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知識・知り合いゼロの素人が全部手探りで同人誌を作るまで

※この記事は前後編になっており、前編(当記事)は同人誌制作の模様を、後編は即売会で実際に頒布する模様を書いています。気になる方だけでも読んでいただけると嬉しいです。

後編→https://note.com/mieson/n/nc69209eda085

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こんにちは。ヨッシーアイランドに鉄砲を伝来させた男、みぃそんです。


突然ですが、皆さんは『オタク』ですか?


僕は子供部屋で勉強机にPCを置き美少女グッズを所狭しと飾る“ステレオタイプのオタク”です。ついでに言うと無職で童貞です。役満です。


ですが、最近はこういった“いわゆる”オタクだけでなく、爽やかなオタクも増えてきているイメージがあります。
TikTokやYouTube・Web漫画などの影響で手軽にアニメ・漫画コンテンツに触れることができ、その影響か今までであればそれらに触れることがなかったであろう清潔感のある人々がオタクと化しているわけです。

髪はもちろん整えられ、主張しすぎないモダンな衣服を着てハキハキと喋る。そして作品を見ては綺麗な涙を流しながら綺麗な感想をツイートする。そんな人々が今オタクとなっているんです。

えっ、急に何ですか……。三世代の家族に笑顔で怒鳴られてしまいました……。

なるほど……。
彼らが言うには「オタクはもっと気持ち悪く醜いものでないといけない」と……。

確かに彼らの言うことにも一理ある気がします。

爽やかな写真

先述した通り、オタクは今までのような汚いイメージではなく、様々な要因で参入した爽やかな人々もその一部となったことで、「何かが好きな人」という昔よりも広義且つ良いイメージになりつつあります。

ですが、元々の気持ち悪いイメージのオタクが全員淘汰され文化などが段々と忘れ去られてしまうのは純粋に寂しいのです。
時間の経過とともに『オタク』が居て当たり前のものになり、ラフな使われ方をしすぎると、過去に迫害され続けていたオタク達が浮かばれないでしょう。

『コミック百合姫』の黒幕

それを防ぐためには、今一度僕自身がオタク代表として“オタクらしさ”を前面に押し出した創作を行い、それを世に発信することで「令和のオタクも腐っちゃねぇぞ」と若者を代表しておっさんのオタク達にピースサインを突き立てたいのです。

では、どうすればいいのか

この記事のタイトルを見ていただいた方には察してもらえたでしょう。

そうです。
ある程度の熱量がないと作ることができず、オタクが“オタクらしさ”を余すことなく表現でき、オタクであれば誰しもが手に取ったことがあり、手に取ったことがなくともpixivの試し読みで冒頭4Pだけは読んだことがあるでお馴染みの………

ここまでが導入です。改めましてみぃそんです。こんにちは。今のうちに深呼吸しておきましょう。

1. 同人誌を作ったキッカケ

ということで僕は後ろで爆風が吹き荒れるような同人誌を作ることになったわけですが、今回同人誌を作るに至った理由は先述の「古き良きオタクらしさを今の世に刻むため」みたいなもっともらしい理由ではありません。完全にでっち上げ。noteの導入は大体の人が嘘を書きまくっています。

これが本当の理由です。それ以上でもそれ以下でもありません。すんません。本当に。楽しむためにピザの宅配とか頼んだ方とかもいると思うんですけど、今すぐキャンセルしてください。

僕は女の子との関りが無さすぎるあまり、日頃『妄想ツイート』と銘打ってこういった『俺』×『架空の女性』が登場人物のポエムのようなものをツイートしているのですが、これを定期的に発信するようになった段階でなんとなく「いつかこういうのをまとめた同人誌を作りたいなぁ」という構想がありました。

つまり今回制作したのは、この『妄想ツイート』をまとめた同人誌なのですが、制作に至るまでに僕の中で少しためらいがありました。

その理由は、これらがTwitterで全くウケていなかったからです。

画像を見てもらうと分かる通り全くRTされていません。一般人が自動投稿してるマシュマロ募集のツイートくらいのリアクションしかされていません。
たまに友人がRTしてくれる時もあるのですが、そこから知らない人の元へ届くこともなく、多くても2RTが限界なのです。

僕の中ではどれも傑作なので本にまとめて作品らしく仕立てたいのですが、一応自費で出版するとはいえ、このままではあまりにも自己満足が過ぎるうえ赤字の中でも一番デカめの赤字を背負いこみそうなので、どうしてもためらわざるを得ませんでした。


