見出し画像

詩: 春風怪談


幽霊を感じるような
こわい思いをしたことがない
だから怪談はできないと思っていたのに

ふと、思い出した
わたしが夜中に立っていたこと

よなよな、母の枕辺に座り
「(ある芸人)が気に食わない」
「あれは人相のよくない顔をしている」
「早くいなくなればいい」
「明日のお弁当に、蜜柑を入れて」

わたしは会話を覚えておらず
夜中に起きた自覚もなく
お弁当の蜜柑を、まったく気にもとめず
あとになって母から聞いて
夢遊病だったと知る

たぶんこの世には
たたる側とたたられる側がいて
わたしはたたる側




*****
すみません、投稿してから(ある芸人)のところを伏せました。今日まで知りませんでしたが後日、自死された方でした。ぞっとしました。


お読みいただき、どうもありがとうございました!それだけで十分に嬉しいです。 もしもサポートをいただいたときは、ほかの方の詩集に、そして私が詩を書いている日々のノート(440円)に使わせていただきます♪