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「つかずはなれずでこれからも」(2/2)

最優秀賞に選ばれたいな。クリープハイプに想いが届いたら。下心こみこみで、でも忖度せず、誠実に、このライナーノーツを書きます。

※この記事は後半(8~15曲目)です。前半(1~7曲)はこちらをどうぞ。


「夜にしがみついて、朝で溶かして」ライナーノーツ


8.ニガツノナミダ

ソフトバンクのCMに採用されていた曲。CMでは冒頭の数十秒しか聞けなかったので、初めてフルで聞いた今、展開と緩急の激しさに驚いている。各メロディだけ切り取って聞いたら全く別の曲。それが2分弱の間に収まっているのだからさらに驚き。

私は曲を作ったことがないから分からないけれど、2分の曲にここまで違う展開を詰め込むことってあまり思いつかないことのように感じる。この曲にお得パックさながら詰め込まれているのは、これがCMソングだからなのかなと考察した。

間奏後に来る「30秒真面目に生きたから 残りの余生は楽しみたい」。冒頭のCMで使われる30秒だけは案件に寄せてつくったけど、残りは好き放題やってやるという解釈をした。案件の生々しい現実とクリープハイプらしさが表れていて二ヤっとしてしまう。

別に1曲くらいまるまる案件に寄せてしまってもいいのに、と考えて思い留まる。1曲もくれてたまるかと抗うのが、私にとってのクリープハイプだったではないか。

「もうしばられるな でも『しばられるな』にしばられてる」

縛られないという自分の気持ちに対しても葛藤する、その人間の奥深さが大好きなのだ。
私も感情が摩耗したつまんない大人になりかけてるなと気づいて、苦笑いする。


9.ナイトオンザプラネット

シングル表題曲や古参ファンの大歓喜の曲を経て高まった流れが、前曲「ニガツノナミダ」の最後のギターの余韻で一気に落ち着けて、満を持してやってきました「ナイトオンザプラネット」。

"creep hype"の名前の由来が映画のセリフから来ていることは知っていたけれど、その映画がこの曲のモチーフ「NIGHT ON THE PLANET」だったことは把握しておらず、勝手に答え合わせの気分だ。
クリープハイプの誕生に欠かせない存在が楽曲という形あるものになり、聞けること。好きになったこと。なんて幸せなことだろうか。

行間たっぷりのサビ。この抽象的な歌詞に、聞く人はそれぞれの景色を想起するだろう。
色んな薄く何重にも重なったボーカル(コーラス)が心地よくも力強くて、この曲への思い入れの強さを感じさせる。しかし、私が何より好きなのはベースの音!シンプルなルートの8ビートだけど、曲を支え前に進める感じがめちゃめちゃかっこいい。

ベースが消えて蕩々と始まる語りは、言葉がぎゅっと詰まっていて、尾崎さんの「NIGHT ON THE PLANET」への愛がひしひしと伝わる。感情移入する人もいるだろうけど、私はこの歌詞に何より尾崎さんへの愛おしさを抱く。大切な作品やモノを早口で語る尾崎さんがとっても愛おしい。音から伝わる「この曲の大切さ」が愛おしい。

4人がライブで演奏する姿が見たいな。


10.しらす

毎アルバム楽しみにしているカオナシさん曲!習い事で合唱をして育った私にとっては、童謡調の曲大好物です。
素朴で可愛い、でもどこかおどろおどろしい。そういった童謡の一番美しいところが表現されているなあと思う。この曲の美しさは、カオナシさん自身の内面の美しさだと私は(勝手に)思っている。

「愛でねばならね 五分の魂」「猫猫猫 可愛いあんよ ふわふわしてて美味しそうだ ・・・ 長生きしてねと頼んだよ」

カオナシさん独特の愛情表現。不思議な、底知れぬ魅力がにじみ出ている。

あと、旋律をピアノがなぞってるの、すっごく良い。子どものお歌の練習で先生が弾いてるみたい。

極めつけは「ランランラン・・・」の部分。尾崎さんの甥っ子さん2人が歌っていらっしゃるんですって!んわーーー愛おしい。愛おしい・・・


11.なんか出てきちゃってる

わー、めっちゃえっち!!うぎゃ!
ダークで色気のある曲、みんな大好きよね?!思わずクリープハイプファンの皆様に思いを馳せてしまう。
あとちょっと、ホラーゲームのBGMで流れてそう。

この色気を醸し出してるのは、紛れもなく尾崎さんの声だ。MUSICAのインタビューで、カオナシさんが「尾崎さんの声の良いところは決して高いところだけではない」とおっしゃっているんだけど、こういったところで実感する。(他の曲もそうだけど!)

