公約1

【6年間の政権を振り返る】公約はいくつ実現されたのか? -前編-

はじめに

 6年前、皆さんはどんな世の中だったか覚えていますか?
 国内では、ホテルのレストランで「バナメイエビ」を使用しながら「芝えび」と表記するなど食材偽装が多数発覚し、プロ野球では楽天イーグルスが初の日本一に輝きました。海外では、アメリカでオバマ前大統領が2期目の当選を果たし、初の中南米出身者としてローマ法王フランシスコが選出されました。(1)  そういえばそんなこともあったなぁというものが多いのではないでしょうか?
 6年前には参議院選挙もあり、今年の7月で任期を迎える参議院議員が当選しています。選挙では各政党が選挙公約を発表し、当選後の任期中に何をするかを宣言しました。
 公約の実現度を知ることは、当時の日本がどのような問題を抱え、それに対して政権与党がどのような政策を打ち出し、そのうちどれだけが実現したかを知るためのものです。公約の実現度がわからなければ、その政権が自分たちとの約束を守り、自分たちのために仕事をしたのかどうかをわからないままに投票することになってしまいます。


 しかし、これらを個人で調べるのは簡単ではありません。
 そこで、JAPAN CHOICEではこの6年間、 政権を担ってきた自民党と公明党が実際に実行した政策を分析し、それらを可視化しました。それでは、この6年に実施された政策を振り返ってみましょう。
 前編では「実現された公約」、中編では「実現されなかった公約」後編では「実施中、または、方針転換した公約」について振り返ります。

1.実現された政策

1.1 自民党:待機児童

 待機児童(正式名称:保育所等利用待機児童)とは仕事などの理由で保護者が預かってほしいと思っていても預かってもらていない児童(0歳から)のことです。自民党が公約としたのは、「保育の受け皿」の数を増やすことで待機児童を解消することでした。「保育の受け皿」には保育園だけでなく、認定こども園や企業の保育施設も含まれます。
 結果としては、「厚生労働省待機児童消化加速化プラン」により、目標より1年早い2016年度に42万7587人分の保育量が確保され(2)、目標が達成されました。
 2013年2月26日には「保育士の人材確保等子育て支援の充実」に 561億円を使う(3)ことを盛り込んだ補正予算が成立(4)しており、選挙の前にある程度の目星は付いていたようですが、確実に遂行しました。
 公約は実現されましたが、待機児童の数は2013年から2018年の6年間で約2万人〜約2万6千人の間で推移しており、さらなる改善が求められています。

出典元:http://www.asahi.com/special/taikijido/

1.2 自民党:観光

 2018年、訪日外国人の数は3119万1856人となり、「2030年に3000万人超えを目指す」という公約を早々に達成しました。もともと、これは訪日外国人を増やすという経済政策でした。目標を達成した2018年には訪日外国人旅行費用額(日本に来た外国人が旅行で日本に払うお金の総額)が過去最高の4.5兆円を記録し、2012年(1.1兆円)から7年連続で増え続けています(5)。実は2007年からこの目標達成の布石となるものがありました。
 2007年、「観光立国推進法」という国や地方公共団体の観光推進に対する責任を明確にするための法律が施行され、大まかな方針が提示されます。
 その後、民主党政権下であった2012年3月30日に「観光立国推進基本計画」が閣議決定され、数的目標を含む達成目標が提示されました(6)。この7個の目標のうち6個が2016年を期限とする短期的なものでした。
 その後毎年「アクションプログラム」として目標を具体化し、治安への配慮をしつつ、訪日観光客の増加が見込まれるインドネシア、フィリピン、ベトナムに対してビザの免除をするなど、改善を重ねました。高い目標の達成には約10年の取組みがあったということです。

 どちらの計画も、選挙以前から進められていましたが、円滑な改善により成果が現れたと言えるでしょう。

1.3 公明党:留学生

 2013年10月、政府は、留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」を開始しました。主な取組みは、官庁と民間企業の協力で2014年から実施しているこの海外留学支援制度として、返済不要の奨学金を提供すること、および、事前事後研修などを行うことです。
 これらの取組みにより、2012年から2017年の間に、留学支援対象学生数は0.9万人から2.1万人に、支援金額は31億円から64億円になりました。奨学金支給の判断は、留学の計画性などを見て行われ、所属する学校や、学校での成績は関係ありません。そのため、留学の裾野を広げる役割を果たしたと言えるかもしれません。

1.4 公明党:関税・医療保険・食の安全

 TPP交渉では農産物の重要5品目(コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物)の593タリフライン(関税上の品目の細分類)のうち、424タリフラインについて関税撤廃を免れました。
 また、民間医療保険の拡大や混合診療の解禁といった公的医療保険制度の在り方そのものの変更を求める内容は含まれておらず、食品安全に関する制度も変更されませんでした。


 いかがだったでしょうか?前編では「実現された政策」について振り返りました。
 シリーズ記事、中編「実現されなかった政策」後編「実施中、または、方針転換した政策」についても、是非ご一読ください。

▶︎【6年間の政権を振り返る】公約はいくつ実現されたのか?  中編「実現されなかった政策」  はこちら

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参考文献
(1)「平成25(2013年)読者が選んだ10大ニュース」 (読売新聞オンライン)https://www.yomiuri.co.jp/feature/my_heisei/20180803-OYT8T50016/(最終閲覧日:2019年6月16日)
 (2)厚生労働省、「保育所等関連状況取りまとめ(平成29年4月1日)及び『待機児童解消加速化プラン』集計結果を公表」https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000176137.html(最終閲覧日:2019年6月16日)
 (3) 財務省、「平成24年度補正予算概要」https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2012/sy250115/hosei250115c.pdf(最終閲覧日:2019年6月16日)
 (4) 財務省、「平成24年度予算」https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2012/index.htm#hosei(最終閲覧日:2019年6月16日)
 (5)国土交通省、観光庁、「訪日外国人消費動向調査 」http://www.mlit.go.jp/common/001283138.pdf(最終閲覧日:2019年6月16日)
 (6)国土交通省、観光庁、「観光立国推進基本計画」 http://www.mlit.go.jp/kankocho/kankorikkoku/kihonkeikaku.html(最終閲覧日:2019年6月16日)

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