そんな中、僕が「同人誌を作ろう」と決心したのは3月の半ば頃の出来事がキッカケでした。

僕はエイプリルフールにフリーの声優さんに依頼して『俺の妄想ツイートをいやいや読む彼女』を演じてもらい、「実はこんな可愛い声の彼女いましたw」とツイートするキモすぎる嘘を思い浮かんだのですが、その依頼を送る直前に「せっかくこの『妄想ツイート』に自分以外も巻き込むのであれば、もっと大きく展開しよう」と突然決心したのです。

後に引けないように「後日告知映像のボイスを依頼すること」、そして「同人誌即売会に参加すること」を声優さんへの依頼文章に織り込んでしまいました。
この時点で同人誌の進捗はゼロ。内容のアイデアも無ければ参加する即売会や印刷所など何もかも決まっていませんでした。

自分の中で決まっていたのは「好きな絵師さんに表紙の絵を依頼したい」ということだけ。僕は趣味ですこ~~~~~しだけ絵を描いているのですが、そんなヘナチョコうんち画力では『妄想ツイート』達を活かせないと感じていたので、こればかりはマストでした。

直近で自分が参加できそうな即売会を探したところ、地元大阪で開催されるらしいことが分かりました。
これを調べた時点(3月23日)で残りはあと2か月。インターネットの同人作家が残り1週間を切っても尚作業をしているのをよく見ていたので、この時点で構想・作業に入れそうなのはかなりラッキーでした。


2. 同人誌の表紙イラストを絵師さんに依頼する

明けて4月1日。
上記の嘘ツイートをし終えその日はオールをしていたので、深夜テンションでそのまま同人誌の表紙を依頼してしまおうと決断しました。
ちなみにこの時点でも進捗はゼロ。ギリギリになってから頼むよりも、ある程度期間を設けてゆったり描いてもらおうというような考えからでしたが、当の本人は何も作ってないのに表紙だけ先に頼まれるって結構ヤバめですね。

今回ご依頼したのは敬愛する絵師のポランカ先生
水彩っぽい塗り方でやわらかく優しいイメージの女の子を描かれているので想定していたイメージにピッタリで、且つ制服のイラストも多いため僕とフェチズムが一致していそうだなという考えでご依頼させていただきました。

早速依頼を出した男、みぃそん。今見たらめちゃくちゃ早朝に送っていて申し訳ないです……。
ポランカ先生はプロフィールや公式サイト等で普段から依頼を承っているという旨や料金などを記載されていないので、このメッセージを送る時はめちゃくちゃ緊張しました。「1枚3800万円です」と言われる可能性も十分にあるので。

ですが、実際はめちゃくちゃ真摯に分かりやすく対応・説明していただいたので、「この絵師さんに依頼出すの怖いな…」とためらっている方は臆せずに一度DMを飛ばしてみましょう。相手が絵師の世界線のブラックジャックでもない限り1枚3800万円になることはないです。ついでに早朝に送るのもやめましょう。

即売会自体は5月末ですが、早く入稿できると安くなるサービスがあるようなので目安の締め切りを5月の1週目として依頼させていただきました。イラストももちろん有償で依頼しているので、できるだけ出費は抑えたいという考えのもとです。
とはいえ、時間もそこそこあるので僕自身もゆったり作業を始めました。

はっっっや

依頼を出し話し合いがついてから2日後には初稿が来ました。それもしっかりカラー付きで。仕事が早すぎる……。
ほぼ毎日Twitterにイラストを上げながらpixiv FANBOXも更新されているので筆が早い方だとは思っていましたが、早すぎて僕はこの時点で何も作業をしていませんでした。最悪すぎる。

3. 俺も作業を進めよう

流石に何も進めていないのはマズい(そして申し訳ない)のでちょくちょく作業を始めました。この計画性の無さが現在ニートをやっている理由です。

ちなみに依頼費や印刷代は在宅でできるお仕事等で稼いだお金を使っています。でも基本無職です。

今回印刷を依頼したのは『STARBOOKS』さん。早く納品すればするほど安くなるシステムが「貧乏性」で「焦らされないと何もできない」僕にとって好都合だったのでここに決定しました。