これは意味とか考えずに脳みそ空っぽにして楽しもう。

p.s.他の方のライナーノーツを読んでいて知ったのだけど、作成の欄に連名で小川幸慈とある。ゆきちかさんがコードをつけたというのも、新しいクリープハイプでニヤニヤしてしまう。


12.キケンナアソビ

シングルでリリースされたとき、めちゃめちゃ惹かれた曲。
最初の音は琴ですか?合ってます?違うかな?真実はどうあれ、めっちゃかっこいい。イヤホンで聴くと左右から違う音が聞けるのも乙だあ。

葛藤と諦念と、一抹の想いと。
この曲の歌詞は魅力が爆発していて、どこを抜き出すとかできない。
初めから終わりまで通して全てが良い・・・・・・。
自暴自棄になりたくてもなりきれなくて、自嘲気味な主人公。
ほんとは純情な人なのに、どっかで足を踏み外してこんなことになってしまったんだろうな。
強がっちゃうところも、ぽろっと出た本音の美しさも、嘘だよと無理矢理笑うところもとってもきれいだ。


13.モノマネ

「シャンプー」「リンス」と聞いて、真っ先に連想したのは「ボーイズENDガールズ」。アルバム「一つになれないなら、せめて二つでいよう」で一番好きな曲だった
このアルバムは真っ直ぐな気持ちを歌った優しい曲が多かったと思うのだが、この曲はその中でもとりわけド直球の曲だ。

「シャンプーのにおいが消えないうちに早く会いに 風が吹いても大丈夫だよ」「朝も昼も夜も二人で あなたとあなたと」。

ギターのリフが切なさを加速させ、思いの強さが際立てていて、14の私にぶち刺さっていた。今聞いても心がきゅっとなる。

私の直感は当たっていたそうで、「モノマネ」は本当に「ボーイズENDガールズ」のアンサーソングらしい。
ボーイズENDガールズよりトーンダウンして始まるこの曲は、サビ前まで幸せそうなのに、1番サビで自分の過ちに気づいてしまう。
推しカップルだったのに・・・!!!別れちゃうの!悲しい。
でも、最後まで相手を責めず思いやっている姿は、やっぱりあのときの2人なんだなと思える。


14.幽霊失格

イントロのギターかっこいい!!!と思う曲パート2だ。幽霊になった君への表してもどうしようもない気持ちが表れていて、胸が締め付けられる。

このアルバムの中で、一番この曲の歌詞が好きだ。私にとって、最も感情移入してしまう曲なのだろう。
化けて出ても、どんな姿でも愛おしいと思ってしまう感覚。というか、きっといなくなってしまった君は化けて出てなんかいなくて、幽霊でもいいから姿を見せてほしいと願った主人公の妄想なんだろうな。
現実と空想の狭間が分からなくなってしまうほど愛していることを、優しく少しコミカルに歌う。

私には、大学生活4年間を共に過ごし、この先も一緒に生きていきたいと思っている大切な人がいる。
素直で、かわいくて、自分の意見をはっきりと言える人。この世とあの世を合わせてもこんなに尊敬できて素敵な人はいないと思うほど大切な人。
彼の笑顔を守るためなら、私は敵を攻撃する矛にも、心と身体を保護する盾にもなれる。

そんな彼が、もし今私の前からいなくなってしまったなら、「化けて」「成仏して消えるくらいなら いつまでも恨んでて」と願ってしまうだろう。
成仏して幸せになってほしくても、未熟な私は彼なしじゃ生きられなくて、すがりついてしまう。
でも、幽霊になった彼が、濃くて目立つ眉毛をハの字にさせ、大きな目をうるうるさせていたら、彼を私という未練がましい存在から解放したいと思うんだろうな。

こんなことを想像していたら、怖くなってきた。
彼には長生きしてもらわないと困る。


15.こんなに悲しいのに腹が鳴る

全てを包み込む優しい陽光のようなイントロで始まる、アルバム最後の曲。

今作であまり出ていなかった尾崎さんの声のクセがよく出ている。
高音を歌うときに出るクセも、そうでない部分も使い分けるというのが新しいクリープハイプなんだなと気づく。

クリープハイプがこんなに優しく、シンプルに生きたいと歌ったことはあるだろうか。
歌詞は多少荒々しいけど、その悪態さえも生きることへの前向きな執着に感じる。
どう生きるではなく、ただただ生きたい。生きることそのものへの願い。
ありのままに、感情のままに生きていいと、肯定してくれているようだ。

クリープハイプには全てを投げ捨てるような歌詞ばかりあるように思われがちだが、そうではない。
弱い人間でもいいよ。どんな人間でもいい。
生きよう。どんな姿でも生きよう。

人間らしくて愛に溢れたクリープハイプが大好きだ。
生きるのに悩んだとき、とびきり嬉しいことがあったとき、何でもない日常、どんなときでもクリープハイプを聴きたいと思う。


このライナーノーツで少しでも愛を返せていたらいいな。







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