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ヒプマイと私と、それからラップ



 気付けば、ヒプノシスマイクにハマってから一年が過ぎていた。これは私の、ヒプマイにハマるまでの過程とハマってからの備忘録である。


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 始まりは2019年10月───。
 友達と仕事終わりにビールをがっぷり飲んだ後、オールでカラオケをしていたときの事だった。友達が不意に入れ歌い始めた曲、それが

『ヒプノシスマイク -Division Battle Anthem-』

(一番一郎一期一会~から始まるやつ。長いので以下“一期一会”とする)


だった。この曲と、もう一つ有名な曲『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』(♪1,2,3 ○○ディビ~ジョンのやつ。以下“選手宣誓”とする)は、JOYSOUNDで歌うと後ろに公式MVが流れる。
 しかしこの時は女3人、酔っ払ってよくわからないカラオケのよくわからない機種で部屋に入ったため、そんなものは後ろには流れていなかった。
 
 それなのに。それなのにだ。



 私は心の底から「カッコイイ・・・!」と思ってしまったのだ。


 そう、私のヒプマイの入り口はイケメンキャラでもなく、好きな声優さんでもなく、リリック(ラップの歌詞)のカッコよさだったのだ。特に印象に残っているのは一二三のリリック。

「君がくれた愛のカタチ
 123(ひふみ)456(ジゴロ)000円monthly」

 どこかで聞いた話によると、枕無しの1200万プレーヤーはすごいらしい…そりゃ新宿のど真ん中のあんなでけえマンション住めますわな……


 もともとヒプマイのことは「木村昂が主人公で、大勢でラップをやっているプロジェクト」という印象で、ふんわりとだけ知っていた。やれ声優のプロジェクトなのに舞台化は違うんじゃないかだの、やれ音楽原作がどうだのと、炎上するたびに存在がチラついてはいた。
 そしてラップのことは即興で韻を踏んで相手をdisる、というフリースタイルと、R-指定(フリースタイルのMCバトルで三連覇している、恐らく日本一有名なラッパー)の存在だけは知っていたので、自分にはできないな~すごいな~くらいには思っていた。
 
 もっとヒプマイのことが知りたい…そう思った私がまず始めたことは、YouTubeで音楽を聴き漁ることだった。YouTubeには公式チャンネルがあり、曲によってはフルがアップされている。なんてありがたいのだ。
 カラオケで衝撃を受けた一期一会を改めて聴いて納得する。なるほど、全員で歌っているこの曲は自己紹介をしていたのか。全員曲は当時この他に3つあり、次に聴いた選手宣誓を観てディビジョンというラップのチーム的概念を知る。

 しかも聴いたのは+verで、それは既存の4ディビジョンの他に新ディビジョンのナゴヤとオオサカが加えられアップデートされたものだったのだ。ナゴヤとオオサカはその2ヶ月前に発表されたばかりのできたてほやほやディビジョンで、当時はまだソロ曲どころかチーム曲でさえも出ていなかった。ここではフーンくらいにしか思っていなかったナゴヤディビジョンに、のちに心を掻き乱されることはこの時の私はまだ知らない……。
 
 一期一会は曲に勢いがあり、ブクロの一郎、ハマの左馬刻、シブヤの乱数、シンジュクの寂雷先生とそれぞれのディビジョンの1番手4人→2番手4人→3番手4人と歌うのに対し、選手宣誓は比較的落ち着いた曲調でディビジョンごとに丁寧に歌ってくれる。
 一期一会がそれぞれの自己紹介ソングとするならば、選手宣誓はディビジョン紹介ソングだ。おまけに各キャラの職業もMVで知ることができ、とてもわかりやすいので初心者には選手宣誓の方がおすすめかもしれない。
 
 この時点で私がリリックの次にシビれたのがMVの「映像技術」だった。原作イラストの少なさはMVから見てなんとなくわかっていたが、各キャラ2〜3枚しか素材がないのにどうしてこんなにかっこいいんだろう。他にも、モノクロの声優さんのレコーディング映像を使ったり、ラップに合わせて画面いっぱいに明朝体のリリックを映し出すなど、ヒプマイはとにかく分かりやすい。MVを一本見るだけで、どんなキャラがいてどんな声優さんでどんな歌詞か、そして18人のキャラクター性を深く理解することができるのだ。シンプルにすごい。
 ラップの基本は自己紹介と相手へのdisり。それを上手く応用しているところにもあとから気づいて、改めて感動してしまった。


