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【そもそも参議院ってなに?】①徹底的に調べてみた。


はじめに


いよいよ参議院選挙が3年ぶりに実施されます。
そこで、改めて皆さんと考えてみたいテーマがあります。

「参議院に意味はあるのでしょうか。」

日本は「下院」にあたる衆議院と「上院」にあたる参議院の2つの議会からなる「二院制」の国です。
実は、世界的には二院制の国より一院制の国のほうが多いのです。そんな中、日本が二院制をとって参議院を維持する必要はあるのでしょうか。それを考えるためには、「上院」(日本でいう参議院)にどのような種類があるか、そしてそれぞれどのような役割を期待されているかを知る必要があります。


1. 世界の上院ってどんなの?

世界の上院を分類すると、大きく3つのタイプがあります。


①貴族院型

 貴族院型の代表例は、イギリスの貴族院です。中世以来の伝統的な貴族や「一代貴族」が議員となり、非民主的な上院として機能しています。カナダ元老院も同じ貴族院型ですが、貴族ではなく一定額以上の資産を有している人物が、首相に推薦され議員になります(岩崎、2013)。
 貴族院型上院は、直接選挙に拠らない上院のことを指します。選挙によらないことで、その時々の民意に流されず、慎重に腰を据えた議論ができるのが特徴です。しかし他方、民主的でない上院が、民主的な下院の決定に文句をつけたり、法案成立を遅らせたりすることに対して、多くの批判があることも事実です。

②連邦制型

 連邦制型の上院の典型例は、アメリカでしょう。各州が集まって作る一つの集団のことを連邦といいますが、どんな大きさの州であれ、上院においては平等に2人が代表するという、各州対等を前提とした連邦制らしい議会となっています。
 連邦制型上院は、国民全体を代表する下院に対し、各州の利益や立場を代表する機関として設置されます。実際、連邦制をとる国のほとんどが、二院制を採用しています。

③民主的第二次院型

 これを極めたのがイタリアの上院です。連邦制型のように各州ごとに選挙されるのですが、議員数は州の人口ごとに大きく違うので連邦制型ではありません。普通このタイプの上院であっても、権限や選出方法にある程度違いはつけるのですが、イタリアでは選挙制度も権限も下院と全く同じ設計。ここまで対等にしているのは珍しいです。
 民主的第二次院は、上院であっても下院と同様に国民から選挙されます。一方で、立候補できる年齢を高めたり、下院より任期を高め解散をなくすなど、いろいろな形で下院との差別化が図られている例がほとんどです。


2. 二院制の歴史

 二院制はそもそも、イギリスで始まりました。最初は貴族や騎士と言ったそれぞれの身分を代表する議会だったのですが、20世紀に入り労働者含め大多数の国民が庶民院議員への投票権を持つようになると、下院である庶民院により権限をもたせるように制度や慣例が変容していき、「貴族」院といっても社会の上層を代表する「身分の院」ではなく、庶民院の判断を補完する「チェック機関」としての役割を強めることになりました。
 イギリス以外の国でも、イギリスを見習い二院制を取る国が増えていきます。アメリカは独立時、母国の伝統に従い二院制を採用しました。近代化によって議会を開かざるを得なくなったヨーロッパ諸王国も、国王の言いなりになりにくい国民代表の下院の歯止め役として、貴族や国王支持派による上院を導入します。各国が憲法を制定し、議会を開設する過程で、二院制は広がっていきました。


3.日本の参議院はどんな感じ?

3.1 日本の参議院は、民主的第二次院型
 日本の参議院は上院の3分類のうち、③民主的第二次院型に当たります。参議院は都道府県で選挙区を分けていますが、参議院議員は各都道府県を代表しているわけではなく、あくまで「全国民を代表する」(憲法第43条)議員です。両院とも同じような選挙制度を採用する一方、衆議院の一部権限が参議院より大きかったり、議員になれる年齢が参議院の方が高かったりと、選挙制度以外の部分で差別化を図っています。
 ところで、自民党の憲法改正推進本部が2018年に了承したいわゆる「改憲4項目」の一つに、参議院の合区解消というものがあります(1)。一票の格差是正のため、2つの都道府県で一つの選挙区を構成する「合区」ですが、この解消のために新条文案は、都道府県を選挙区とする場合、「各選挙区において少なくとも1人を選挙(2)」することができるとします。自治体を選出の基礎とする点で現在よりは「②連邦制型」に近づきますが、一方で各自治体から選出される数が違う以上、依然として③民主的第二次院型の一種であると言えるでしょう。

