国際女性デー&女性史月間グローバルスポーツ・バスケ界のアクション紹介
<Her Pivot コラム寄稿>
毎年3月8日の国際女性デーは、「女性の貢献と活躍を称え、ジェンダー平等を目指す日」とされていますが、米国では3月全体が「女性史月間」として活発な発信が続きます。
私が代表を務める Next Big Pivot という団体が主催するスポーツビジネス界での女性活躍推進活動「Her Pivotプロジェクト」では、3月24日に初開催となる "Her Pivotフォーラム”をオンラインで実施しましたが、新年度初回の Her Pivot コラムは、国際女性デーを含む女性史月間に世界スポーツ界がどのような発信や活動をしていたか、についていくつか発信や活動を紹介したいと思います。
このコラムは「Her Pivotプロジェクト」の一環として、Her Pivot マガジンに寄稿するものです。(過去のHer Pivot マガジン記事も是非こちらから)
世界の潮流
個人的な感覚では、欧米で女性の活躍を応援する動きが最高潮に達したのは、2~3年前くらい、欧州サッカー界やブランドが女性サッカーを一斉にものすごい勢いで応援し、助成金は女性スポーツ対象のものが急激に増え、男性の著名プロスポーツ選手も次々と女性活躍支援のメッセージを発信し始めました。もちろん、それまでも女性活躍支援の動きはあって、日本とは比較にならないくらいその重要性は認識されていましたが、その本気度とものすごい勢いを感じました。
「スポーツ界の女性活躍支援」といってもいくつか切り口があり、例えば「Her Pivotプロジェクト」がスポーツ”ビジネス”界で働く女性を応援するプロジェクトです。でも世の中の大きな流れとしては、女性スポーツ選手への支援や女の子へのスポーツ機会提供という切り口も多いです。どれも大切ですが、わかりやすいのはやはり女性スポーツ選手の支援で、「女性スポーツのメディア露出はスポーツ全体のたった4%。協賛金額では、女性スポーツへの投資はたったの1%。」というデータもあったりします。昨年のNCAA Final Four では、女子選手用のトレーニングルームの機材が男子選手用に比べてかなり不足していた点などが問題視されました。
そんななか、WNBAは2月上旬に女性スポーツ史上最高額となる7500万ドル(約92億円)の資金調達をしたと発表するなど、世界の本気の行動が形となったニュースもありました。
一般企業でも、海外では、トップリーダーは性別問わず毎年必ずジェンダー平等を訴求するメッセージを発信しており、今年はとくに「性差別はダメ」という意味を込めて腕を旨の前でバツにするメッセージが多かったように思います。
IOCの発信
さて、世界スポーツ界を統括するIOCは、3月のみならず、大会ごとに女性アスリートの割合を提示するなど随時ジェンダー平等を訴求していますが、今年の国際女性デーには、オリンピック大会の歴史をたどりながらの丁寧な発信をしています。
https://olympics.com/ioc/news/international-women-s-day-2022-celebrating-women-at-the-olympic-games
北京オリンピック大会期間中に報道された、橋本聖子東京2020大会組織委員会会長の「IOC女性とスポーツ賞2021」受賞についても、記憶に新しいニュースかと思います。
FIBAの女性活躍推進に対するコミット
FiBAの最高意思決定機関であるセントラルボードの2019-2023期の最重要項目3つのうち、ひとつは「女性活躍推進」です。私がこれを知ったのは、ある海外のオンラインイベントに登壇された事務総長からの直接の言葉だったのですが、素晴らしいのが、FIBAの他のスタッフに聞いても、みな同じ回答が返ってきて、組織としてゴールとコミットが共有されていることです。
実は今回、「Her Pivot フォーラム」を開催したのは、日本ではほとんど知られていないFIBAのこの女性活躍推進へのコミットを伝えたかったからなのですが、その女性活躍推進部門をリードする元WNBA選手、エリザベス・セブリアン氏に基調講演をお引き受け頂けたのは幸運でした。
その基調講演では、"Her World, Her Rules"という女子中学生を対象としてバスケットボールに触れる機会を提供するキャンペーンもご紹介頂きました。女性幹部の割合は3割を目指すのだそうですが、JBA(日本バスケットボール協会)の三屋会長もメンバーとして名を連ねるセントラルボードの女性比率は、正規役員13名中5名が女性で、38%とIOC基準の4割を達成する勢いです。
正規役員以外のメンバーは男性ばかりである点は、「スタッフは女性が半数近くだが役員レベルではまだこれから」とおっしゃっていた理由のひとつかもしれませんが、Her Pivotプロジェクトには、事務総長から直々に応援メッセージを頂いており、本当にありがたい限りです。
ご参考まで、FIBA事務総長から即答で頂いた応援メッセージは以下です。
「"Her Pivot" イニシアチブを応援するとともに、スポーツ・マネジメントにおける女性活躍支援の重要性を確信しています。バスケットボール界のあらゆる分野で女性の参加を増進することはFIBAの現在の戦略においても最重要事項です。」
NBAもさまざまな活動を展開
