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【創作メモ】敵対者の造形について

 今回は一方的にお仕事絡みの創作メモを書き殴っていこうと思います。
 ちょっと私が自分の頭を整理する作業に付き合ってくださいね。

 さて小説で一番大切なキャラクターは何かというと、それはもちろん敵対者です。主人公と対立する人物が最も重要なのです。ちなみに敵対者は必ずしも邪悪な人物とは限りません。たとえば恋愛作品ならメインヒロインが敵対者になるからです。
 中々振り向いてくれないヒロインは「あの子と付き合いたい」という主人公の目的と対立していることになるため、敵対者として扱われるのです。だから一番大切なキャラクターは敵対者なんですね。だってラブコメではヒロインの魅力が命綱になりますし。

 敵対者は主人公より強ければ強いほど良いとされています。より手強くて賢くて経済力があって、とても勝てそうにない人物であるほど良いのです。そうすれば「どうやってこいつを攻略するんだろう?」と読者がワクワクしてくれますからね。続きが気になってページをめくる手が止まらなくなるのです。だからバトル作品の敵対者なら強大な戦闘力を持っている方がいいし、ラブコメ作品なら簡単には付き合えそうにない高嶺の花がいいわけですね。まあ普通に考えれば弱い者いじめをする主人公や、ぱっとしない異性と付き合う主人公なんて見たくないでしょうからね。

 なお私は今海外のシナリオライター向けの本を読みながらこの記事を書いているのですが……ふむふむ。 
 なんでも敵対者だと思っていたが実は味方だったキャラより、味方だと思っていたが実は敵対者だったキャラの方が良い仕事をするとされています。
 裏切り者の方が良い仕事をする? 
 どういうことだろうと思いましたが、ちょっと思考実験してみたら「確かに」となりましたね。
 実例をお見せしますね。
 私がこれまで挙げた要素、

  • 物語で一番大切なキャラは敵対者

  • 恋愛作品ならメインヒロインが敵対者

  • 敵対者は主人公より強力であるべき

  • 味方だと思っていたが実は敵対者だった人物は良い仕事をする

 を意識してストーリーを作ってみましょう。

 主人公は大学生の男の子。海外留学の夢を叶えるため、一生懸命カフェでアルバイトをしています。そのお店は美人の女性店長が取り仕切っていて、ずっと主人公の夢を応援してくれていました。
 ところがある日突然、店長は主人公をシフトに入れてくれなくなったのです。

「これじゃ俺、留学できないですよ」

 不満を口にすると、店長は今にも泣き出しそうな顔で言いました。

「だって、お金が貯まったら海外に行っちゃうんでしょ」

 きょとんとする主人公を抱きしめ、美人店長は耳元で囁くのです。「ずっと好きだったの。……日本にいてよ」
 店長は情熱的に腕を絡ませながら、「夢なんか捨てて、私と付き合って」と誘惑してくるのです。さあ盛り上がってきましたね。
 さっさとお金を溜めて海外留学したいという主人公の目的を、美人店長が「そんなことさせない。私の恋人になってずっと日本にいて」と妨害してくるわけです。主人公も店長に女性としての魅力を感じているため、凄まじい葛藤が生まれるわけですね。
 確かにこの裏切り者は良い仕事をしそうです。読者も「これからどうなるの?」という気持ちになるし、店長のことが気になってくるはずです。
 そして店長がまだ二十代で超美人でスタイル抜群で悪知恵が働いて……とスペックを盛れば盛るほどストーリーは加熱するわけですね。なんせ中々倒せない難敵ですからね。きっと予想もつかない過激な手段で誘惑してくるのでしょう。
 
 ちなみに敵対者は主人公と共通点が多ければ多いほど良く、物理的な距離も近ければ近いほど良いそうです。
 
まあ、サッカー少年のライバルがアイドルとか意味わかんないですからね。そこはやっぱ同じサッカー少年じゃないと対戦できないでしょうし。そしてたまにしか戦わない他校の選手より、同じ学校でポジション争いするライバルの方が話が盛り上がるわけですね。
 あと主人公とライバルが同じ部屋に閉じ込められるなんてシチュはめちゃくちゃ手に汗握る展開ってことになります。もはや生き残りを賭けて殺し合うしかない。読者はワクワクしながら続きを読みたがることでしょう。
 ……ん? そういえば「一つのポジションを奪い合うサッカー少年達を同じ建物に閉じ込めて競わせる」って設定の大ヒット漫画がありましたね。
 
 ブルーロック!
 

 ……あ~なるほど。売れるのも当然なわけですね。脚本作りの重要なポイントを抑えてますもんねー。
 
 恋愛、スポーツと来たのでお次は創作物の華、バトル作品の話をしましょうか。
 魅力的な敵対者の具体例ですが、主人公と同じ目的を持っているがより邪悪な手段で達成しようとしている人物、主人公を闇堕ちさせたような人物、そういう悪役が出てくるとストーリーに深みが増すそうです。どういうことでしょうね?

 たとえばENFJっぽい性格の、典型的な正義の味方の主人公で考えてみましょう。そんな主人公と共通点が多い悪役ということは、やはり正義の味方ということになります。 
 戦争ものなら敵国の高潔な軍人とかですね。ライバルキャラでありながら、彼もまた故郷や家族を守るために戦っている。明らかに悪人ではないのでこのライバルと戦うたびに主人公は苦悩していく……。ロボットアニメってこういう設定多いですよね。まあ王道の設定ってことですね。

 他には主人公より過激な手段で正義を実行しようとしている人物とか? 「弱者を踏みにじる文明など一度リセットした方がいい。何もかも壊してしまえ」的なことを言いながら暴れ回る敵キャラとかでしょうか。
 なんか私がたまに「血も涙もない資本主義なんて壊れちゃえ!」みたいな極論を展開してる時のノリと似てる気がするんですが……まさか私は闇堕ちしたENFJだったんですか??

