お茶漬け物語

手がむくんでかゆくて皮膚科に行ったら、しもやけとあかぎれで手が腫れ、一、二ヶ月かかると言う。しもやけは半世紀ぶりでなつかしく、小学一、二年の頃を思い出した。さあ、今夜は好きなお茶漬けの話を書きました。

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  お茶漬け物語

茶碗の底に二、三センチほどのご飯が残ったら開始である。椎茸昆布少し、刻みミブナ少し、カズノコわさび少しを載せ、熱い特製山野草茶を注ぎ、ゆっくりかき混ぜたら、そそくさと箸を斜めにして口に注ぎ入れる。その寸前まで食べていた食品にこの時点でやっと水分が行き渡って、水無し隙間に滋養水が染みるが如く、僕の胃袋が満足げに温かく満ちてくる。お茶漬け。これは僕にとってご飯の仕上げなのだ。だから最初からお茶漬けはしない。なんとか園のお茶漬けの素も使わない。ちょっとでも食べすぎると僕の身体は吸収効率が良いようで、すぐ太る。色々試してみたら、それなりにぽっちゃりお腹を目立たせないためには、ご飯を食べすぎないことが重要とわかった。夕食はお茶碗一杯、百五十グラムと決めた。だからお茶漬けの素で最初から一杯食べてしまったらその日のご飯がなくなるから、食べるスピードを落とし、お箸の先でご飯を少量づつすくい取るように口に運び、残り二、三センチになるのを根気よく待ち、おっと慌ててはいけない、要するに最後の二口くらいを残すのである。すると僕は一息ついて二ヤーとほくそ笑み、ちょっとここは見られたくないなとニヤ顔を隠すように上目使いになってから、やおら元気に嬉しくなり、お茶漬けの準備に取りかかる。と言っても一、二分で具材載せ完了し、熱いお茶と共に五臓六腑に染み渡るお茶漬けを楽しむのだ。ここで使う山野草茶は、スギナ、ドクダミ、カラスノエンドウ(一般には豆茶と言う)で作った自家製のお茶だ。毎年五月に山で採って来て作る。いずれも普通には雑草で皆の嫌われ者だが、それはそれは自然で美味しいお茶ができる。ネットで調べたらわかるがすごい効能だし、タダである。これを飲み出したらおーいお茶なんて飲めない。ただ準備は大変。それぞれ大きいビニール袋に満杯で採ってくると、ベランダに拡げたり、根元をくくって軒下に吊って干す。数日から一週間かけてカラカラに乾燥させたら、二〜五センチに切り、スギナとカラスノエンドウはフライパンで軽く炒って臭みを飛ばす。無論別々にである。ドクダミは炒らない。出来上がったらそれぞれカビが来ないように小袋に入れて保管するのだ。こうして完成した三種類、ほぼ同量づつ茶瓶に入れ、弱火で煮出す。強火だとドクダミの成分が壊れるので、この煮出しにも経験がいる。もう僕ところは二十年になる。こうして沸かしたお茶は電気ポットに入れて保温、いつでも飲めるようにしてある。山野草茶の説明が長くなったが、こうやって食事の最後に頂く僕のお茶漬け物語、今夜もこれで締めた。うまーい!

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