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関電の顧問が復活!

関電の顧問が4人に増えて、報酬も増額しています。しかもカルテルなどの不祥事の責任をとって報酬減額の処分を受けた取締役が顧問に。これは新たな報酬の隠れ補填ではないでしょうか。


処分を受けた取締役が顧問に

4月30日、関西電力(以下関電)は、稲田浩二取締役と松村幹雄執行役は6月末に退任後に顧問になると発表しました。
稲田浩二(当時)副社長はカルテルの責任をとって、月額報酬の50%、2ヶ月分減額。松村幹雄(当時)副社長は、顧客名簿不正閲覧の責任をとって50%、3ヶ月分減額処分されていました。なぜ不祥事の責任があるとされた役員らが顧問になるのかと6月末の株主総会に事前質問を出しましたが、まともな回答はありませんでした。

顧問の人数さえわからなかった

関電の顧問に関しては、過去にいろいろな問題がありました。2019年以前は、株主総会で顧問のことを聞いても名前はもちろん人数さえ答えませんでした。
2015年、関電2度目の電気料金値上げ審査の会議で、松村敏弘委員(*1)の要請でようやく「第20回のご質問への回答について」(資料4)(2015年2月2日第21回総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電気料金審査専門小委員会)が出てきて、関電の顧問の人数やその特別待遇ぶりが明らかになりました。

14名から7名に

以下の表をみると、2012年の申請時には14名いた顧問を半分の7名にしています。一人当たりの平均報酬額も減っていますが、顧問秘書の人数3人、顧問執務室4部屋、顧問社用車4台という待遇は変わっていませんでした。

https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denki_ryokin/pdf/021_04_00.pdf


表−1 「第20回のご質問への回答について」より

こんな経営状態でそれでも報酬が欲しい顧問がいるのか

審議会の委員たちから顧問制度をやめろといわれて「顧問料とかそういうようなものの類いに関しては必要だと思っているので、査定にかかわらず払う。これは経営全般の効率化で吸収する」と八木(当時)社長が回答。説明のために示された資料がこれでした。
これをみた松村委員からは、赤字決算が続いて2度目の値上げ申請をしている関電に、それでも報酬がほしいという顧問がいるのかと追求しましたが、それでも顧問はやめない、料金原価には参入しない、経営努力で吸収すると関電は回答しました。
2度目の料金値上げ申請の第1回の会合では八木(当時)社長、2回目からは岩根(当時)副社長が出席して答弁していました。この2人は共に2019年秋に発覚する高浜町元助役からの不正金品還流事件で、不正金品を受け取っていました。

取締役報酬の隠れ補填が発覚

2019年、不正マネー還流事件発覚時に八木は会長、岩根が社長になっていましたが、どちらも辞任に追い込まれました。そして第三者調査委員会の報告で、新たな不正が発覚。それが「取締役報酬の隠れ補填」でした。
先ほど示した 表−1 電気料金審査の資料の上の部分をみると、取締役報酬をH27(2015)年1月から平均1800万円にまで下げたことがわかります。1度目の値上げ認可時の査定で平均1800万円まで下げると約束していたにも関わらず、2度目の値上げ申請時点の2015年1月になってようやくひとり平均1800万円にまで下げたのです。最初の値上げ申請の認可を受けた時点から3年間の平均値で1800万円にするというのが約束だったのではないか、3年間平均で1800万円になるようにもっと報酬額を下げるようにと委員やオブザーバーたちから何度も指摘されたのですが、関電はこれ以上の取締役報酬の減額に抵抗したのでした。
それなのに、裏では顧問とかエグゼクティブディレクターとかいろいろ肩書きはあったようですが、取締役を辞めたあとで報酬を補填までしていたことがわかって、わたしは驚き呆れました。

顧問という隠れみの

つまり「顧問」という立場を隠れみのにして、消費者と約束した報酬の減額を行わず、自分達の減額分の報酬を隠れて確保していたのです。
高浜町元助役からの億を超える金品受領があまりにも衝撃的なスキャンダルだったので、取締役報酬の隠れ補填の不正はあまり注目されずに終わってしまったのですが、これは消費者への裏切り行為であり、決して許されることではありません。

刑事告発されるも不起訴不当で強制起訴にはならず

隠れ補填に関わった元取締役たちは刑事告発され、検察審査会の審査で1度目は「起訴相当」となったのですが、2度目の審査で「起訴議決に至らない」となり、強制起訴には至りませんでした。
現在、関電株主が株主代表訴訟で関電と一緒に元取締役たちと戦っています。*2

顧問は2人に、報酬も開示

取締役報酬隠れ補填事件が発覚すると、関電の顧問はようやくふたりになり、名前も報酬も開示されるようになり、報酬金額もかなり減額されました。ところが2024年6月最新のコーポレートガバナンス報告書P11をみると、顧問が4人に増え、報酬も高額になっています。(タイトル画像)
https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20240628540723/

新たな取締役報酬の隠れ補填ではないのか

2015年に示された表−1の数字と今回の報告書の数字を比べてみると、顧問の人数は7人から4人に減ったものの、顧問報酬総額は7人で4000万円程度だったものが、今回は4人で総額3720万円であまり変わらなくなっていて、1人あたりの報酬は大幅に増額しています。しかもカルテルなどの処分で報酬を減額された役員が顧問になっており、これは新たな取締役報酬の隠れ補填ではないでしょうか。

関電は今すぐ顧問制度をやめなさい!

*1 松村 敏弘(まつむら としひろ)東京大学社会科学研究所教授。松村委員の2015年の電気料金審査会での関電への厳しい意見を議事録からの抜き書きで紹介します。これほどの指摘を受けながら、それでも3年間平均で査定額の1800万円にまで取締役報酬を減額しなかった関電が、隠れ補填までしていた。それを知った上で、改めて審査会での松村委員の発言を振り返ると、関電がどこまで消費者を馬鹿にしている会社なのかよくわかります。
 「役員報酬なんて自分たちの意思ですぐにできること。それを未達のまま放置 するということをしておきながら、消費者に対して懇切丁寧に説明すると いうこととどれぐらいコンシステントなのかということを消費者は見きわめられると思います」
「役員報酬に関しては、もはや3年平均で達成する気がないことは、もうこれ以上明確にしようがないほど明確に出していただいた。…公聴会でこ れだけ非難を受けたにもかかわらず、なお今日こういう資料を出してきて、3年平均で達成する気はないということを文書で出し、更にもう一回 ダメ押しで口頭でも回答いただいた。ここまで消費者の声を無視して、か たくなに役員報酬を守ろうとする関電に対して、この委員会では役員給与をいくらにせよということは言えないので、もうこの委員会でできることはないと思います」
「経営報酬というのものを役所の幹部並みにするなどという のは経営判断上絶対にできないことであり、不可能なことであり、極めて困難なことだということ、そういう判断をしている会社であり、したがって、 不可能だとか、できないだとか、極めて難しいだとかというのは、そういう程度の意味しかないのだということを全国民に知らせてくれたのは意味があること」

*2 関電株主代表訴訟について詳しいことは以下のHPをご覧ください。


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