後部座席とスライドドア
子供が生まれてから、ずっと車の助手席に妻が乗らなくなった。当初は、子供は小さいこともあって、後部座席にチャイルドシートと妻がセットになっていた。助手席はいつも私の荷物置き場となっていた。私の車は仕事でも使っているので、普段は気にならないだが、子供の成長と共に助手席には自然と息子が乗るようになった。その息子も高校生となると、家族全員での移動が少なくなってきた。
さて、ここで助手席にやっと妻が復活するのだろうと私は思っていたのだが、肝心の妻は、夫婦での移動でも気がつけば後部座席に乗る。待ち合わせしても、当たり前のように後部座席へと乗る。これをずっとしているうちに、私も後部座席に乗る妻が普通となった。
暫くすると妻の気持ちが変わり、助手席に乗ってみようという事になった。懐かしい感覚、助手席に妻がいるのは。正直浮かれてしまった私がいた。まるでデートみたいじゃんないか?とウキウキして休日という事もあり、首都高速に乗りちょっとだけドライブをした。だが、これが思わぬ結果になってしまった。
それは・・・・・
あまりに長い期間助手席に乗ることがなかったことで、助手席のスピード感が怖いと言う。スピードは全く出してなくゆっくりと左側車線を走っていたのだけど、後部座席での感じ方と助手席での感じ方が全く違うらしい。結局、首都高速にはちょっと乗っただけで降りて一般道へと移動した。そこで、車を止めて後部座席に移るとホッとしている妻の顔を見て安心した。これ以降、妻は助手席に乗る事はない。いつでも乗る時は後部座席が定位置となった。車で妻を迎えに行ったりする時、後部座席のスライドドアを開ける。まるで、芸能人の運転手のように、またはタクシードライバーのように、私は妻専用の運転手となった気分を味わう。妻も私が運転する車が来ると自動的に開くスライドドアに乗り込む姿が板についてきたようだ。スライドドアの便利さを堪能している二人なのであった。
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