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育休で会社に残される側にも向けられる視点

助産師 Beniです。
助産師として働く中で、社会全体が女性の身体のことを理解できたら、
考え方や仕組みがアップデートされて、女性がもっと生きやすくなると考え、
日々考えていることや伝えたいことを綴っています。

三井住友海上火災保険が今年の4月から、育休を取得した社員の同僚に最大10万円の一時金を支給する、と発表しました。
これは「育休職場応援手当」と名付けられており、事業所の人数や育休取得者が女性か男性かでも支給額が異なる、とのことではありますが、仕事の負担増を余儀なくされる社員に目を向けた試みとして、より一層広がって欲しい動きだと考えます。

これまで先輩や同僚、後輩が妊娠するたびに「すみません」という言葉を聞いてきました。
「妊娠はおめでたいことなんだし、すみませんなんて言わなくていいのに」と思っていた私自身も、自分の妊娠報告の時には「すみません」が必須ワードになっていました。
おそらくそれは、これまで目にしてきた、「大変な時はお互い様だよ」と表向きは声をかけつつも、その後に当の本人のいないところで開かれる「あー、これから大変になるね」どんよりモードの井戸端会議が容易に想像がついてしまったから、というのも理由の一つだと思います。
それに、あんまりにも妊娠の大変さを出しすぎたり、妊婦側の発言を間違えると、女の職場では陰で「妊婦様」と揶揄されることも見てきたことも影響しているかもしれません。

なんでこうなってしまうのでしょうか?

産休・育休で離れる=仕事の皺寄せがくるから。
つまり、残される側の自分が損をするのが目に見えているから。

だからこそ、残されて職場を支える側に支給する「育休職場応援手当」は、休む側への風当たりを軽くしてくれることが期待できます。
休む方も、送り出す方も得るものがある。
こんな制度がなくても互助の精神で成り立つことができたら最高だという意見もあるかもしれませんが、ここまで子どもが減っているこの社会でそこに期待をかけても埒が開かないと思うんです。

例えば、自社でそういった賃金を賄うことができない事業所のために、保険のような仕組みを作るのも一つだと思います。
従業員が産休・育休に入る時に、残る社員に給付できるお金の仕組みを作っておけば、いざ産休・育休を取得する社員が現れたときに慌てずに対応できるのでは、と考えます。
だって、起こるかどうかわからない事故や火災に対しては保険に入るのに、
ほぼ確実に起こるだろうし、むしろ少子化対策のためには起こってほしいと思う妊娠・出産に付随する人員不足に対しては丸腰で、その都度頭を抱えるなんて、ナンセンスではないでしょうか。
とはいえ、女性の権利として産む権利・産まない権利もあるし、そもそも結婚する・しない、事実婚、LGBTQという多様な生き方だってあるんですから、妊娠・出産を望む従業員のライフステージを支えるという点で決して突飛な案ではないと思うんですが。。。(専門家のご意見を聞いてみたいです。)

子どもが減れば、国力が落ちる。
近い将来、危機的な状況に陥ることが予想される日本の状況を改善するには
子どもを増やすことが必須です。
でも、安心して子どもを産み育てることができる環境がなければ、そこに踏み切ることは難しいです。
「安心して」には、一度職場を離れても戻る場所がある安心、だけでなく、自分が離れた後の職場が惨状にならない安心も含まれているように思います。

当事者へのサポートは大切ですが、子育て世代にしか届かない少子化対策だけでは他の世代から反発もあるでしょう。
子育て世代ではない層にも、少子化対策に乗り気になってもらう、そんな視点がこの「育休職場応援手当」に感じられます。

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