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「本当の私を見てほしい。あなたが見ているのは私ではない、という感情。」歌詞解説4

【祝】KYMNのシングル&アルバム「Tokyo, NY, Jazz and Pop」発売!


発売を記念して、歌詞の解説をしていきます!本日は「Come Over」というシングルについて。

本当の自分を見てもらえていない、という寂しさ


私は、私のグラミー賞ノミネートのことを、適当にあしらってくれる方が好きで。だってグラミー賞のノミネート回数=私ではないから。

グラミー賞は華やかで楽しい賞だけれど(全ての賞がそうであるように)様々な問題を内包しているし、グラミー賞ノミネートは過去のことで、今の私ではないし。ノミネートの前も後も、私は同じ人間で、同じように努力して音楽を日々作っているわけだし、何なら賞の瞬間よりも今のほうが良い音楽家だと思っている。

だからグラミー賞というレンズ越しに私を見られてしまうと「That is not me=それは私ではない」と言いたくなってしまう。

これと同じようなことは、日々、たくさんたくさん起こる。何が辛いって「過去の私」を見られている、という点だ。過去の私は今の私じゃない。

過去と現在は、強く太く繋がっていることもあれば、驚くべき飛躍をして全く違う自分になっていることもあるはずで、跳躍して、別の自分に生まれ変わったようなときにも過去の私をずるずると引っ張り出されて「これがあなただよね?」とやられると「いえ、違います」と拒絶したくなるし、とても寂しくなる。

自分は「今の相手」をきちんと見ていると言えるのか

じゃあ自分はどうなの?と言われると言葉に詰まってしまう。多分私も過去の情報を大いに現在に当てはめているから。特に嫌なことがあった時などは。

過去にこういう喧嘩をした相手だから、きっとこう言うだろう。
昔ああいうところが嫌いだったな、きっと今も変わっていないだろう。

そんな「当てはめ」を気づかないうちに、たくさんしていないだろうか。そういう時、相手はどんな気持ちなんだろう?

自分に対してだってそうだ。

前回出来なかったからまた出来ないだろう。
いつもどうせ失敗するんだから、また失敗だろう。

そういう言葉ばかり、自分に掛けてしまう。

相手を受け入れるって難しいし、自分を受け入れるのも難しくて、そういう時に「受け入れる」のを邪魔しているのは、だいたい「恐怖」だ。

恐怖を乗り越えることができたら、人生ってどんなに楽だろうか


恐怖感が私の中に太い線を引いていて、自分を守ろうとしていて、私は怖がって、その太い線の中だけにいるようだ…その心の線が乗り越えられないせいで、さまざまな間違いをおかしているのではないか?と気づいた時、私はこの曲 Come Overを書きたくなった。

ずっとずっと昔にとった行動の残響のような、鏡に映った反射のようなものをいつまでも眺めて「それがその人だ」と思っていたり
自分で勝手に期待を持って、その期待をいい加減相手が嫌になるほど投げ込んで、その投げこみまくった期待の山を通してだけ、相手を見ていたり

恐怖を越えて、そういう間違いを越えて、ほんとうの自分とほんとうの相手を見なければ、いい人生なんて送れない気がする、と、そう思った。

この曲の歌詞は長くはないのだけれど、この短い歌詞だけで全部言い終える事ができたと感じたので、これ以上長くする必要がなかったのだ。

最後の「人生は夢に過ぎない」は英語でよく使うフレーズで、Life is But a Dreamという。儚い夢に過ぎないとか、短く終わってしまう、という意味だ。

311を経験したときに思ったけれど、人生はほんとうに、いつ終わってしまうか分からない。怖がって線の内側にばっかりいて、今日人生が急に終わってしまったらどうするんだろう?

そういう台詞も、言葉で言うと、とても強くなってしまうのだけれど、歌に込めると芸術的に心の奥底に伝わる伝え方で、発信することができる。それが歌の素晴らしいところ。音楽の素晴らしいところ。

この曲は歌詞と曲調が芸術的にピッタリと合っているので、是非楽曲を聴きつつ歌詞を眺めていただけたら。

Come Over 
作詞作曲 宮嶋みぎわ

(日本語訳)

それは私ではないのです
それは私が千年前にとった行動の反映に過ぎません
私はそこにいない
私はそこにいないのです
だから、私に会いたければ、あなたの中の一線を越えて来なさい
あなたの中にある線を越えて来なさい
来て。ここへ来るのです

それは私ではないのです
それは千年前に彼らが私に与えた幾つもの期待の交差点に過ぎません
だからそこに行かないで。行かないで
私に触れたいなら、あなたの中の一線を越えて来なさい
あなたの中にある線を越えて来なさい
来て。ここへ来るのです

人生は夢に過ぎない
なのに何を待っているの?
もう赦して、新しい章に進もう
そうすれば感じるはず、感じるはず、感じるはず、感じるはず
だから越えてくるのです

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