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世界の半分を占めるひとたち

私が男性をえがくとき、二次創作でない限り、彼らは舞台装置になってしまう。すべての登場人物は舞台装置だと言ってしまえば、それはそうかもしれないけれど、そうではなくて、ごく自然に男性をえがくということが、私にはどうもできない。

私は男の人が多い環境でずっと生きてきたし、男の人と交際しているし、弟もいるのだけど、男性、という、人口の約半分を占めるその人たちのことを、私はまったく別の生き物のように感じている……のだと思う。それはなぜなのか。

子どものころからひとつ、明確に、疑問視していることがある。それは、男の人にも私が持つのと同じような恋愛感情があるのかってこと。相手のことを考えると苦しくて、幸せで、涙が出そうなぐらいになにかを愛おしく思うような気持ちって、あるのかってこと。

そりゃ、あるんだろう。男女のカップルはいっぱいいるんだし。私だって男の人と交際してるし。頭ではわかってる。

女の子にそういう感情があるのは、ごく自然にイメージができる。私と他人はちがうから、もしかすると世界の誰も私とおんなじ感情を恋愛感情とは呼んでいないのかもしれないけれど、ともかく想像できる。でも、男性がそれを抱くということ、面白いぐらい想像できない。彼らにあるのは、種を撒き散らしたいという欲望ではないのか。わかってる。わかってるよ。それだけじゃないって。わかってるんだけど。この発言はきっとひどいことだって私はわかってるんだけど。知り合いの誰それさんに、お前は種を撒き散らしたいだけだろ!と言いたいわけでは全然ない。そんなこと思ってないよ。でも。ごめん、怒らないで、ここまできたら最後まで読んで。

男性というものをあんまりうまくイメージできない。恋愛以外でもきっといっぱいわからないことがある。だから私が創作をするとき、自然に思い浮かぶキャラクターは全員当たり前のように女性で、あまりにも女ばかりで不自然だな、と思ったときに、バランス調整のような気持ちで男性を投入する。そもそも私の描く世界には女しかいらない、というような気持ちになることもある。それは男が嫌いとか、あるいは女の子がいっぱいの百合創作がしたいとか、そういう話じゃなくて……。

ひとり、あるいは女だけで歩く道と比べて、男性と一緒に歩く道の歩きやすさ。誰も加害してこない。加害っていうのは例えば、しつこいナンパとか、性的な声掛け、痴漢、暴言、ぶつかってくる、腕を掴んでくる、とか。男の人とふたりなら、そういうことは起こらない。安心できる。それは良いことだけど、同時に、女はこうして生涯男の庇護を受け続けなければならないのか、女は、女は女だけで行動することも、ままならないのかという気持ちになる。男がいなくたって女は、女は自分の足で立って、自分の手で未来を切り開いていけるはずだ。せめて私の創作物の中では、女だけで世界を構成したって、何も問題はないはずだ。

加害も被害も、すべて女の中だけで完結しているとき、私はそれを「女の敵は女」だとは思わずに、1対1の人間同士の出来事だと思える。でも、男性から(特に、見知らぬ男性から)加害を受けた時、私はそうやって1対1の出来事だとは全然思えない。これは社会に蔓延る男と女の対立だと、この痛み、苦しみ、そういったものは「男」という生き物からもたらされるのだと、つい、そう考えてしまう。それは認知の歪みなのかもしれない。すべての男性がそうじゃないのは知ってるよ。でもそうじゃない。そういうことじゃないんだよ! 大声で叫びたくなるぐらい、そういうことじゃない……ところで、何がそういうことじゃないんだ?

私は男性嫌悪の自覚って全然なくて、男友達だっているし、恋人だって男性だし、種を撒き散らすなんて表現はしたけど別に性嫌悪もないし、男性だから嫌いということは、全然ない……と思うんだけど、実はそんなことないんだろうね。私は親しい男性のことを、「男」だと思っていなくて、「〇〇さん」だと思っている気がする。そりゃ、すべての人は男とか女とかの代表じゃなくて〇〇さんだけど、でもやっぱり男とか女とかのひとりではあるのだから、男とか女とかも少しは考えるべきなのかもしれない。

私は男性のことを全然知らない。知ろうとしてこないで、こういうものだからって思って、ひどいことをされても諦めて、されなければ特別な人だと、〇〇さんだと思った。それって、あまりよくないね。人のよくない部分を「男」だと思って、よいところを「〇〇さん」だと捉えるのは、明確に性差別だ。私は私の頭の中に浮かぶ「男」が嫌い。それは例外なく加害者の顔をしている。私の弟や恋人や友人だって「男」であることから目を背けて、加害者の集合だけを「男」として見ている。それはきっと、ずっと小さなころから……やっと気がついた。22年とちょうど5ヶ月、今日、この文章を書いたときにやっと。

今からでも、この世界の約半分を占める、男という人たちのことを知りたい。

私たち女と同じ人間だということを、知りたい。

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