細かい仕様やページ数・サイズに至るまでを決定し、依頼を出したのは4月23日。上記のDMから既に2週間が経過していますが、僕は本当に焦らされないと何もできないんだなと痛感しております。猛省。
締め切りは約2週間後の5月6日に設定。この日までに表紙・本文を完璧な状態で入稿できればひとまずゲームクリアーです。進捗的に2週間あれば十分に終わりそうだったので、なんとなく適当にこの日付で設定しました。僕は勘で生きています。

https://houganshi.net/houganshi_solid.php

内容について「方眼に文字を嵌めて作文っぽい形にする」というイメージは湧いていたので方眼を自由に作成できるサイトを検索。神のサイトを発見しました。

ダウンロードした方眼を自分好みの文字数にする模様をお届けです。ちっちゃ~い消しゴムでちまちま削る作業をしました。

そして完成したのがこれ。
本に掲載するのはツイートが基になっているので140文字+αあれば十分ということで145文字の方眼にしました。

後はこれにひたすら既存の妄想ツイートをはめこんでいく作業です。

ですが、片っ端からはめこみまくるというわけではなく、自分の中である程度コンセプトを持って配置しようと考えていました。

例えばこれは本編の一部ですが、このページは「図書館・図書室」という設定で統一されています。
色んなシチュエーションがあるので、次々変わり続けていると酔ってしまうというのもありますし、なにより同じシチュエーションでも違った見せ方や展開が用意できるんだぞというのを見せたかったというのもあります。


このように既存ツイートの中に同じテーマの物が3つ揃っていればいいですが、中には「このテーマで揃えたいけどストックが無いよ~」というパターンもあります。
その時は新規で書き下ろして収録、といった風に作っていきました。

同じテーマで揃えたものばかりだとワンパターン化してしまうので、雑多なものも挟みつつ、またその全部に解説を書かなければいけないので文章を考えて~、といった感じの流れをひたすらにやっていく感じです。

4. 地獄・入稿前の数日間

そして時は飛んで5月2日。
僕は動画編集のお仕事をたまにやらせていただいているのですが、取引先から「2日後の4日〆の依頼を出したい」と連絡が来ました。
正直、この時点で同人誌の方の進捗は芳しくなかった(何故)のでお断りすることもできたんですが、同人誌制作でそこそこお金もかかっていますし、何より物事を断れないので二つ返事でOKしました。

そして同日。
よく一緒に音楽を作っている友人から「作詞を手伝ってほしい」と連絡が来ました。
お察しかとは思いますが僕は当然断れません。ほぼワンコーラスだけだったのと、久々に作詞をしたかったという好奇心のもと承諾しました。こちらも締め切りは近めです。

翌日、動画編集に関する質問を先方に投げました。僕は動画編集ひよっこなのでまだまだ分からないことだらけです。

動画の方の返事が返ってくるまでに作詞を完成させ、友人に提出。ひとまずタスクは一つ完了です。

GW中だったこともあってか動画の取引先から返信が来たのは翌日4日。つまり動画の納期当日です。急げ急げ。
しかし、作業中にも新たなトラブルが発生&そもそも30分ある動画のテロップ付けだったため一日中作業に没頭し、結局納品できたのは4日の深夜(日付上は5日)でした。ぎ、ギリアウト……。

これら別作業にあくせくしていたため、同人誌の進捗はあまり進まないままでした。

5日はかなり前から決めていた外出の用事があったので昼間はそれに参加しつつ、帰ってからはずっと同人誌の作業三昧でした。
書き下ろしの話を用意するのと、収録する話全部に解説をつけるという作業上、言葉が脳に入ってくる音楽やラジオを聴きながらの作業は難しく、ひたすら自分との戦いでした。

1時間の仮眠を挟みながらなんとか作業は終了。入稿に至りました。

この後、動画編集の方で8300文字というありえないくらいのリテイク要請がテキストで来るのですが、本筋に関わらない話なので省略します。

5.入稿しても作業は終わらない


やっとの思いで愛しい原稿達を無事入稿。3時間ほどしか眠れない日々が続いていたので、泥のように眠りました。
入稿前、入念にチェックをしたので、万に一つ少しのミスはあるかもしれないと思いながらもほぼほぼ作業終了だろうと思っていました。

まぁ、当然ミスはあります。そういうものです。

入稿してから5日後の5月11日。知らない番号から電話がかかっていたので検索すると、今回利用した印刷所様。急いで折り返しをかけます。
曰く、「サイズが合っておらず、このまま印刷してしまうと大量の余白ができる」とのこと。即座に原因を探る作業に移ります。

僕は今回、STARBOOKS様が公式に配布していたテンプレを使って作業を進めていました。
上下左右にある2本ずつある水色の線がそれぞれ内側から「タチキリ線(=本作る時ここで切るよの線)」「塗足しライン(=本作る時にここまでズレるかもしれないよ線)」となっており、公式のテンプレを使用したことでこれら目安を使いながら快適にミスなく原稿を作れていたはずでした。
しかし、上記画像のまま提出するとデカ余白ができる、と。全然わからん……。