 
 各ディビジョン曲やソロ曲を聴き漁り、キャラクターを理解し始めた私がまず目をつけたのは観音坂独歩だった。なんでみんなカッコいい職業就いてるのにこの人だけただのリーマンなんだろう…なんか叫んでるし…

 と思っていたが矢先、聴いてしまったのだ

『BATTLE BATTLE BATTLE』

『DEATH RESPECT』を。

 前者はシブヤvsシンジュク、後者はヨコハマvsシンジュクのラップバトル曲である。この2曲、好きすぎて両方歌詞を見なくても歌えるようになってしまった。LIVEでもめちゃくちゃアガる。
 何がいいって、バトル時の独歩のリリックがバチバチにかっけぇ。伊東健人の声質とラップもシビれる。そして観音坂独歩が推しキャラであることに気づいてしまった時にはもう、観音坂独歩を推していた…
 ちなみに独歩の特に好きなパンチラインは

「権力の傘の中のバランサー?
 玉乗りピエロにゃ解らんさ」

 でも一二三の

「時代錯誤 そんな格好 何が夢野幻太郎
 いくら書いても売れない本と増えるだけのペンダコ

も負けないくらい好き。ペンダコで韻を踏まれるげんたろ…
 ラップバトル曲は今のところ『WAR WAR WAR』(イケブクロvsヨコハマ)も含めたこの3曲しかない。もっと聴きたい。悲しい。
 
 独歩推しになったきっかけはシンジュク麻天狼の魅力にもあり、この3人の関係性にも強く心を打たれた。公式が、寂雷先生が鳥居で一二三と独歩は狛犬と表現していたが本当にその通りだと思う。イケブクロのように1人を2人が崇拝しているというわけではなく、1人を背に2人が構えているという構図があまりにも尊すぎる。だから、『DEATH RESPECT』で、Cメロで銃兎と理鶯はそれぞれ歌っていたのに対して一二三と独歩は

「両サイドに破天荒な暴れん坊
 天まで伸びる俺らが麻天狼!」

と一緒に歌っている。パンチラインも最高だし、何よりユニゾン(?)がエモすぎる。この一文だけでシンジュクディビジョン・麻天狼の関係性が現れていてほ〜んとすこ。
 


 ラップスキル、と一言で言っても素人同然の私には誰が上手かそうでないかなんてわからないし、そんな偉そうなことは言えない。しかしその点において木村昂の次に飛びぬけた人物が一人いた。

 それが「野津山 幸宏」(のづくん)だった…。

 シブヤのギャンブラー、有栖川帝統(ダイス)を演じる彼はもうとにかくバチボコにラップがうまい。なのにヒプマイがデビュー作。そしてラップはまさかの未経験。生まれ持った才能とはこういうことなのかと思う。
 でもどこかのインタビューで読んだ、「台本の中で帝銃が『オロローン!』と言うセリフで他の人はみんな泣き真似をしていたのに、のづくんだけそのまま『オロローン!』と読み上げた」というエピソードが何よりも好きすぎる。私はオーディションの合格はここにあると思ってる。いやそうだろう。絶対そう。
 そんなこんなで、帝銃のソロ曲を鬼リピし、気づけば帝銃というキャラがとても好きになってしまっていた。独歩がラップとリリックから好きになったのに対し、帝銃は中の人から好きになったのだった。

 このあたりでたしかヒプマイにハマって2ヶ月ほどで、私はこの興奮を伝えるため布教用の非公式ガイドブックを作った。

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今考えると信じられない熱量だが、本当なのである。途中でオオサカとナゴヤの曲が発表されページを足したりするのが大変だった。ちょうど公式が供給過多な時期だった。
 3rdのライブDVDを購入した私は、あの時の友だち2人を招集し、ラブホ女子会と称し夜通しDVD鑑賞会をした。その時に友だちが見せてくれた、あんステのお師さんもとってもよかった。いい年末だった。