3.2 参議院に期待されていることと日本の歴史

 日本には大日本帝国憲法の時代に貴族院という上院があり、戦後の日本国憲法でも参議院を上院とする二院制が定められます。日本国憲法の起草当時、GHQは一院制の憲法草案を日本政府に提示しましたが、日本側が強く反発し二院制導入を認めさせたという有名なエピソードがあります。
 どうして日本政府は二院制にこだわったのか?
 当時の政府は多数党の横暴や党の利益のみを考えた国会運営を防止するためと説明しています。


 ほかにも、

・衆議院と違う時期や方法によって選出されることでより多様な民意を代表できる
・2度審議することでより慎重な議論を期待できる
・数を代表する下院(衆議院)とは違って工夫次第で国民の良識や理性を代表できる


など、参議院のメリットは学者からも多く挙げられています。


 こういった考え方・理想を意識してか、参議院を衆議院と差別化し、独自色を出そうとする動きは早くからありました。そもそも帝国政府が最初、独自に作った新憲法草案では、参議院議員は選挙されるだけでなく、政府が任命することもできるようになっていました。GHQによって参議院議員の政府任命はなくなったものの、日本国憲法を審議した衆議院は「参議院は、衆議院と同様に国民を代表する選挙された議員により構成されるといっても、衆議院と同じような組織になってしまっては参議院の意義が無駄になってしまう。これに注意し、参議院議員には社会やいろんな職業で知識経験を培った人がなりやすいように工夫すべき(3)」と言う意見を議決しました。
 一般国民の代表者たる衆議院議員とは違い、高い知見や専門性を有した人物が参議院議員となり、衆議院のチェックをすべき。このような考え方は、貴族院型の参議院を理想としていると言えるでしょう。発足した参議院は、初期は確かに多くの無所属議員が在籍し、政府にも是々非々で対応していました。発足時参議院議員は250人いましたが、第一回選挙で当選した無所属議員は111人。政党で最も多かった社会党でも47人であったことを考えると、いかに無所属議員が多かったかがわかると思います。

 しかし参議院にも徐々に政党が進出します。1950年代半ばには、自民党が参議院で単独過半数を達成しました。選挙制度も個人より政党が有利なものに変化。さらに1990年代の選挙制度改革で衆議院にも比例代表制が導入されると、両院はますます同質化します。衆議院が憲法草案を審議した際に抱いていた懸念が現実化したのです。


3.3 参議院への批判

 現在の参議院に対する批判は、主に二種類あります。一つは参議院が衆議院とほぼ違いがなく、存在意義が薄いという「カーボンコピー」論です。これは衆参でともに与党が過半数を握っているとき、参議院は衆議院の決定を追認する機関に成り下がっているのではないか、と批判する意見です。かつて日本国憲法を作ったときの衆議院の意見と重なります。
 もう一つは、衆議院と参議院で多数派を形成する政党が異なる「ねじれ国会」のときに、参議院が国政全体をストップさせてしまっているという「強すぎる参議院」論です。参議院で与党が過半数を取れていないねじれ状態にあるとき、重要な法案や予算を参議院が否決してしまうことで、スピード感ある決定がされず、国政が停滞することを批判したものです。


まとめ


 世界には3種類の上院があり、それぞれに意義や歴史を持ち、多様な長所、短所があります。民主的第二次院である日本の参議院は、慎重な議論や多様な民意の反映を意義としていますが、本当にそういった役割が果たせているのかという疑問、あるいはそもそも参議院の必要性自体も問われています。自民党が公約に掲げるように、参議院改革はこれからの議題となりうる課題です。これからニュースの中で参議院についての議論を聞いたときは、今回ご紹介した基礎知識を思い出してみてください。


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【参考文献】
阿部竹松(2013)「アメリカ憲法」成文堂.
岩崎美紀子(2013)「二院制議会の比較政治学:上院の役割を中心に」岩波書店.
加藤紘捷(2015) 「概説イギリス憲法 : 由来・展開そして EU 法との相克」勁草書房.
竹中治堅(2010)「参議院とは何か:1947~2010」中央公論新社.
田中稔彦ほか(2012)「憲法Ⅱ」有斐閣.
田中嘉彦(2003)「二院制をめぐる論点」,『Issue Brief』429,国立国会図書館.
【文中注】
(1)日本経済新聞「自民改憲本部、合区解消案を了承 改憲4項目で初」(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26989770W8A210C1EAF000/)2018年2月16日
(2)産経新聞「【自民党大会】「改憲4項目」条文素案全文」(https://www.sankei.com/politics/news/180325/plt1803250054-n2.html)2018年3月25日
(3)衆議院帝国憲法改正案委員会議録第二十一回(http://teikokugikai-i.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/090/1440/main.html)1946年8月21日
原文は議事録末尾の附帯決議第三に掲載
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