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GDPは嘘を付くがトイレは嘘を付かない

エマニュエル・トッドっていうフランスの統計学者さんを知ってるかなぁ?
日本でもちょくちょく本を出してるので知ってる人も多いんじゃないだろうか。
さてこの人が何をしたかっていうと、まだソ連がイケイケだった70年代に、

「乳児死亡率が上がり続けてるからこの超大国オワコンじゃね? 滅びるよ?」

と予想したら本当にその通りになったので一躍スター学者になった人だ。
めっちゃ雑に彼の主張を要約すると、

「経済に関する数字なんていくらでも誤魔化せるからアテにならん。そんなものより乳児死亡率とか平均寿命とか出生率とか自殺率とか、命に関する数字を見た方がその国の本当の国力がわかるぞ!」

といった感じ。
まあ、言われてみれば当然かもしれない。

国民が命を削ってまでGDPを引き上げている国の経済力はハリボテなので、いずれ傾く

ということ。
1970年代のソ連がそれだったし、2000年代の日本もそうだった。あの頃の日本は一人あたりGDPこそ世界トップクラスだったが、自殺率がべらぼうに高く出生率は低かった。するとどうなっただろう? 不況を抜け出せないままどんどん経済力を落としていき、自慢の技術力も新興国に追いつかれてしまった。
で、追いついた新興国である韓国もちょっと前の日本とよく似ていて、出生率と自殺率が酷いことになっている。いずれ調子を落としていくはずだ。

忙しすぎて子供を産めない、競争が激しすぎて自殺したくなる、でもGDPだけは高い状態……それって要するに国力の前借りなんだろう。
バトル漫画でたまに見かける、命と引き換えに限界以上の力を引き出すアレだ。フィクションの世界なら技の反動で倒れた主人公は仙豆や念能力やヒロインの涙であっさり回復するが、現実世界はそうもいかない。長い年月をかけて「生きやすい国」に作り直さなければならない。
「稼げる国」を第一目標にするのではなく、「生きやすい国」にするのが重要である。
というか、人々が長生きできて子供をたくさん産めて自殺なんか考えないような国にしたら、自動的に経済力も上がるんだと思う。
富を生み出すのは人間なんだから、その人間を増やしたりメンテしたりするのをサボったら、どうやって裕福になるねんという話である。

人間の命や公衆衛生やインフラに関わる仕事をしている人達こそが「お金を稼ぐための社会基盤」を維持していて、経営者やコンサルタントなんかはその人達に依存してお金を稼がせてもらっているに過ぎない。
なのに賃金は前者より後者のグループの方が高い傾向にある。

経営コンサルタントが職場のウンチを片付けてくれたことがあるだろうか? 絶対にないはずだ。ウンチを放置したら病気が蔓延したり虫が湧いたり悪臭を放ったりして生産性が下がるのに、生産性という言葉が大好きなはずのコンサルタントは絶対にトイレ掃除をしない。低賃金で働く清掃パートのおばちゃんがゴシゴシ便器を擦ってるのが普通だ。
そして下水に流されたウンチは、やはり人並みの給料で働く下水処理施設のオジサン達が何とかしてくれている。そのオジサンの二歳になる息子のウンチは保育園の保母さんが一生懸命拭いている。保母さんの祖父のウンチは老人介護施設の人達が拭いている。

なぜ笑うんだい? 彼らの社会貢献は上手だよ?

ウンチを片付けることで国の生産性を維持してくれている素晴らしい人達だ。やれ年収だのGDPだの、経済に関わる指標ばかり見ているとこういうところがおざなりになってしまう。

これからはもう、その国が一年にどれくらい経済活動をしたかではなく、国中の便器がどれくらい綺麗になっているかで国力を計った方がいいかもしれない。そっちの方が確実に「暮らしやすさ」を反映してるはずだし。
国民総生産ならぬ国民総清掃である。裕福で教育を受けた国民ほどトイレを綺麗に使うので、かなり正確にその国を内情を推し測ることができる。
政情不安定な国のトイレはきっとかなりの確率でウンチまみれになっている。
荒れてる学校や潰れる飲食店なんかはよくトイレが汚いと言われるので、あながち暴論とは言えまい。

私が考案したこの経済理論を用いると、国家の未来を予想できる。
GDPは高いが公衆トイレは汚れてたり破壊されてたりする傾向にある国……つまりアメリカは政情不安が待ち受けているということだ。おそらく左派グローバリストと右派ポピュリストの対立は激化の一途を辿るだろう。
どんなにお金があろうとも、ウンチすら片付けられない国は何か問題を孕んでいるのである。




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