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犬を飼うと最低でも一日1回は散歩に出る。だいたい同じ時間に朝の散歩に出るので、同じようなスケジュールで犬の散歩をしている人達と、自然と顔見知りになる。
カレンとアメリカンアキタのYoshi(前回登場)は最初の知り合いだが、彼ら以外にも、頻繁に会う犬+飼い主がいる。なぜだか犬の名前は知っていても、飼い主の名前は知らない人が多い。

Yoshiの天敵の黒いラブラドールのスカイラーの飼い主は、無口な中年のおじさま。スカイラーは、ミッフィには、キューンキューンと甘い声をかけて近づくのだが、大物Yoshiにはライバル意識メラメラで、唸り声をあげて威嚇する。中年おじさまは、必死でリードを引いて食い止めなければならない。

我が家の通りに住んでいるゴールデンドゥードルのチャーリーは、とてもフレンドリーで飼い主のエイミーもとても親切。怯えて散歩に出ることができなかったミッフィをずっと暖かく見守ってくれていた。会うたびに、声をかけてくれて「えらいねえーたくさん歩けるようになったねえー」とミッフィ―をほめてくれた。そのうち、私たちは会うたびに少しの間、立ち話をするようになった。

彼女の娘は、中学のころから不登校になり、自宅で特別なカリキュラムを履修して、高校を卒業し、今は明るい大学生活を送っていること。愛犬チャーリーはそんな娘さんの一番の友で、特別な関係だということ。

互いの犬が足元の草や土を匂いでいる間に、私たちは会うたびに少しづつ語り合い、不思議な信頼できる友人同士となった。




ある朝、Yoshiを散歩しているカレンと合い、いつものように一緒に歩きだすと、会話の途切れの沈黙をかばうように「私乳がんが見つかったの」と私に言った。とっさのことで、何と言っていいか分からず、彼女の目を見つめて、彼女の気持ちを探ろうとした。すると彼女はすぐに、「早い時期のようだから。。精密検査をして転移していないか調べるの。」と続けた。

私は「良かった、早い段階で。私の友人も乳がんと診断されたけど、早い治療で、完治してもう10年以上健康体だよ」と伝えた。これは気休めで言ったことではなく、本当のことだ。カレンも自分で「そうよね、検査してちゃんと治療するから大丈夫」としっかりと言った。

わざと知らないふりをして会話を聞いているかのように、秋田犬Yoshiと雑種の小型犬ミッフィ―はそれぞれ別々の方向を向いて、お行儀よくお座りをしていた。

約束して会うことはないけれど、信頼できて、お互いふと心に浮かぶことを話して立ち去る、犬を飼い始めてから新しい友人が出来ました。


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