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レトロ喫茶店にて1970年代を想う

今日、所用があって母と一緒に出かけていました。ちょっとお茶でも飲もうか、という話になり、喫茶店に入りました。それは、1977年創業の老舗の(といっても私より「若い」ですが)喫茶店。今時流行のレトロ風ではなく、本物の1970年代の雰囲気漂わせる内装。そしてメニュー。

とても懐かしくなり、また小腹も空いていたので、昔喫茶店でスパゲティと言えば定番だったナポリタンと、クリームソーダを頼みました。



喫茶店に限らず、私の子どもの頃のレストランでも、スパゲティのチョイスはミートソースとナポリタン。70年代当時は「壁の穴」などはもう創業していて、日本風スパゲティの代表ともいえるたらこパスタなどを開発していたらしいですがそれが一般に広まるのはまだ先のこと。また六本木にはかの有名なイタリアンChiantiもあったわけですが、普通はそんなところにしょっちゅう出入りするわけでは無く。日本で「イタメシ」なるものが流行るのは80年代中盤以降だったのでは。

今こうやって年を経てみると、グローバル化以前の、昔の日本の風景が懐かしくなります。もちろんその頃は喫煙者が多く喫茶店などはどこでもモクモク煙くて子どもには結構つらい環境でした。テレビドラマや映画も今の基準で行ったらコンプライアンス違反だらけの乱暴さ。ジェンダーだの多様性だのという概念はみじんも感じられませんでした。また消費生活においても、今に比べると品数が圧倒的に少ないものも。例えば牛肉・オレンジ自由化の前なのでバレンシアオレンジジュースみたいなのもなくてポン・ジュースが一般的だったし、アメリカ産牛肉もスーパーに置いてないし。さっきの「イタメシ」もそうですが、エスニック料理を出す店などもほぼ限られており、食の多様性にも現在の日本とはかなりの開きがありました。

しかし、グローバル化の波に揉まれる前、日本が日本としてもう少し閉じていたころの、決して洗練されているとはいえないし乱雑さや猥雑さが混在したあの時代が、懐かしくなることもあるのでした。また、1970年代というのはまだ戦後の爪痕が色濃く残っていた時期でもありますし、学生運動や左翼・新左翼の挫折を経た後のうっすらとした倦怠感が漂う時代でもありました。私はまだ子どもでしたが、1970年代中盤から1980年代初頭ぐらいまではそんな空気を感じていました。そういう時代の日々の暮らしの中で、たまに両親や親戚などに連れられて立ち寄ったあのころの喫茶店と同じ空気が、今日の店には漂っていました。

そんなことを思い出しながら、懐かしい感じだな、いいないいな、とはしゃいでいると、母に「あなたもそんなに昔を懐かしむなんて古びてきたわね〜年取ってきたわね」と言われたので、「私は元々古びた発想の人間ですよ」と答えました。歴史が元々好きで、昔を振り返るのは子どもの頃から好きで、どちらかというと流行を追っかけるタイプではありませんでした。そして自分が年を取ってくると過去の数十年間はまさしく同時代史という感じで眺めてしまいますね。

ところで最後に。この店、クリームソーダもナポリタンも美味しく、サイフォンで入れる珈琲もなかなかイケていました。そして、最初はすいていたのですが、そのうち年配の方、若い方、様々なお客が来訪し、繁盛していました。場所が抜群にいいということもあるのでしょうが、流れているバイブスがいいんじゃないかな。
東急池上線旗の台駅目の前の「カフェリア」です。



カフェリアの店内。

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