 あとはなんでしょうね。闇堕ちした主人公のような悪役となると……。
「正義の味方の成れの果てが俺だ。何人助けたってこの世界は変わりはしない。どいつもこいつも俺を利用するだけだった。今はもう死ぬことだけを望んでいる」
 
と投げやりなセリフを吐きながら襲いかかってくるライバルとかですかね。裏切られ、利用され続けてやさぐれた正義の味方みたいな。
 Fateシリーズのエミヤがちょうどこんな感じでしたね。

 歪んだ正義の味方ってなると後はどんなパターンがあるでしょう? しかも主人公に苦悩を与えるような設定であればあるほど良いわけですが……。
 そうですね。自作自演で被害者を生み出しては助けている英雄とかどうでしょう?
 しかも味方だと思っていた人物が実は敵対者だったら話が盛り上がる……のパターンを入れてみましょうか。

 主人公が命の恩人だと思っていた人物が、裏では大量殺人を働き、毎回一人だけわざと生き残らせては「自分が助けたと言い振らしていた」と判明する。
 一連の自作自演がバレた瞬間、その闇落ちヒーローは主人公に向かって言い放つのです。

「だって、誰かに必要とされると気持ちいいじゃないか。お前もそうなんだろう? 被害者がいなければ英雄にはなれない。だったら自分で犯罪を生み出せばいい、それだけのことじゃないか。お前も今、俺みたいな悪人を見つけ出して内心喜んでるんじゃないか? 俺を倒せば皆に感謝してもらえるもんな? ほら、俺は今でもお前にとっては救世主のままだぞ」

 それでも命の恩人だから戦えない、と首を横に振る主人公に悪役はとどめの一撃を言うんですね。

「本当に見逃していいのか? お前は今、両親の仇と会話してるんだがな」

 ひっどい展開ですね。
 私の良心が疑われそうなやり取りじゃないですか。まあでもこのくらい邪悪な悪役が出た方がストーリーは盛り上がるのかもしれないですね……。

 ん~。
 次は女性向け作品について考えてみますかね。
 そういう作品ではやはり主人公よりハイスペックなイケメンヒーローと付き合うのが普通なわけですが、そのヒーローに主人公と共通点を持たせた方がいいってことになりますね。
 たとえば身分は全然違うけどお互い父親に愛されなかった心の傷があって、それゆえに惹かれ合うとか。
 実は二人とも身分制度に反対していて、内面は似た者同士だと判明するとか。
 他には何かあるかな……。
 う~ん。今時の女性向け作品ってあんまり女らしさを感じさせない主人公の方が好かれるんですよね。かといって完全に女扱いされないのは駄目で、「ちゃんと着飾ると可愛い」みたいな設定がついてたりするんですが。男に媚びたくないけど、かといって全く異性として意識されないのはやだ……という複雑な女心を感じますね。
 それなら中性的な性格タイプであるINTPの女の子をヒロインにしてみましょうか。

 舞台は近世ヨーロッパ風の世界で、主人公は辺境のお屋敷に住む貴族の女の子。磨けば光りそうな容姿の持ち主なのに、オシャレも花嫁修業もほっぽり出して錬金術にのめり込む毎日。 
 恋愛も結婚もどうでもいい、彼女は賢者の石を生み出したいだけ……。 
 ところがある日、政略結婚で隣国の王子に嫁ぐ羽目になってしまうのです。

(結婚したら錬金術ができなくなるじゃないか)

 主人公はどうすれば婚約破棄できるのか考える。
 そうだ、その王子とやらの前で思いっきり変な実験を行なってみよう。そしたら嫌われるはずだ。
 というわけで嫁いだその日のうちにフラスコと試験管を引っ張り出して異臭を放つ薬品を調合したり、禍々しい色の宝石を錬成したり。
 さあこれで育ちのいい王子さまは私を見限っただろうと仏頂面で佇んでいると、

「面白い」

 ……は? 何言ってんだこの王子? と顔を上げると、

「ちょうど我が国の課題は科学力だと思っていたんだ。面白い、実に面白いぞ」

 王子は目をキラキラさせて食いついてくる。
 な、なにこの人。美形でお金持ちなのに科学オタクなの!? やめてよ、私はずっと錬金術がしたいだけなのに……。
 嫌がる主人公に、

「もう君しか考えられない」

 と王子はぐいぐい迫ってきて、あの手この手で誘惑してくるようになるわけです。
 なんとか王子に嫌われようと変な実験をするたびに、余計に惚れてくるからもう私はどうすればいいんだ……!?

 ……って感じですかね。
 恋愛なんてどうでもいいのにモテちゃうんですけどー! 困っちゃうんですけどー! ってノリが大事です。これは読者の性別問わず内向的な人に刺さるポイントですね。
 逆に「モテたいからオシャレして自分から色んな異性に話しかけまくるわw」ってノリにしちゃうと小説を読む層にはめちゃくちゃ嫌われます。それが男ならチャラ男、女ならぶりっ子と呼ばれて悪役として扱われることになるでしょうね。
 
 さてさて、筆ならしが終わったので仕事に戻るとしますかね……。

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