 ラップについてのイロハはヒプマイ以外でも学ぶことができた。存在が大きかったのは、お嬢様JK×ラップバトル漫画の「Change!」

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 これ全部読んで本当に面白かったのになぜか連載を打ち切られてしまったそうで、作者の方が多くの人に読んでほしい、と無料公開していたのだった。あらすじはざっくり言うと、ラップとは無縁のお嬢様学校に通う主人公の女子高生が、ひょんなことからラップに出会い成長していく───そんなお話。面白いと思ったのは、主人公が和歌の名家生まれで、和歌とラップの共通点に気づいてそれを上手く融合させていくところ。和歌の歌合で、初対面同士が言葉遊びをしながら恋愛のフレーズをぶつけ合う…それってラップでは??これすごいよね???しかもこの漫画、押韻や8小節2ターンのラップの基本だけでなく、実在するラッパーや曲もゴロゴロ出てくる。「サンプリング」っていう過去の楽曲を引用する手法とかエモカッコいいのほんとに、、上手く説明できないけど、、
 毎週録画していたアメトーークでその時たまたま「ラップ大好き芸人」をやっていたのもタイムリーすぎた。スペシャルゲストがR-指定でテンション爆上がった。


 
 話は戻り、独歩同様帝銃への興味はもちろんシブヤのFlingPosse(ポッセ)へと広がる。正直、シブヤの第一印象はとても悪かった。「男の娘とはんなりイケメンとギャンブラー?なんだこれ、シブヤ推しなんているのか??」と思っていた自分を、今ではステラおばさんのクッキーで殴りたい。
 シブヤの魅力は全員が自由奔放でカラフルで可愛らしいイメージでありながら、実は唯一お互い何の接点もなく作られた中王区のためのチーム"Fling Posse(=刹那の友)"である、という設定のギャップにあると思う。私はドラパ(ドラマCD)でシブヤに落ち、『Stella』で涙を流した。

 Stellaはシブヤのディビジョン曲で、3人で歌っている2つ目の曲である。ポップでフワフワした1曲目の『Shibuya Marble Texture -PCCS-』とは違い、ゆったりとしたテンポで語られながら物語調に描かれているこの曲は、今やヒプマイ史上最もエモい、伝説の曲として崇められている。
 もう公式で発表されてるのでネタバレしてしまうと、飴村乱数はクローン人間である。代わりは何人だっている、簡単に言うと綾波レイ。中王区に作られ中王区のために動く"彼"は、スパイのフリをしながら中王区に反逆の狼煙を上げようと日々動いていた。
 ドラパの中でもキャラたちはラップをするシーンがもちろんあるんだけど、2ndのドラパの中でStellaのリリックを使って幻太郎と帝銃がボロボロに傷ついた乱数を助けるシーンがある。普段はあんなに可愛らしい乱数が、中王区に一人で立ち向かう為2人に対し「もう俺に構うな」と怒鳴った数分後に。

ドラパ
帝銃「何度だって繰り返す再生のVerse
幻太郎「友の為ならまた手を伸ばす
乱数「聞いたか?俺のこと友だってよ
   失敗作じゃないオリジナルなんだよ」
Stella
再生のVerse 流星に手を伸ばす
 始まりが連なるUniverse」

 ちなみにこの時ドラパに出てくる、乱数を消そうとする乱数のクローン×3人は全員しらいむ(乱数の中の人)の声の出し方が違くて地味にすごい。
 Stellaは物語風だしキャラの設定も違うし、一種の公式パラレル的な要素かな、、と誰もが思っていただけに突然の現代へのサンプリングに全ポ女が泣いた。たぶんポ女以外も泣いた。乱数の2ndのソロ曲、『ピンク色の愛』にも揺れ動く乱数の心情が現れていて二度泣ける。

「どんな時でも
 どんな時でも
 気づき出した 今
 必要な事以上に たいせつなもの」



 男性キャラがこんなにもいる中でも、ちゃんと女性キャラはいる。女性を中心とした社会を目指し、男性を完全に排除した区画である中王区。それを支配している言の葉党のおとめ様、イチジク様、ねむちゃんの3名である。男たちによるディビジョンラップバトルという名のテリトリー争いは、彼女らの力によって開催されており、またそれらは彼女らにとって余興に過ぎないのである…。
 そんなゴリゴリに女尊男卑しているお姉さんたちだが、中の人はなんと画伯こと小林ゆう様とチアキングことたかはし智秋様。チアキングにいたっては、中の人がモデルなんじゃないかと思うほどの谷間クオリティで毎回ライブに来て下さる。ありがたや〜 お二人はライブでは主に、CD発売中だよ!とか新ディビジョン発表するよ!みたいなお知らせ係を担当していたのだが、2020年8月ついに楽曲を発表してしまった。
それが

