ライターになる道はいと険し9
コピペ記事がまずいことはライターだったら周知の事実。
それでも平然とやってしまう人たちがいる。
それも自分に迷惑がかからなければ私は平気だっただろう。
コピペ記事がいかにクライアントに被害を与えるかを私は知ることになる。
それは2月ごろにクラウドワークスで受かったクライアント。
本数も多く、ライターのスキルが上がれば文字単価を上げてくれるという嬉しい条件つきの案件だった。
ジャンルも私が得意なIT系だったので執筆を楽しんだものだ。
何よりも嬉しいのはFBがほとんどないということ。
納品すると、すんなりと受け取ってもらえ、修正依頼がかかることはなかった。このときの私は知らなかった。FB無しの記事がいかにまずい状態になるかを。
ある日のこと、そのクライアントから打診があった。
「今度女性サイトを作る予定なので、そこでみっふぃーなさん記事を書いてもらえますか?」
やったー! 新しい仕事が追加されたらもっとお金が増える!
と、私は思わず皮算用をしてしまった。
これで私の収入も増えるぞ! とバラ色の未来ばかり想像。
当時の私が楽しい気分でいられたのもそれが最後になった。
待てど暮らせど女性サイトの話は出てこない。
そのクライアントからの話を期待してリソースを開けていた私は困ってしまった。
「困ったな。仕事が入ると思ったから別の会社の仕事断ってしまったんだけど……」
そこで、ディレクターに聞いてみた。
「そのうち入ると思いますよ!」
そう言われてホッとしたものの、なぜか私は不穏な空気を感じ取った。
「何かがおかしい……」
今月分の仕事が終わったのに翌月の記事の話が出てこないのだ。
おかしいと感じてはいても、何か言われたわけでもなかったので、普通に過ごしていた。しかし、数日後私は一気に地獄に落ちてしまった。
クライアントからチャットワークで聞かされた話。それは所属ライターの記事でコピペが発覚したというもの。エンドクライアントが見つけたらしいが、かなり先方はカンカンだという。
「これは盗作だ!」と怒ったらしい。
通常はライターやディレクターがコピペツールでチェックするからコピペが発覚するなんてありえない。
「ではコピペチェックをしていなかったのか?」
私の心に疑問が沸く。
数日後、クライアントから呼び出しを受けた。コピペ記事のお詫びに、記事をリライトして提出しなくてはならないらしい。なぜか、そこで私に白羽の矢が立った。私に課せられた条件は重い。
「とにかく、相手はカンカンに怒って裁判も起こしかねないから、クライアントが満足するような記事を書いてほしい」
そのとき、はじめて知ったのが、この案件は商流が深いということ。エンドクライアントの次にSEO会社があり、クライアントがそこから受注しライターに発注していたということ。それも私にはショックだった。
というわけで、必死でリライト記事を書いた。コピペライターの書いた記事は最新プログラムに関する記事。当然情報は少なく、ネットに存在するわずかな情報からコピペライターは書いたようだ。SEOの世界では、特定のサイトだけを参考に書くとコピペになりやすいといわれている。
オリジナルの記事を読んだところ、あまり文章がうまいとはいえない。いくらコピペとはいえ、文章力があるライターならうまく誤魔化すこともできただろう。ところが、そのライターは文章力がなかった。コピペの部分と自分が書いた文章が乖離しすぎていたようだ。当然不自然な文章だったので、エンドクライアントは気づいてしまった。
必死でリライト記事を書く私。ちゃんとリサーチすれば上位記事なんて参考にしなくても情報は出てくるではないか? コピペライターはろくにリサーチもせず、安直に上位をコピペしてしまったのだろう。
クライアントに記事を納品し、これでこの件は終わり! と思っていたら、そんな簡単にはいかなかった。エンドクライアントはクライアントが過去に納品した記事にも不信感を持ったようだ。全ての記事をチェックしろという厳命。しかも、そのチェック作業を私たちライターまでやらないといけなくなった。
ライターになってから、初の事務的でつまらない仕事を延々とするはめに。
「なぜコピペライターのためにこんなのやらなきゃいけないんだろう……」
逃げ出したいと思う自分がいた。しかし、その作業を完了し、エンドクライアントに報告しないと次の仕事はもらえないそうだ。しょうがなく、心を無にして作業をこなす
ようやく、すべての作業が終わった。ところが、ショックなことに次の月からクライアントはエンドクライアントから記事数を減らされることに。それだけではなく、コピペに異様に神経質になった。当然といえば当然だが、以前より工数がかかるようになった。
さらに記事数が増えても、こちらの負担になるような作業がどんどん増えた。要はSEO会社がクライアントに、これまでSEO会社がやってきた作業を負担させ納期も早めたのだ。SEO会社とクライアントとの間に上下関係ができあがってしまったのである。
「これでは、ほかの案件との調整が難しい……」
その案件をやるのが段々苦痛になってきた。月の前半はすべてその案件にかかりっきり。これでは案件を増やすこともできない。
とうとう私は、その案件から手を引いた。コピペ事件から、暗転してしまった私のライター生活。コピペライターを呪いたくなった。家でも思わず叫んでしまう。
「人の文章をコピペしないと書けないぐらい文章能力がないなら、ライターになんてなるなあ!!」
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