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土地を買いに行っているんやない。こころを買いに行くんや!

NHKドキュメンタリー’90「原発立地はこうして進む=奥能登土地攻防戦」より

原発を止めてくれてありがとう

今年のお正月、能登地震が起き、地震の揺れだけではなく、津波、地盤隆起、がけ崩れ、液状化など深刻な被害がでました。道路の寸断、水道管の破裂など、半年たった今もまだまだ復興が進んでいません。
震源近くの珠洲市高屋でかつて関電が原発を作ろうと暗躍していたことが報道されました。計画は凍結されましたが、もし原発ができて動いていて、今回の地震に遭っていたら、福島原発事故以上の過酷事故が起こって、避難もままならず、大変なことになっていたのではないか。「珠洲の皆さんたちが原発計画を止めてくれて本当によかった」「ありがとう」の声が原発反対運動を続けてきた人たちに届いています。

人のこころを買いに行くんや

7月2日「能登地震と原発」という集会が衆議院第2議員会館であり、1990年に放送されたNHKドキュメンタリー「原発立地はこうして進む=奥能登土地攻防戦」という番組が紹介されました。
この番組では、関電が原発の土地を買ってしまうと「まだ立地可能性調査段階なのに」と言われてしまうので、地元の人たちを回って土地の賃貸借契約を結ぶように説得してまわっていることが描かれています。5年とか10年の期限で土地をあくまで借りるということで借地代を払う。契約書を見ると契約期間内にはだれにも土地を売却しないことが約束されていて、地主から契約解除をすることは契約項目に入っていない。そんなゆがんだ賃貸借契約を結んでもらうために地域を回っている関電社員が衝撃発言をします。
「われわれは土地を買いに行くんやない。人のこころを買いに行くんや」「土地とかそういうものは後からついて回ってくるもんやから、まずは人のこころを買う」。
34年前、この番組を見た時、原発を立地するということは人のこころに入り込み、家族や地域のつながりを分断し、疑心暗鬼に陥れること。住民からみれば、関電に土地を売ることはまさに悪魔に「こころを売る」ことなんだと思い、背筋がぞっとしたことを覚えています。

2003年 珠洲原発計画凍結

この番組が報道されたのが1990年5月。2003年12月に電力会社が原発計画の凍結を申し入れるまでの13年間
珠洲ではさまざまな原発反対運動がくり続けられ、原発推進勢力は強引なやり方を進め、関電は暗躍を続けていました。

珠洲市長選挙で票が合わなくなって

1993年、珠洲市市長選挙で原発推進の林幹人が当選するのですが、投票した人数より投票の票数が16票も多くなってしまったのです。原発反対の人たちは選挙で不正があったとして市長選のやり直しを求めて裁判を提訴しました。裁判で原発反対派は勝利し、1996年には市長選のやり直しが行われますが、原発推進の市長が当選してしまいます。その経過は以下の北野進さんのブログに詳しいです。

関電と原発 不正マネーの歴史

関電は珠洲原発立地のための土地買収で不正行為を続けていました。上の記事には、珠洲市高屋の大地主、横浜の医師が関電に土地を売ったのに、複数のゼネコンを通して、貸借契約のようにみせかけ、税金を逃れようとしたとして所得税法違反に問われた事件のことが書かれています。
この事件を朝日新聞が初めて報じたのは1999年の10月でした。(タイトル画像)横浜地裁で裁判は行われ、関電社員も証言したとこの記事にはあります。この裁判を何度か傍聴しました。残念ながら関電社員の証言は傍聴できませんでしたが、自分の利益のためではなく、関電に頼まれて、不正な土地取引に応じたのだと主張する大地主の姿が「こころを買うてるんや」という関電社員の発言と重なり、哀れさえ感じました。(甘い!と怒られそうですけど)
その後、この大地主は執行猶予付きながら有罪になります。
そして、2003年12月、関電、北陸電力、中部電力は珠洲市に原発計画の凍結を申し入れました。

関電不正マネー還流スキャンダル

2017年には、元高浜町助役から多額の金品が関電取締役らに渡ったことが明らかになり、関電の大スキャンダル事件に発展しました。当時の社長、会長は辞任、新しい体制になるも、その後も次から次へと関電の不正が明らかになり、辞任の連鎖が続きました。
原発というものが、立地段階から再稼働に至るまで、いかに不正まみれなのかが、白日のもとにさらされました。
そしてこのお正月の能登地震、本当に珠洲に原発ができなくてよかったと実感しました。能登だけではない、日本中の人々が救われました。
珠洲原発を阻止するためにたたかってくださったみなさんには感謝しかありません!!

珠洲のみなさん!能登のみなさん!原発を止めてくれて本当にありがとうございました

*1 7月1日、岸田首相は能登に視察に行きましたが、その同じ日に東京に帰ってきて、経済界の重鎮たちといっしょにホテルニューオータニで豪華な和食ディナーを楽しんだと報じされました。一緒に食事をしたメンバーには、榊原定征関電会長と小林喜光東電会長も含まれていました。
また、西村元経産大臣が宴席で「珠洲原発を建設していれば、地域も発展して金沢市から2時間半もかかる過疎の町にはならなかった」という趣旨の話を自慢げにうそぶいていたという報道もありました。
一方で「珠洲の避難所では1日一食の弁当しか提供されなくなった」という X(旧Twitter)の post がありました。
心ない政治家、経済界の重鎮の発言、態度には呆れるばかりです。原子力ムラの人たちは、本当にこころを売り渡しているんだとおもいます。

*2 NHKドキュメンタリー’90「原発立地はこうして進む=奥能登土地攻防戦」 は NHKアーカイブスでみることはできません。横浜の放送ライブラリーでみることができます。
♦︎ 制作:池成啓、撮影:土屋裕重、効果:佐藤彰、編集:鈴木良子、構成:七沢潔、音声:栗原正和、取材:日置一太
♦︎ 原子力発電所立地のための可能性調査の段階から始まっている住民と電力会社側との攻防を土地という観点からさぐったドキュメンタリー。
♦︎ 能登半島突端の石川県珠洲市。人口2万6千人足らず、これといった産業のない典型的な過疎の市で、財政難を打開するため10数年前から原発の誘致を始めた。能登半島は中部・関西圏の将来の電源地帯とされ、既に北陸電力の志賀原発が建設中、珠洲市は寺家、高屋の2地区が候補地となった。関西電力は高屋地区に10年前から住みこみの担当者を派遣し、土地賃貸借契約金の前払いを説得材料に用地買収のための借地権交渉を進める。住民は居住地が候補地とされたことを重要視し、個別交渉阻止のために共有地をつくって対抗する。
♦︎「地方の時代」映像祭1990優秀賞、日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞(1990年奨励賞)受賞

*3 関電の不正マネー還流事件については
ブックレットが出ています。
「関西電力 原発マネースキャンダル ~利権構造が生み出した闇の真相とは~」
著者:末田一秀 発行:図書出版南方新社  1000円 +税

*4 7月2日 能登と原発 院内集会
主催 能登現状報告会実行委員会
共催 NNATURE & HUMANS JAPAN 
動画配信 【アーカイブ】「能登半島と原発」院内集会
OurPlanet-TV

*5 いろいろな関電不正について、noteに書いています。


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