『Femme Fatale』

 ファムファタールは「運命の女」の他に「男を破滅させる魔性の女」という意味を持つ。そんなタイトルにぴっったりの曲がもう、すごく、めためたにファビュラスでかっこよかった。あんなに言の葉党を良く思っていなかった私がいや…中王区に引っ越そうかな…と思ってしまうほどに。
 GET WILD退勤ならぬFemme Fatale退勤すると最高にいい女になった気分で帰れるからオススメ。

 まずキャラの説明からさせてくれ。おとめ様こと東方天乙統女(CV.小林ゆう)は女性内閣総理大臣にして、シブヤの帝銃の実の母。考察班によってずっと親子説が唱えられていたが、ついに公式で発表された二人の関係。会話や絡みはないものの、母が息子にラップでアンサーをするというガチエモ案件が発生した。

帝銃「最後に笑うのは誰?」
乙統女「最後に笑うのは乙女」

 こんな感じで他2人も誰かしらにアンサーを返している。男どもを蹴散らしながら悠々と歩いているように見せて、よーくリリックを読み解いていくとバチバチに負ける気のないバトル曲のような熱さに溢れていてるのがたまらない。

 次にいちじく様こと勘解由小路無花果(CV.たかはし智秋)だが、彼女は内閣総理大臣補佐官 兼 警視庁警視総監。つまりおとめ様の部下であり、ヨコハマの警官、銃兎の上司。乱数がよく電話してるのもいちじく様。そんな彼女がアンサーを返した相手はオオサカの詐欺師、天谷奴零だった。
 ちなむと零はブクロ三兄弟の父親ながらその正体を隠し、中王区と繋がりを持っているアブナイおじさんなのだ。公式から発表される前、AMAYADO REI がアナグラムでYAMADA REIになるって気づいた考察班はやっぱりすごい。
 乱数同様、スパイ的立ち位置にいる零とは利用しあっている関係の二人だが、二人の過去に何があったかはまだ明らかになっていない。山田家の母親説もあるがいちじく様はこう見えて31歳なのでおそらく違うだろう…

天谷奴零「チキンorビーフ?」
無花果「いらないビーフ」

 そして言の葉党員3人目のねむちゃんこと碧棺合歓(CV.山本希望)は、サマトキ様こと碧棺左馬刻の実の妹。まだライブには未登場。初登場時心優しいお兄ちゃん思いのねむちゃんは、乱数のクローンによって(あくまでクローンであってシブヤの乱数本人ではない)闇落ちして再登場。
 注目すべきは中の人である山本希望さん、なんと彼女はMCネームを持つほどのラップ経験バリバリの声優さん。アイマスとかでもその腕前を披露していたそうな。もちろん、小林ゆうもチアキングも初めてと思えないほどラップ上手くてビビったけど、この曲が出る前にドラパでねむちゃんがサマトキ様とラップバトルしていたのを聞いて、女の子のラップはこんなにもカッコよくて可愛くて無敵感がすごいのかとめちゃくちゃ驚いたのを今でも覚えている。語尾を声裏返したりするテクとかも女の子ならではなのかな。なんなら下手したら中王区で一番上手いかもしれない。
 そして闇落ちし兄と決別したはずのねむちゃんもまた、兄のフロウをなぞっていてバチバチに意識しているのがなんかもう泣きそうになる、、

左馬刻「俺は左馬刻様だ 貴様は誰だ」
合歓「私が合歓 これがマスターピース」

 これだけでも頭抱えるのに、ねむちゃんを守るためだけに暴力に頼り極道の道を選んだ兄を「Ah手が出るようじゃ劣等」と disっているのも、、、

 言の葉党は最近出たFemme Fataleのドラパで過去が少し明らかになった…強い女はそれなりに過去にやっぱりいろいろあるよね〜〜…男を毛嫌いする理由がサ… あと、コメントで誰かが「ラップバトルで彼らの戦いを嗜好として搾取している私達もまた、中王区の女に過ぎないのかもしれない」と言っていて震えた。
 もう言の葉党も応援したくなってきた…言の葉党が報われる未来はあるのか……今後この先どうすれば世界平和になるのかがわからない〜〜H歴の戦争早く終わって〜〜〜

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 今回はここまで。全部まとめると15000字以上書いてたので、3つの記事に分けます。
 次回は曲について書こうと思います。

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