、たくさんの思い出や後悔がとめどなく溢れ出てきて…というのがこの歌のストーリーです。

私はふるさとの茨城を離れてまず東京に行き、その後NYに来てしまいました。そうすると、こういうことがたくさんあるんです。

思い出の場所だと思っていた場所に再度行くと、自分の思い出の景色がもうない…心の拠り所が消えている…そうすると、自分の中にある大事な大事な思い出の色が一気に褪せて、消えてしまうような焦りの感情が生じます。その時の切なさや寂しさは、なんとも言葉で言えないものです。

生きている間にたくさんの愛を伝えよう

この曲には、私と友人が実際に体験した「伝えたかったことを伝えられないうちに、相手がいなくなってしまった」という体験も、編み込んでいます。歌詞の中の彼女が生きていて会えないだけなのか、亡くなってしまったのかは、敢えて分からないように歌を作りました。

私は311東日本大震災を経験して、その翌年にNYに渡ってきたのですが、311の体験はずっしりとまだ全身に残っていて、私が人生を見るときの目線・態度が、あの一日によってすっかり変わってしまいました。

あの日受け取ったメッセージの中で最も大切だと思っているのは、生きている間に、できるだけたくさんの愛を伝えよう、ということです。愛はジェスチャーでも伝わるし、言葉でも伝わるし、もっと密やかな間接的な伝え方もあるし、何でも良いのだけど、とにかく愛をなるべくたくさん伝えたいと思いました。

私にとってはこうやって、悲しみとか切なさを曲にすることも、愛情表現の一つです。「私の心の中にある痛みを分かってくれているのかな」と聴きての方が感じてくださったら、とても嬉しく思います。

以下は私が自分で歌詞を日本語訳したものです。味わってみていただけたら光栄です。

私は … （あのりんごの樹）
歌詞・作曲　宮嶋みぎわ（日本語訳詞）

私はまだこの場所にいて良いんだろうか？
犯した過ちを洗い流せるだけ
私は泣いたんだろうか
ああ、故郷よ、また来たよ

大好きなリンゴの木はもうない 
あの日、小さな枝にリボンをつけたんだ 
それは私から彼女への、彼女が特別な存在であるという秘密のメッセージだった...

やわらかな風が頬をつたうとき、いつも思う、それは彼女がやっと送ってくれた答えなのだろうかと。
君が幸せでありますように。

ああ、故郷よ - ここにいてもいいのですか？

私はまだこの場所に属しているのだろうか？
たくさんの失敗の言い訳を探すために歩き回るべきなのか 
ああ、故郷よ、私だとわかりますか？

大好きなリンゴの木はもうない
窪みに隠れているあの男の子は私？
抱きしめて、あなたは特別な子だよと言いたいから、近くに行っていいでしょうか

やわらかな風が頬をつたうとき、いつも思う、それは彼女がやっと送ってくれた答えなのだろうかと。
君が幸せでありますように。

ああ、故郷よ - あなたのことを話す資格すらない気がするのです ... 

やわらかな風が頬をつたうとき、いつも思う、それは彼女がやっと送ってくれた答えなのだろうかと。

許してくれたらいいんだ 
それとも......私のことを忘れて....
いや、どうなんだろう、どうなんだろう
私は何を願っているのか 

君が幸せであるように
そして
あのりんごの木を覚えていてくれることを
きっと私は願っているのです