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【音盤レビュー】アリス=紗良・オットEchoes Of Life(デラックス・エディション)~「Additional Works」について

ジャケ写は好きなんだけどなー。

CD1は既発のオリジナルアルバム。
ショパンの前奏曲集に自作含む現代曲を挟み込む、いわば「コンセプトアルバム」的な一枚。
こっちのレビューは以前書いたから読んでね!w

今回、新しいCD2を加えた形で発売。
そちらが新録の「Additional Works」。
以下収録内容。
・J.S.バッハ:前奏曲 第1番 ハ長調 BWV 846 (グランドピアノ)
・ジョン・フィールド:前奏曲ハ短調 (グランドピアノ)
・同:ラルゴハ短調 (グランドピアノ)
・ショパン:前奏曲 第26番 変イ長調(遺作)
・同:前奏曲 第25番 嬰ハ短調 作品45
・チリー・ゴンザレス: コントルタン
・ヴァレンティン・シルヴェストロフ:前奏曲《素朴な音楽》から第6番
・同:前奏曲《遠方の音楽》から 第3番
・ジョン・フィールド:前奏曲ハ短調 (アップライト・ピアノ)
・同:ラルゴハ短調 (アップライト・ピアノ)
・J.S.バッハ:前奏曲 第1番 ハ長調 BWV 846 (アップライト・ピアノ)

ご覧の通り、11トラックだけど実質8曲……。
さすがにこの20数分だけで「新しいアルバム」として売るわけにはいかない(売れない?)だろうなぁ、てのは分かる。
でもいくらコンセプトが「Echoes of Life」を補うものとしても、既製品と「抱き合わせ」で売るこのやり方、何だかなぁ……と正直思わざる得ない。
そこは苦言としてしっかり言っておきたい。
例えば配信のみとか、やり方あったんじゃあないかな……。
まあファンだから買ったんだけど←

コンセプトとしては面白いと思う。
最初と最後に同じ曲を「円環」するようにもってきて、しかも「ハード」をグランドピアノとアップライトとで変える辺り、やや「頭で考えた」感はあるものの、最後のアップライト版が過去の「残響」みたいに聞こえてほんのり切ない。
特に最後のバッハは不思議な音が(恐らく意図的に)混入させられているのが、夢うつつ感を強く感じさせる。

演奏自体も十分に満足させてくれる。
ハッとするほど快速のバッハ。
だけど急かされるのではなく不思議な浮遊感。
そしてまさにオリジナルアルバムの「補完」となるショパンの前奏曲25・26番は、とりわけ「アリスらしさ」が出ていて好き。
演奏順を26→25にしているのも、この「Additional Works」的には頷かされる。

個人的なイチ押しはチリー・ゴンザレスの一曲。
どことなくピアソラのタンゴを思わせるような響きの中に続く、執拗なシンコペーションが癖になる。

ショパンの夜想曲に影響を与えたジョン・フィールドの2曲があるのはさもありなん。
そしてヴァレンティン・シルヴェストロフの2曲は、現代作曲家なのにまるでフィールドやショパンの延長線上にあるようなべったべたの「ロマンティック」。
多分知らない人に聴かせたら十中八九「ショパン?」って言うと思う。
もちろん私にとっても「マイ初演」(笑)。

最後にもう一度、しつこく書く。
演奏内容もコンセプトも十分満足なんだけど!
……この売り方、何とかならんかったんかなぁ(汗)。

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