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詩: 秋の日


うつくしい秋の日に
あれこれ思い出して笑う
金色の光に包まれて
これがさいごの日でも
よいと思えてくるような

いつまでも生きる習慣と
いつ死ぬかわからない覚悟を
いっぺんに持ちながら
生きようとして
振り子のように
永遠の野心と瞬間の享楽の間を
揺れ続けた

まっすぐに振り子を下ろして
立とうとしたとき
わたしは気づいた

わたしの仕事は
だれかが引き継ぐ
おわりの日のノートに
切々と書き留める言葉には
何の価値もない
家族をどんなに抱きしめても
本当に表現したかった愛には
決して至らず
あきらめるしかないことに

いまを生きるとは
そんなふうに ふっつりと
不完全におわる人生を
受け入れることなのだと

秋の日に
青い空を広げて
わたしの遺書を書く



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