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東京は特別区をやめたい?~特別区廃止論とは~

1.始めに

特別区設置協定書(以下大阪都構想)は大阪市廃止し、4つの特別区に再編することで二重行政を解消するというものです。
特別区と聞いてみなさんがまず思い浮かべるのは東京23区ではないでしょうか。実際、大阪都構想は東京の特別区制度を参考に作られたものであり、制度上の細かな違いはあるものの大まかには同じものです。
こうして大阪が二重行政の解消という旗印の下、東京と同じ特別区制導入を目指しているときに東京では特別区制度へNOを突きつける運動が行われていました。それこそが基礎自治体連合です。それではこの基礎自治体連合がいったいどんな物なのか見ていきましょう。
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2.千代田市構想とは

この特別区制度にNOを突きつける基礎自治体連合構想は急に出てきた新しい考えではなく、元になる考え方というものがあります。それこそが東京23区の中で最も早く政策として特別区制度へ異議を唱えた千代田市構想というものです。
まず、基礎自治体連合の話をする前に特別区廃止論の発端とも言える政策、千代田市構想についてご紹介しましょう。
千代田市構想とは2001年に千代田区長に就任した石川雅巳氏による千代田区を千代田市に格上げするという構想です。当時日本では地方分権や自治権の拡大が叫ばれている時期
で東京における自治権拡大運動の一つとして出てきた構想です。千代田区を千代田市をいう基礎自治体にすることにより、東京都に取られている地方3税(固定資産税、市町村民税の法人分、特別土地保有税)などの課税権などを取り戻すことによって住民により還元できる政策を行うことを掲げたものなのです。

3.なぜ、区ではだめだったのか

なぜ千代田区は市を目指したのでしょうか。まず一つ目にあげられるのは税率をコントロールできない点です。本来地方自治体には税率を決める権限がありますが、特別区にはありません。千代田区は皇居があるなど日本の中心であるため固定資産税が高く古くから住んでいる住民が税を払えなくなり千代田区から流出することが増えているという固有の問題を孕んでいるためこの税率を決めれないというのが問題でした。
二つ目は東京都の税の配分システムです。東京都は特別区内の三税をいったん都に納め、その後、都が各区の人口に応じて配分するシステムを取っています。千代田区は企業などが多いため、昼間人口は90万人ほどいますが、夜間人口(住んでいる人)は5万人程度しかおらず税収の1パーセントほどしか地方三税は東京都に回収されたうえで人口や資金によって配分されるため千代田区にはほとんど帰ってこないというシステムになってしまっているのです。このように特別区都一口にいっても各区によって抱える問題が違うにも関わらずに予算配分が少なく、独自の取り組みを行うことができないという点こそが特別区制度の問題だったのです。

4.基礎自治体連合とは

千代田市構想は失敗に終わったが社会へ議論を巻き起こす意味では成功といえるでしょう。
次に今回のメインテーマである基礎自治体連合について紹介いたします。
先に記したように、大阪都構想では、「大阪市を廃止し特別区に再編する」こと、つまり府が財源管理し資源の水平的分配を行うなど、権利的には市区を府に統括することで二重行政の解消を図っています。そしてこれに類して、二重行政解消を図る制度として特別区協議会が提唱しているのが「基礎自治体連合」という構想です。
そもそも、国家の行政区画には、「広域自治体」「基礎自治体」の2つがあり、日本においては広域自治体が道府県、基礎自治体が東京23区(特別区)を含む市町村が該当します。
そして連合という集団システムは、連合を構成する各要素による協議により定める憲章というルールに基づき、連合の各構成要素間で協力や支援を行うことでもので、EU(ヨーロッパ連合)が大きな一例として挙げられます。
つまり基礎自治体連合とは、特別区や市町村が集まり、事務分配・徴税・財政調整などに関する憲章(連合内のルール)を決めることで各基礎自治体が有する資源・機能・権利をなるべく対等にし、行政の一体化(二重行政の解消)を図る制度・集団ということになります。また、連合という形態により基礎自治体ごとに、多様な自治の選択が可能となることが予測されます。
また、都構想や基礎自治体連合とは別に、「特別自治市」という制度も政令指定都市の市長会によって提案されています。特別自治市とは、先に記し従来の広域自治体(道府県)・基礎自治体(市町村)という2層構造を廃止し、各自治体の行政事務のうち国防や司法、通商政策など国家が担うべき権能以外の全てを担う都市のことです。これにより各地方において大都市としての都市経営を可能となり、行政の一体化(二重行政の解消)ができるとされています。

5.大阪の特別区は東京と特別区と完全に同じ物なのか

これまで特別区構想の先行例とも言える東京23区における問題点や近年の動きをお伝えしましたが、これが大阪における都構想の問題点へ直結するものなのでしょうか。

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       出典:大都市制度(特別区設置)協議会提出資料 2.事務分担


上記の図を見てみてください。東京の特別区における権限は一般市町村以下となっている一方で大阪の特別区は政令指定都市には劣るものの、中核市並の権限を持っていることがわかります。また、大阪府と特別区の予算配分に関しても東京では都に40%程度が配分される一方、大阪で約は25%と区に残る予算割合が多く設計されています。


もちろん、東京と大阪の税収は大きく異なり、金持ち自治体(東京)の真似をしても大阪が裕福になるわけではないといった批判や、区に多くの権限が残され、一部事務組合の存在も相まって3重行政になるのではないかといった批判があるのも事実です。

6.おわりに

いかがだったでしょうか。今回は実際に特別区制度が用いられている東京で巻き起こっている特別区廃止議論をご紹介いたしました。制度に絶対の正解はありません。これを機に日本や世界の地方自治制度に関する学びを深めても面白いのではないでしょうか。


参考URL
産経新聞、「特別区は? 東京都との違いは? 「進化している」VS「大金持ちの制度」」、2015.5.15 06:00(最終閲覧:2020.10.1)
https://www.sankei.com/west/news/150515/wst1505150018-n1.html
Business Journal、「東京23区、「区」の廃止表明で「市」への脱却目指す…東京都、財源と権限を収奪し弊害」、2019.04.21 10:00、(最終閲覧:2020.10.1)
https://biz-journal.jp/2019/04/post_27564.html
公益財団法人特別区協議会、「「都の区」の制度廃止と「基礎自治体連合」の構想」、2019.4.8、(最終閲覧:2020.10.1)
https://www.tokyo-23city.or.jp/chosa/tokubetsuku/research/kagai01.html

特別区長会事務局、「都区制度に関する参考資料」、2012. 3.16 (最終閲覧:2020.10.2)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000151655.pdf
公益財団法人特別区協議会、「「都の区」の制度廃止と 「基礎自治体連合」の構想」、2007年12月(最終閲覧:2020.10.2)
www.tokyo23city-kuchokai.jp/katsudo/pdf/sonota_katsudo/kouso_gaiyo.pdf
特別区長会、「都区制度(東京の大都市制度)について 」2020.7.1(最終閲覧:2020.10.2)
www.tokyo23city-kuchokai.jp/gaiyo/pdf/tokubetsu01.pdf?_r0207
goo辞典、「基礎自治体」(最終閲覧:2020.10.2)
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E8%87%AA%E6%B2%BB%E4%BD%93/
スッキリ、「何が違う?「連合」「連盟」「同盟」の違いをわかりやすく解説」2019.10.26(最終閲覧:2020.10.2)
https://gimon-sukkiri.jp/union-league-alliance/

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