NBAも毎年さまざまな発信をしていて、SNSでのメッセージ発信はもちろん、クラブの女性スタッフを特集した映像を作成したり、8日の世界女性デーが過ぎても、3月一杯はジェンダー平等を謳う発信やイベントはかなり多いです。
もうすごすぎてすべて把握できていないのですが(苦笑)、今年の活動の中で印象的だったものを2つご紹介します。
1)地域の女性リーダーの表彰プログラムを実施したレイカーズ
表彰プログラムの実施は、社会的責任活動の中でも最も格が高い活動です。誰かを表彰するという行為は、高いレベルのリーダーシップ(地域からの信頼)と説明責任を果たすための努力と実力(地域への理解)が必要だからです。黒田さんのコラムでもご紹介頂きましたが、レイカーズは、3月のみならず、今シーズンは毎月各カテゴリーから1名ずつ選出し5名を表彰していました。地域からの推薦により表彰するのは運営上最も大変な手続きだと思いますが、コロナ禍にも関わらずそれに挑み、「ハーフタイムのコート上」で表彰するという最高の場も提供しています。
私がピストンズで働いていた時も(別の項目で)表彰プログラムを実施していて、幸いハーフタイム表彰のために熱気最高潮のコートに足を踏み入れた経験が一度だけありますが、表彰が素晴らしいのは、「社会によい行いをしている地域の人々を称える」ことにより、受賞者に勇気を与えるのみならず、地域全体を鼓舞しよりよい未来にリードすることができる点です。
今後日本のプロスポーツチームも実施できるようになると、地域での「存在意義」を示すのに有効なのではないでしょうか。
2)マジックの Gamechang(HERS) Summit
まずプログラム名がおしゃれですね。英語での女性活躍推進プロジェクト名に "Her" が入っているものは多く、"Her Pivotプロジェクト””もそのルールに従ったものです。
今年で2回目のようですが、地域の若い女性100名をご招待し、地域のプルスポーツに関わる女性トップリーダー等が勇気づけるセッションを4時間も(!)実施したそうです。ネットワーキングとマジックのホームゲーム観戦付きだなんて、素敵すぎる:)たぶん数名くらい感激して気絶してしまったものと思われます(笑)。
トピックの内容は、ネットワーキングの価値、リーダーシップに関する教訓、メンターの重要性、他の人や若者も鼓舞すること、など、内容的にも大変有意義なものだったことがわかります。
マジックの女性スタッフは全体の約半数を占めるそうで、バスケットボール運営部門(コーチ等)とビジネス部門(マーケティング等)のディレクターを務める方もいらっしゃるようです。
Bリーグも女性スタッフが半数を占めるクラブもあるようですので、今後是非多くのクラブが女性活躍推進活動を実施されることを期待しています!
八村塁選手のエージェントも女性活躍推進重視
黒田さんのコラムに、八村塁選手の女性活躍推進活動の紹介がありましたが、その背景には、彼のエージェント Wasserman (ワッサーマン)も女性活躍推進に注力していることも強く影響していると思います。
私が現在アドバイザリーボードを務めているオハイオ大学のメンバーの中にも同社のスタッフがいますが、2019年夏に "The Collective"という1億円規模のスポーツ界女性活躍推進イニシアチブを立ち上げています。
ツイッターでは先月を通して定期的に女性スタッフをひとりひとり紹介するなど丁寧な発信をしており、ブランド管理部門トップの女性は、女性活躍支援団体の「Women of the Year」に選出されたようです。
日本スポーツ界にも、八村選手のように女性活躍推進に積極的な男性リーダーも多数いらっしゃることは大変心強いです。Her PivotプロジェクトにもBリーグチェアマン島田慎二氏からも応援メッセージを頂いています。
「Bリーグの成長は、リーグやクラブで働く多くの女性の力によって支えられ、既に様々な場面で活躍していただいています。もちろんマーケットにおいても、多くの女性ファンのみなさまに支えられて、女性の力の重要性を実感しています。本プロジェクトを通じて、まだ足りていない女性活躍支援をいただき、スポーツビジネス界に携わる女性が更に自信を持って活躍できるよう応援いたします。」
また性別問わず、皆さんに活動のお力添えをお願いすることがあるかと思いますが、ご協力のほどどうぞよろしくお願いいたします。<m(__)m>
ジェンダーギャップ解消にあと99.5年かかる?
本当は、エンパワメントが必要なくなるくらい、ジェンダー平等が達成できる社会に早くなるとよいのですが、残念ながら、BBCによると、現在の進捗度であれば、完全なジェンダーパリティ(ジェンダー公正)達成までには、あと99.5年が必要と言われています。がっくりくる数字ですよね。。。
私も回答パネルとして参加させて頂いた Her Pivot フォーラムで、小学生からの「男性と比べて女性だから大変だったことはありますか」という質問に「(国際女性デーのある)3月が忙しくなること」と回答したのですが(笑)、少しでも早く、このような活動自体しなくてもよくなる日がくることを願いつつ、行動を続けたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。サポートいただけましたら、DV経験のある子どもたちのためのスポーツ活動に大切に使わせていただきます。