そこで僕は気付きます。

もしかして、水色の線の外側まで印刷ライン判定になってて、そのせいでデカ余白ができることになっているのでは? と。

もう絶対これです。甘えてました。
「印刷所の方で水色の目安線でイイ感じに切ってくれるでしょ」という甘えによるミスですこれは。いい歳して働かず実家暮らししている弊害がここに来て出ました。
原因も特定できたので爆速で再入稿を済ませます。

翌日。

 再びミスはあります。当然ですね。

なんか、僕の提出した原稿がめちゃくちゃちっちゃかったらしいです。

恐らく普段から絵を描いていたり、画像周りをよく取り扱っている方であれば上記の文章ですぐ理解できるかと思いますが、僕は何が書いてあるか全く分からず、再びSTARBOOKS様に電話をしました。

電話口で「お送りしたメールは確認いただけたでしょうか?」と聞かれたので、僕は「はい。それでも尚分かりませんでした」と伝えると、少し困惑しながらもすごく丁寧にイチから説明してくれました。本当に申し訳ない。

どうやら、僕の原稿は既定のサイズよりも大幅に小さく作られており、このまま推奨サイズに合わせて印刷すると上下左右に大量の余白が、無理矢理引き延ばして印刷すると文字が潰れてしまう、これを解決するには、大きいサイズで原稿を作り直す必要がある、とのことでした。最初のリテイクの原因と解決法、全然予想と違ったみたいです。

先述した通り僕は公式のテンプレを原稿に使っており、本来であれば上記画像のように推奨サイズのまま原稿を制作できているはずでした。

僕の原稿がこれです。ちっっっっちゃ。まるで原稿サイズが違います。YouTubeのサムネ作ってんじゃないんだぞ。
テンプレの方の画像サイズが67.7Mなのに対して、僕の原稿は2.10Mです。3歳児の指?

どうやら、知らないうちに勝手に原稿サイズが小さくなっていたみたいです。本当です。嘘じゃないもん。こんなこと言いたくないです僕も。

こうなってしまった原因は分かりませんでしたが、デカ余白の犯人は突き止められたので原稿を作り直します。
僕は普段動画投稿している影響で「編集前の元素材全部保管しておかないと気持ち悪い病」なのですが、そのおかげで原稿を作り直す作業が楽でした。

というのも、原稿の提出はレイヤーを統合してから行うため、提出したレイヤー統合後の原稿をそのまま推奨サイズに拡大してしまうと、担当者さんが言っていたように文字がボケてしまいます。
これを防ぐにはレイヤーが統合されていない元々のテキストのサイズを上げる作業が必要なので、皆さんも油断せずに元のデータは残しておきましょう。これがあったおかげで「完全にイチから作り直す」といった事態は避けられました。

といった感じで、紆余曲折ありながらも今度こそ原稿が完成。
後は製本された同人誌が届くのを待つのみとなりました。

6.本が届いたぞ~~~~!!!


再入稿から3日後の5月15日。COMIC CITYの丁度2週間前。


本が……


本が……




すみません。嬉しすぎてつい『ゆるキャン△』のロゴみたいになってしまいました。

本が……俺が作った本がある……。

表紙の質感を結構こだわったので、それが上手く出ていてかなり嬉しい。
ポランカ先生の画風に合う材質無いかな~と色々レビューなどを見ながら吟味していたので、そのあたりを妥協しなかった成果が出たと思います。

文字のあたりもいい感じ

手に取って読みやすいように少し小さめのサイズ(A5)にしたのですが、正直な話思ったよりも小さいなという印象。デジタル人間にとってA5サイズは日常であまり見ないサイズです。

そして、エイプリールフールの際もお世話になったがびさんに告知映像の声も担当していただきました。
「前回と同じ雰囲気の声で且つ台本を1分以内目安で読み切ってもらって、最後のボイスはマイク近めで囁くように読んでいただいていいですか?」というゴチャゴチャした要望にも関わらず、それらをしっかりと反映した素敵なお声で読んでいただきました。本当にありがとうございます。

「無名一般人が出す同人誌に気合入れすぎだろ」と思われるかもしれませんが、こういうのはしっかりお金をかけて本気で取り組んだ方が面白いんです。
僕は生まれてから今までお金持ちだった瞬間が無いので、だからこそお金をかけて無一文になったとしてもノーダメージなんです。半端にお金を持っている連中とは訳が違います。

しっかりとそれっぽいお品書きも投稿し、後は本番を待つのみです。

待ってろCOMIC CITY大阪122!!!!!!!!!!

俺はお前を倒す!!!!!!!!!!!!!!!!


後編に続く
https://note.com/mieson/n/nc69209eda085

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