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ナボナの思い出

ナボナ、というお菓子をご存じでしょうか。亀屋万年堂は東京は自由が丘の菓子屋ですが、ナボナはそこの看板商品です。昔、王貞治氏が「ナボナはお菓子のホームラン王だ!」と宣伝していましたね。パウンドケーキに各種クリームが挟まっている、という素朴なお菓子です。

私はほぼ地元で育ち、ナボナは家の仏壇にお供えする、また親族がお土産で持参するお菓子の定番の一つでした。私も、またこの菓子に親しんでいる私の友人たちも同意見ですが、もっとも人気があったのはナボナのなかでも主力だったチーズクリームでした。

このチーズクリームナボナですが、今の時代のチーズクリームとは訳が違います。ほんのり甘いクリームの中に、つぶつぶの堅くて塩気のあるチーズが混ざっているんですよね。今知られている普通のチーズクリームがその辺のスーパーで売られる時代ではなく、お茶の間での定番ではありませんでした。なので、幼い頃の私は、チーズクリームってこうなんだなあ〜と想いながら食べてました。

ナボナには何種類かあります。私の子どもの頃は、このチーズクリームと、オレンジマーマレード、そしてパイナップルクリームの三種でした。正直、チーズクリーム以外はあんまり美味しくない、特にクリームにパイナップルが挟まっているパイナップルクリームはイマイチだと思っていました。多分、母や、一緒に住んでいた祖母も同じ思いだったでしょう。なので、お土産として三種セットが持ち込まれると、あっというまにチーズクリームが無くなり、あとの二種の減りのスピードは落ちたものです。

私の家には祖母の離れがあり、そこに神棚と仏壇がありました。ナボナは、仏間兼こたつ部屋だった祖母の居間で、時代劇を見ながら祖母や母と一緒に食べるお菓子の定番の一つだったのです。

さて、亀屋万年堂は今でも健在です。自由が丘にもありますが(本店、とされているちょっと駅から離れている店舗はどうやら閉じたようですが、駅前の店舗に統合するようですね。母の話だとこちらが発祥の地だとのことですが)、各地に支店があります。たまに店舗に寄るのですが、ナボナの種類が増えて、また季節ごとの限定商品も出しています。今の定番はチーズクリーム(生き残っています!)、珈琲クリーム、そしてパイナップルクリーム(これも生き残っている!ファンがいるんだなあ)。あとこれは定番なのかわからないけど、レモンクリームやあんこバターもあります。

あと驚きなのは生ナボナ、なるものが登場したこと。生ナボナは挟まっているクリームの新鮮さが売りのようで、賞味期限は当日。チーズクリームに加え、プリン、チョコミントなど。家の近くではあんことイチゴが挟まったものも売られていました。季節限定かもですがレモンクリームも有り。

若い頃は、何の気なしに普通にあるよね、と思っていたお菓子が、年を経る毎に店が閉じたり、店は残っていてもそのお菓子は廃盤になったり、っていうことが結構あります。そういう意味で、亀屋万年堂さんがずっと続いていて、かつナボナを提供しつづけてくれていること、さらにナボナを深化させ続けていること、本当にありがたいなあと思うのです。


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