見出し画像

まいにち食べたいアップルパイ、いちばん美味しいクッキー

はじめて、なかしましほさんのレシピのアップルパイを焼いた。
少ない工程と材料なのに、とんでもなく美味しい。

おおよその場合、パイといえば生地を何回も折り畳んで層を作ることが多いと思うけど、このレシピは生地を伸ばして冷やすだけ。

層がないのにパイになるのかな、と思ったけど、出来上がりを食べて驚いた。これは間違いなくパイだ。

薄く伸ばしたパイ生地は、焼いたリンゴの下にあってもサクッと軽く、小麦の香ばしい味がする。私の大好きな素朴で優しい味だ。

指を切りそうになりながらも頑張って切ったリンゴはとろりとしていて、果肉の甘酸っぱさとシナモンの香りが口の中がどんどん幸せになる。

さらに、ほっかほかのパイにバニラアイスを乗せるという力技。
実は、パイを焼いている最中にアイスを買い忘れたことに気がついて、わざわざ走って買いに行った。

美味しいものを食べるためなら、多少の無理も必要だ。
絶対にこの判断は間違っていなかったと言い切れる。

少し高いMOWを買ってきてよかった。
こういう甘いお菓子には、濃厚な甘さを持つMOWのバニラが最高に合う。

アップルパイが大好物なカレも、勿論その美味しさに天を仰いでいた。
神(なかしまさんと私)に心から感謝しているようだった。

毎日食べたい。最上級に好きかも。とカレは言って、お皿に残ったMOWの溶汁とパイの最後の一欠片も全て平らげた。

今回作ったアップルパイのレシピは、なかしましほさんの著書「初めてでも失敗しない51のレシピ まいにちおやつ」を参考にさせていただいた。

なかしまさんはXにもさまざまなレシピを掲載してくださっているけど、私はこの「まいにちおやつ」に掲載されているレシピが好きだ。

この本は、世の中にあるさまざまなレシピ本と比べると、写真や工程の説明が少ないほうだと思う。

人によってはそのことに不安を感じる人もいるかもしれないけど、私はその説明の少なさが、気楽にお菓子を作ってもいいんだと思えるための余白になっていると感じる。

なかしましほさんのレシピは、お菓子を作るための気合みたいなものが必要なくて、ふと思いついたときにさっと作れるレシピ本で、とっても自由で居心地がいい。

大学生のとき、私はこのレシピ本と出会ってプレーンクッキーを作った。
その時もあまりの美味しさに感動した。

こんなに美味しいクッキーを作れるなんて、私は天才かも、と調子に乗って何度も何度も作った。(実際に素晴らしいのはもちろんなかしまさんです)

大学時代の私は、ひとり暮らしの寂しさを埋めるためにしょっちゅう家に友人を招いていた。調子に乗って作ったクッキーは、来訪した友人に振る舞うのに、ピッタリのおやつだった。

さまざまな友人にクッキーを食べてもらったが、ひとり、このクッキーを作るたびに思い出す友人がいる。

「冗談抜きで今まで食べたクッキーの中で一番美味しいわ。お店のよりも」

そう言った彼女は心の底から驚いた顔をして、クッキーを見つめていた。

彼女はとある理由から、食事をするのに人一倍、気を遣っていた。
そんな彼女にも私は(もちろん彼女に確認を取ったうえで)クッキーを振る舞った。今思うと、自信があったとはいえ厚かましい。

でも、あの日クッキーを食べた彼女は間違いなく、目を輝かせていた。
その目を見ていると作ってよかったな、と私は心から思えた。

なかしまさんのレシピを作るたび、あの日の彼女の言葉を思い出す。

今までで一番美味しい。

すごい言葉だと思う。だって、人生1位の味って。
私はこのレシピを借りている身なので、その言葉の全部をもらうのは違うと思うけども。

それでもこのレシピが、間違いなく美味しいことに気がついて、それを作って振る舞う自分の行動には誇りをもってもいいのかな、と思う。

もう、ずいぶん前のことだから彼女も覚えてないことかもしれないけれど、
あの日、あの時、彼女にとっての「人生で一番のクッキーを焼く人」になった自分を、今でも誇りに思っている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?