あの花が見る東京人間

東京からの帰り便私は無性に涙が込み上げてくる
東京は輪郭を曖昧にする乱れた欲望の街にも空虚な思いを掬い上げてくれるような稀に優しさがあり居心地が良く感じる

・・・
羽田空港からモノレールで都心へ
前車両の揺れがスローモーションに見え酔った
4人掛けを広々使っていた私
向かいに初々しくおそらくまだ付き合っていないだろうカップルが座った
私のキャリーケースが邪魔をしていたがそれにより
2人の膝が寄り添っていたから
「まあいっか」と褐色の川を眺めた

JRで仲良くなったおじ様に教えてもらった有楽町の喫茶店へ
東京へ来るたび自分のコミュ力の成長を感じる
ほぼ満席状態
「おタバコ吸わないですよ、ね、？」と店員さん
「吸います」と返すと目を丸くさせ急いで引き返し席の確認へ
ほお、私って吸わないように見えるんだ、

隣の席では銀座に染まり包まったおば様3人
（私も外見で判断してるやん）
帰り際1人が「タバコの銘柄なんて詳しくならない方がいいわよね」と一言残し去って行った
たまに歌詞で見かけるが
私に向けて言ったのだろうか
吐いた煙がいつもより存在を主張するかのように残っていた気がする

夕方吉祥寺から三鷹まで歩いてみた
帰宅中のサラリーマンが多かった
皆歩くの早いなあ何かに追われているのか
"風の散歩道"に咲く紫陽花の美しさに気付いてるのか

私も上京したら人の多さにも慣れ昼間のおば様の様に銀座の空気に染まってしまうのだろうか
染まるのは悪いことではないと思うが
変わりたくない今の気持ちを麻痺させないよう
道端の花の美しさ、オレンジ色の夕焼け、東京でも星は見えることを忘れずにあの花のように「東京人間」を
眺めながら好きな人に囲まれてぽつんと生きたい

私はこの希望と絶望が絡まり合った街が好きです

今は。

"東京の夕焼けは少しだけ窮屈そうだけど
思っていたよりもずっと綺麗なオレンジ色なんだね
涙が溢れてどうにもならない夜にも出会うだろう
それでもいいさこれから見つける全てが
僕の中で光りますように"

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